ある家庭教師が、小学5年生の生徒に宿題を出したところ「ひとりで宿題ができるくらいなら家庭教師なんて雇わない! 手を抜くな!」と怒られたそうです。ほかにも「成績が上がらないのは教え方が悪いから。息子が理解できるまで毎日来い」などと無理難題を押し付け、ほぼ毎日、「課外授業」を行わされていたようです。

教育関連ということでいえば、このケースは「モンスターペアレント」と呼ぶほうが適切かもしれません。学校あるいは幼稚園・保育園におかしなクレームを入れる親にも共通するのですが、教育やそれに準ずる場にも「こっちはカネを払ってる客なんだから」という論理を持ち込み、本来であれば家庭ですべき基本的な「しつけ」まで他人に丸投げするような親が「モンスター」になってしまうことが多いのではないでしょうか。

そもそも、仮にそうした基本的なしつけまで仕事の中に含まれているのであれば、通常の家庭教師代なら安すぎるはずです。

なぜ「モンスター」が現れるのか

海外では顧客から怒られないようなことなのに日本では怒られたり、逆に日本では許されているのに海外では怒られたり、といった違いは、各国で長い年月をかけてつくられた商習慣や文化、教育によるところも多くあります。それらを考えると、上記のような「モンスターカスタマー」が増えてしまったのは、日本で根強い「お客さまは神さまだ」という考えにも、原因の一端があるのではないでしょうか。長い間、この考えに基づいて従業員も顧客も「教育」されてきたために、一部の顧客をある意味で「つけ上がらせてしまった」といえるかもしれません。

理不尽なクレームの場合は、怒られる側に大きな非がないことがほとんどです。そうした場合は、店側も毅然とした態度に出る勇気も必要になってきます。

少し前にネット上で盛り上がった話で、こんなものがありました。ある外資系ショッピングセンターで、「文句をつけてタダにさせよう」という魂胆からか、従業員に粘着質のクレームをつけてきた顧客がいたのですが、これに対して、後から出てきた外国人の支配人が「出て行け! お前は客じゃない!」と一喝し、「スタッフはお前の奴隷じゃない、謝れ!」とこのクレーマーに逆に謝罪させたそうです。これにはネット上の多くの人から拍手喝采が上がりました。

こうしたことが普通にできるようになるのは、日本ではまだ少し先かもしれません。ただ、できるだけ近い将来、理不尽なクレームに対しては店側は正しさをその場できちんと主張でき、多くの顧客も「それはこの客のほうがおかしい」「ただ、店側もこの部分は改善できるんじゃないか」と冷静に評価できるような社会になればいいですね。

クロスメディア・パブリッシング