不安定な相場環境が続いています。方向感が定まらないと、投資しにくいという投資家の方も多いのではないでしょうか。一方で、長期間での積立投資は、相場が過熱している時よりも、少し下がったタイミング(2015年10月9日の日経平均株価の終値は年初来高値から約12%下落した水準)の方が始めやすい面もあります。

そこで今回は、積立投資による長期での資産形成の勘所ついて、楽天証券経済研究所のファンドアナリスト、篠田尚子さんにお聞きしました。

投信積立は低コストなインデックスファンドをベースにポートフォリオを作る

――長期の積立投資を考える場合、どのような投資信託が適していますか?

篠田:インデックスファンドをベース(土台)にポートフォリオを作るのが適切だと思います。インデックスファンドは、日経平均株価やS&P500など、広く一般に公表されている指数に連動した投資成果を目指すタイプのファンドです。銘柄選定に伴う調査費用を必要とせず、機械的に運用できるため、保有期間中のコストを低く抑えられる点がポイントです。

過度にリスクを負いすぎないよう、まずは市場と同程度のリターンを目指す基本ポートフォリオを作ることから始めましょう。

コストの差=運用成績の差であることを認識する

――インデックスファンドはたくさんあります。楽天証券で取扱っているインデックスファンドだけでも196本(2015年10月12日現在)あるわけですが、その中からどのような点に注目して絞り込むべきでしょうか?

篠田:コストを徹底的に重視すべきだと考えます。運用期間中にかかるコストの差は、投資期間が長くなれば長くなるほどそのまま運用成績の差として表れます。特に、ファンド間の運用方針に大きな差がないインデックス連動型ファンドの場合、「運用成績の差=信託報酬の差」であると言っても過言ではありません。

例えば、日経平均株価に連動した投資成果を目指す「ニッセイ日経225インデックスファンド」は、今や1,000億円規模の残高を誇るインデックスファンドです。同ファンドの信託報酬率は税込0.27%(年率)。日経平均連動のインデックス型投信の中で最も低い水準を誇り、インターネット証券を中心に投資家の支持を集めています。

もともと確定拠出年金向けの専用ファンドとして展開されていた同ファンドは、2009年に広く一般の投資家へ門戸が開かれたという経緯があります。信託報酬率が低いのはこのためで、運用成績も好調を維持しています。

資産クラスの成長性を考慮する

――インデックスファンドにも日本株型、外国株型など様々な種類がありますね。資産クラスを考える上でのポイントも教えてください。

篠田:中長期的な資産クラスの成長性とポートフォリオ全体の収益性の向上を考慮すると、円建ての国内資産だけでなく、海外株式と海外債券はぜひ取り入れたいところです。

海外株式は本数(選択肢)が多いのでインデックス型でもアクティブ型でも構いませんが、毎月分配型が大多数を占める海外債券は、決算回数が少なく、且つコスト効率の良いインデックス型がおすすめです。

また、「成長性」と聞くと新興国への投資を思い浮かべる方も多いと思いますが、足元の地合いが軟調な新興国については、最初から無理に取り入れる必要はありません。

スパイス的な要素としてポートフォリオに追加するなら、インデックス型で市場と同程度のリスクを負うことにとどめておくか、または新興国を含む全世界株式に投資するタイプのインデックスファンド「eMAXIS 全世界株式インデックス」、「DC全海外株式インデックスファンド」などを取り入れても良いでしょう。

「なんちゃって分散投資」にならないよう気をつける

――篠田さんは多くの個人投資家のポートフォリオを見てこられたと思います。多くの方が陥りがちなミスなどありましたら、ぜひアドバイスをお願いします。

篠田:債券、株式、リート・・・と、リスク分散の観点から複数の資産を組み合わせて保有することは重要です。しかし、実際は「分散ができているようでできていない」方も多くいらっしゃいます。例えば、近年人気を集めてきたハイイールド債券、先進国株式、海外リートは、いずれも資産クラスこそ異なりますが、地域別に見ると米国、通貨別でも米ドルの比率が高くなっています。

トレンドに乗ってこれらのファンドを購入していると、気が付いたら極端な「米国・米ドル偏重」のポートフォリオができあがってしまう可能性があるため、注意が必要です。

――なるほど、確かに気を付けていないと「なんちゃって分散投資」になってしまうかもしれませんね。今日はありがとうございました。

【2015年10月13日 篠田 尚子/投信1編集部】

■参考記事■

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篠田 尚子