6. 老後、「公的年金・恩給」以外のお金が必要なシニア世帯は56.6%
厚生労働省が公表した「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」から、高齢者世帯(※)の収入の実態を見ていきましょう。
まず、高齢者世帯全体の平均的な所得構成を見ると、収入の63.5%を「公的年金・恩給」が占めており、次いで仕事による収入である「稼働所得」が25.3%、「財産所得」が4.6%となっています。
しかし、これはあくまで全体の平均値です。
「公的年金・恩給を受給している世帯」に絞ると、収入のすべてが「公的年金・恩給」である世帯が43.4%にものぼることがわかっています。
※高齢者世帯:65歳以上の者のみで構成するか、又はこれに18歳未満の者が加わった世帯
6.1 【総所得に占める公的年金・恩給の割合別 世帯構成】
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が100%の世帯:43.4%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が80~100%未満の世帯:16.4%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が60~80%未満の世帯:15.2%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が40~60%未満の世帯:12.9%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が20~40%未満の世帯:8.2%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が20%未満の世帯:4.0%
このようにシニア全体で見れば稼働所得なども一定の割合を占めていますが、年金受給世帯に絞ると、その半数近くが公的年金収入のみに頼って生活しているという実態が浮き彫りとなっています。
7. 老後に向けて「公的年金」以外のお金をどれだけ準備できるかがポイント
記事の最後で触れたとおり、老後に公的年金・恩給だけで全ての生活費をカバーしている高齢者世帯は、半数に満たないようです。
しかし、老後の生活を支えるのは公的年金だけではありません。
十分な預貯金があれば取り崩して不足分を補填できますし、投資信託や株式の分配金・配当金を活用することで、安定的な収入源を確保している人もいます。なかには、年金以外に不動産収入や企業年金、パート・アルバイトなどで生活費を補っているケースもあります。
つまり、老後の生活設計には多様な選択肢があり、どれをどう組み合わせるかがポイントとなるのです。
これから老後に備える現役世代にとっては、年金の仕組みを正しく理解しつつ、自分自身に合った資産形成や働き方を検討していくことが大切です。
「年金だけでは足りないかもしれない」と感じた方は、今のうちから少しずつ準備を始めてみてはいかがでしょうか。
参考資料
- 日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」
- 厚生労働省「令和7年度の年金額改定についてお知らせします」
- 厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 日本年金機構「老齢年金請求書の事前送付」
- 日本年金機構「特別支給の老齢厚生年金」
和田 直子