6. 「年収106万円の壁」がなくなるってどういうこと?

老後の年金は、現役時代の働き方と密接に関係しています。

2025年6月13日に成立した「年金制度改正法」には、アルバイト・パートなどの働き方と関わりが深い、いわゆる「年収106万円の壁」を撤廃する改正が盛り込まれました。

6.1 「年収106万円の壁」とは?

「106万円の壁」とは、パート・アルバイトなどの短時間労働者が年収が106万円以上になると、社会保険(健康保険・厚生年金)の扶養から外れ、自分自身で保険料を支払う義務が発生する目安です。

保険料負担で手取りが減ることから、収入が基準額を超えないよう労働時間をコントロールする「働き控え」が生じる原因の一つとされてきました。

また、社会保険の適用対象となる企業規模はこれまで段階的に拡大されてきて、2024年10月からは「51人以上」の事業所となっています。

今回の改正では「3年以内の賃金要件の撤廃」と「10年かけて企業規模要件の段階的撤廃」がおこなわれることが決まりました。

6.2 「社会保険の加入対象の拡大」短期労働者の加入要件の見直し

2025年7月現在、パートタイムなどで働く短時間労働者が社会保険に加入する要件は、以下の5つをすべて満たす必要があります。

  1. 週の所定労働時間が20時間以上
  2. 2か月を超える雇用の見込みがある
  3. 学生ではない
  4. 所定内賃金が月額8万8000円以上(賃金要件)
  5. 従業員数51人以上の企業で働いている(企業規模要件)

今回の改正により、このうち4の「賃金要件」と5の「企業規模要件」が撤廃されます。

いわゆる「106万円の壁」は、全国の最低賃金の引き上げ具合を見極めながら、3年以内に廃止へ。社会保険に加入する企業の規模は、10年かけて段階的に拡大されます。

7. 年金額と制度の「今」と「これから」を見据えて

今回は公的年金の基本的な仕組みの確認、厚生年金・基礎年金の年齢別の受給額や平均額の実態を一覧で紹介しました。

公的年金は、国民年金と厚生年金からなる2階建て制度で、加入状況や働き方によって将来の受給額に大きな差が生まれます。2025年度は物価上昇に伴い、年金額が1.9%引き上げられましたが、平均的な厚生年金額は約14.6万円と、老後生活には十分とは言い切れません。

実際の受給額は年齢や性別、職歴などで異なるため、ねんきんネットなどを活用した個別の確認が欠かせません。加えて、「106万円の壁」撤廃など、働き方と年金制度の連動も進んでおり、将来的な保障のあり方も変化しつつあります。今後の制度変更を見据えながら、自身の老後資金計画を早めに立てることが重要です。

参考資料

村岸 理美