皆さま 明けましておめでとうございます。
アセットマネジメントOneで、チーフ・グローバル・ストラテジストを務めます柏原延行です。
本年もよろしくお願いします。
さて、今週の記事のポイントは以下の通りです。
- 残念ながら、景気や株式市場の先行きに対する懸念が強い状況で新年を迎えた。
- 2017年の年末時点での「株式市場は年前半に調整、後半に上昇」という私の想定は、年前半の下落、及び9月に向けて上昇した値動きは予想通りであったものの、9月に向けての上昇幅や10月以降の株式市場の下落は、想定した動きとは異なるものとなった。
- 何が想定と異なる動きをもたらしたか、そして、2019年の投資のポイントを、本コラムでは考える。
- 2019年のポイントは変動性の大きさ。下にも、上にも値幅が出る市場となり、市場が経済環境を先読みするというよりも、適正価格を超えて、下にも、上にもオーバーシュートすることを覚悟しておくべき。
2017年の年末時点において、株式市場、特に米国の株式市場は堅調に推移しており、楽観的な雰囲気に包まれていたと記憶しています。
一方で、2018年の年末、そして、2019年の年初は、まったく逆と言える状況に陥っており、景気や株式市場の先行きに対する懸念が強くなっていると思われます。
2017年の年末には、「株式市場は年前半に調整、後半に上昇」と私は予測していましたが、年前半の下落、及び9月に向けて上昇した値動きは予測通りであったものの、9月に向けての上昇幅が小さかったことや10月以降の株式市場の下落は、私が想定した動きとは異なるものでした。
何が想定と異なる動きをもたらしたかを、自戒を込めて、考えたいと思います。
まず、2018年を通した米国経済について、米景気が底堅く、インフレも(一定程度は上昇するものの)落ち着いた動きとなるという見方は正しかったと私は考えています。一方で、2019年の景気に対する市場の不安感は、私の想定した以上のものになりました。
加えて、トランプ政権を巡る様々な悪材料(米中貿易・知財問題や主要スタッフの交代、FRBとの関係など)の影響は想定以上のものでした。特に米中の貿易・知財問題を巡るトランプ政権の強硬なスタンス、及び(選挙に勝利するために)中間選挙前にこの問題は緩和に向かうという予測は、残念ながら、私が想定したシナリオとは異なるものでした。
また、市場の低い変動性に代表されるいわゆる適温経済・市場が終焉するため、2018年の前半に株式市場は調整するという見方は正しかったと考えますが、一方で、終焉後の環境について、「経済成長が2019年にリセッション(景気後退)に陥るのか、リセッション懸念が過度なものであるか」について、いまだ市場はコンセンサスを見いだせていないと思われます。そして、年前半の調整だけでは、適温経済・市場の終焉後の経済・市場環境がどのようなものであるかを市場が織り込むことができなかったことも誤算でした。
また、「①景気の先行きにコンセンサスを見いだせず不透明感がある」、そして、「②下落局面においては、新たな投資手法(アルゴリズム取引など)が市場の変動性を増幅させる」という報道が相次いだことも、不安心理を増幅させたと考えます。
このような環境の中、バリュエーション(割安・割高度)は、過去のレンジと比べて割安と考えることができると思われます。一方で、景気の不透明感(企業利益の不透明感に繋がります)や株式市場の変動性上昇自体が、株式投資のリスクを上昇させ、従来よりも割安の水準でなければ(期待リターンが高くなければ)、株式への投資が魅力的でないと考えることもできます。そして、このことはバリュエーション指標による割安レベルの判断を困難にさせていると考えます。
それでは、2019年の株式市場への投資においての留意点は、どのようなものになるのでしょうか?
私は、適温経済・市場は終わっており、市場の変動性が継続して大きいことを認識して投資する必要があることがポイントになると考えます。このような環境では、下にも、上にも値幅が出る市場となり、市場が経済環境を先読みするというよりも、適正価格を超えて、下にも、上にもオーバーシュートすることを覚悟しておくべきと考えます。
そして、米中貿易・知財問題、米国の中央銀行である米連邦準備理事会の金融政策など、様々な材料がある中、結局のところ、市場を考える上でのポイントは、2019年に米国景気がリセッション入り(後退局面入り)するかが重要であると考えます(私は個人消費の底堅さから、リセッション入りの可能性は低いと考えています)。
以下に、投資において重要と思われる2019年以降のイベントを記載させていただきます。
本年もよろしくお願いします。
(2019年1月8日 9:30頃執筆)
柏原 延行