この記事の読みどころ
実体経済以上にマネーを供給してもリアルエコノミーにはほとんどインパクトを与えません。
株を持っている人は恩恵を受けて、そうでない人は恩恵を受けない構造です。
アベノミクスによる株高には、柱はありません。
アベノミクス株高に疑問符:元ベテランファンドマネージャーの読み筋
以下の名言集は、2014年9月にLongineで実施したフィデリティ投信の元日本株ファンドマネージャー(現相談役)山下裕士氏へのインタビューを、1年を経て振り返ったものです。その慧眼を確認できるとともに、今後の個人投資家の資産運用にとって有益ではないでしょうか。
――金融政策と経済の関係、そしてアベノミクス
“実体経済以上にマネーを供給してもリアルエコノミーにはほとんどインパクトを与えません。最初は不動産市場にマネーが流入しましたが、不動産市場もその後マネーを吸収できずに限界にきました。そのお金が株式市場に流れ込んできたわけです。ニューヨークを皮切りに、日本もそれに追随しました。アベノミクスはそうした流れに乗った格好といえます。”
――株高と貧富の格差、そして株価水準
“株を持っている人は恩恵を受けて、そうでない人は恩恵を受けない構造です。貧富の格差が広がります。したがって、無限に金融緩和をして株価を上げようという発想自体に無理があります。過剰な金融緩和による反動がいずれ来るのを警戒しながら資産運用をしなければなりません。株価が上昇している理由はその時々によって異なりますが、株価が上がっているときはついていくしかありません。しかし、株価が上がっていることの背景は常に頭の片隅に置き、警戒感を持っておかなければなりません。”
――米国の雇用について
“(米国の)自動車産業でリーマンショック後に職を失い、最近職を得た人の所得は以前と比べて低いままです。組合などに守られて仕事を失っていない人たちの給与は下がりにくいですが、新たに職を得た人は給与が上がっていません。ダウをはじめとした株価指数は、上昇トレンドで高値を付けたりしていましたが、リーマンショック後に職を手にした人たちは、仕事がないよりはましという状態で皆さん働いている状況です。”
――国内消費について
“正社員は所得が消費税プラスインフレについていけていません。賃上げもインフレに追いつけておらず消費が落ち込んでいる理由だと考えています。2014年4-6月は消費税増税の反動減で消費が落ち込んでいると言われていますが、私の考えが正しければ、今後も大きく回復しないのではないかと思っています。”
――黒田日銀総裁の金融政策について。第2次“ハロウィーン緩和”はあるのか
“(日銀総裁の)黒田さんによる異次元の金融緩和の再来を期待している人は多く、金融緩和の結果としての円安はあり得ます。円ドルの関係で言うと、あと少し円安の余地を残していると思います。円安になれば輸出関係の利益を押し上げることはあります。しかし、円安になっても日本企業の輸出が増える構造にはなっていません。そちらの方が問題です。したがって、(円安になる前と)同じ数量を輸出し、円安の恩恵を得るという程度のもがあるということです。”
――アベノミクスと株価について
“アベノミクスによる株高には、柱はありません(笑)”
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フィデリティ投信元日本株ファンドマネージャーの山下裕士氏へのインタビュー第2弾「私の運用報告書(2)-フィデリティ投信相談役山下裕士×Longine 泉田良輔」も、ぜひご参考にしてください。
注:本記事は個人投資家向け経済金融メディアLongine(ロンジン)の記事をダイジェスト版として投信1編集部が編集し直したものです。
【2015年10月8日 投信1編集部】
■参考記事■
>>失敗しない投資信託の選び方:おさえるべき3つのNGと6つのポイント
LIMO編集部