この記事の読みどころ
- パイオニアの走行空間センサー(3D-liDAR)開発のニュースは株式市場でポジティブな評価を受けました。
- 同社はAV機器事業をオンキョーに譲渡し、カーエレクトロニクスを専業とした成長を目指しています。
- ただし、カーナビはスマホとの競合が続くこと、今回発表された新製品の業績への寄与は未知数であること、新興市場での自動車販売の回復が遅れていることなどから、成長を期待しての投資は時期尚早だと考えます。
自動運転車用「走行空間センサー」の開発を発表
9月1日付けの日本経済新聞によると、パイオニアは新たに開発した3次元計測器で自動運転分野に参入するそうです。自動運転は中長期的な有望市場であることから、株式市場での関心度も高くなっています。
この報道が出た9月1日は「中国ショック」の影響で株式市場は大きく下げましたが、同社の株価はこのニュースにより、一時、前日比で9%上昇するなど逆行高となりました。
今回発表された走行空間センサー(3D-liDAR)は、同社の光ピックアップ技術をベースとしており、自動運転に必要とされる高精度な3次元の地図を作成するためのデータ収集や、将来的には自動運転車に組み込まれ「車の目」としての活用が想定されています。
日経の報道によれば「年間売上高350億円の事業に育てる」とのことです。
今のパイオニアは、ほぼ“カーエレクトロニクス専業メーカー”
パイオニアといえば、カーナビ、カーステレオ、光レーザーディスクや家庭用オーディオ機器のメーカーというイメージをお持ちの方が多いと思いますが、同社は2015年3月期末にホームAV事業をオンキョーに譲渡しています。
その結果、今年度(2016年3月期)会社計画での売上構成比は、カーエレクトロニクスが77%、その他(光ディスク、FA機器、地図ソフトなど)が23%、営業利益はカーエレクトロニクスが100%となっています。
業績に対して楽観視できる状態にはない
現在、パイオニアは、カーエレクトロニクスにフォーカスし、コネクテッド化(カーナビと情報サービスの融合)、OEM事業への注力、新興国でのプレゼンス強化に注力することで成長を目指しています。
とはいえ、日本市場の成熟化や、スマホを利用したカーナビとの競争激化が継続すること、新興国市場での自動車販売が低迷していることを考慮すると、まだまだ将来見通しに対して、手放しで楽観視できる状態にはありません。
また、今回発表された「走行空間センサー」は長期的には収益に寄与する可能性があるものの、今後、数年間の業績見通しを大きく引き上げるものではないでしょう。このため、成長を期待しての投資は時期尚早だと思われます。
LIMO編集部