本記事の3つのポイント

  • 電子情報技術産業協会(JEITA)は、「電子情報産業の世界生産見通し」を公表。18年世界生産額は、17年比8%増の2兆9345億ドルで、過去最高の更新が見込まれている
  • 日系企業の18年世界生産額(海外生産分含む)は、17年比1%増の39兆946億円。クルマの電装化率向上による搭載員数の増加、あるいは働き方改革や生産性向上に向けた法人向けパソコン、情報端末機器の需要が好調に推移していることが背景
  • 電子部品の18年世界生産額は25兆3962億円、半導体は52兆5730億円、ディスプレーは14兆7672億円。各分野ともに19年はプラス成長を予想

 

18年世界市場は2.9兆円

 電子情報技術産業協会(JEITA)は、「電子情報産業の世界生産見通し」を公表した。同調査は2007年より継続して実施しているもので、今回が12回目。

 対象となる電子情報産業とは、①薄型テレビや映像記録再生機器、撮像機器など全13ジャンルで構成される電子機器群、②電子部品や半導体などの電子デバイス、そして③ソリューションサービスの3領域。なお、③のソリューションサービスとは、IoTなどデジタルビジネス推進のためのSI開発、ソフトウエア、アウトソーシングなどのサービス事業を意味する。

19年は史上初の3兆ドル突破へ

 電子情報産業の18年世界生産額は、17年比8%増の2兆9345億ドルで、過去最高の更新が見込まれている。

 世界経済を俯瞰すると、米中貿易摩擦などの懸案事項が介在するものの、総体的にはクラウドサービスが大きく進展。これに伴い、ソリューションサービスの需要増、さらにはIoT化の進展による大容量データの高速処理ニーズが飛躍的に拡大する。それらニーズを満足させる半導体や電子部品などの電子デバイス群、ソリューションサービスがマーケット全体を牽引していくことになる。

 19年を見据えては、ソリューションサービス、電子部品、半導体が引き続き伸長し、プラス成長が続く見込み。19年は史上初めて、3兆ドルを突破する見通しである。

日系企業は19年もプラス成長

 日系企業の18年世界生産額(海外生産分含む)は、17年比1%増の39兆946億円が見込まれている。クルマの電装化率向上による半導体や電子部品搭載員数の増加、あるいは働き方改革や生産性向上に向けた法人向けパソコン、情報端末機器の需要が好調に推移していることが背景にある。このうち、国内生産額は同0.5%増の11兆9640億円に達する見込みである。

 20年の東京五輪などに向けたインフラ整備、半導体や電子部品の搭載員数増加などの継続的な成長も追い風となり、日系企業の19年世界生産額は同1%増の39兆6495億円を見込んでいる。また、同年の国内生産額についても、パソコンの買い換え需要が期待できることから、同2%増の12兆1530億円とプラス成長を見通している。

電子デバイス主力3種の動向

 電子デバイスは電子部品、半導体、ディスプレーの主力3種について、調査内容を報告する。

1.日系電子部品シェアは世界市場の38%

 電子部品の18年世界生産額は25兆3962億円(2309億ドル)。このうち、日系企業が占めるシェアは約38%で、金額にして9兆6192億円に達する。

 世界市場においては、クルマの環境対応やADAS(先進運転支援システム)の普及により、電子部品搭載員数の増加は継続する。もう1つの重要アプリケーションであるスマートフォン(スマホ)については、高機能スマホの市場投入により、対応部品の需要も高水準で推移する。これに加え、第5世代通信システム(5G)の導入に伴い、基地局やデータセンターでの需要増も含め、19年も引き続き好調をキープする見通しである。

 世界市場シェア約38%を保有する日系の電子部品メーカーは、車載やスマホ用途に加え、工場の自動化やIoT化などにより産業機器分野も躍進する。米中貿易摩擦を背景に、中国の投資意欲の減退が懸念されるが、アプリ市場の力強い進展により、18年、19年ともにプラス成長を達成しそうである。

2.半導体世界市場は電子部品の2倍強

 半導体の18年世界生産額は電子部品市場の2倍強、52兆5730億円(4779億ドル)であった。このうち、日系企業が占めるシェアは約10%で、金額にして5兆4112億円にとどまる。日系電子部品生産額9兆6192億円と比較し、4.2兆円少ない市場規模である。

 世界市場ではIoT機器の普及拡大や電子機器の半導体搭載率の上昇が、市場全体を底上げしている。今後、これまでの主力アプリであるスマホに代わり、データセンターやクルマがメーンアプリとなり市場を牽引していく。とりわけ、メモリーに関しては、クラウドサービスプロバイダーの積極投資により、需要が拡大。18年は2桁成長を達成する勢いだ。

 今後はこれらに加え、先進国で4Kテレビが、新興諸国で白物家電が好調に推移。IoTエンドポイントとして、スマート家電や5G対応品も需要が見込めるため、19年もプラス成長の見通しである。

3.ディスプレーは19年にプラス成長へ

 ディスプレーの18年世界生産額は14兆7672億円(1342億ドル)。このうち、日本企業が占めるシェアは約11%で、金額にして1兆6734億円である。

 液晶テレビ市場では4K化、大画面化の流れに続き、上位機種では有機EL(OLED)テレビも徐々に広がりを見せている。一方、スマホ市場においては、高解像度化と大画面化のニーズとともに、OLED画面の搭載など、ディスプレーにおいても明るい話題が増えつつある。

 しかし、17年の高成長の反動、あるいは世界市場での過当競争の影響を受け、18年はマイナス成長を見込んでいる。今後に向けて、液晶テレビでは20年の五輪開催による買い替え促進を背景に、4K化の加速や8K市場の立ち上がりが期待できる。スマホ市場では高精細化と大画面化、OLED搭載機種への買い替え需要、車載コックピットでのディスプレー搭載拡大も期待できるため、19年はプラス成長を見通している。


※「電子情報産業の世界生産見通し」の詳細は有料で入手することができる。問い合わせはJEITA企画管理部統計室まで。

電子デバイス産業新聞 編集部 記者 松下晋司

まとめにかえて

 JEITAによれば、半導体や電子部品など電子デバイス市場はクルマの電装化やスマホ1台の搭載員数増加などにより、今後も堅調な市場成長が続くとしています。ただ、足元の主要各社の決算を見る限り、スマホ市場の低迷や米中貿易戦争などの影響が色濃く出ているように思います。半導体製造装置分野もメモリー投資の失速により、業績の下方修正が目立っております。今後、年後半に向けて市況が回復してくるのか、今後も注目していく必要がありそうです。

 

電子デバイス産業新聞