筆者は元マネースクール講師であり、子どもを抱えながら受講するママたちと接してきました。泣き出す子どもを必死にあやしながら、あるいは寝ている子を起こさぬようイヤホンで静かに受講する姿など「家庭と仕事、将来の不安のはざま」で懸命に頑張るママたちの姿を目にしてきました。
今回は、厚生労働省が2025年7月に発表した「2024年国民生活基礎調査」と、J-FLECの「家計の金融行動調査2024」をもとに、子育て世帯の家計実態と“見えにくいリスク”、そしてその対策について解説します。
1. 「働く母親」約8割でも家計が厳しい理由とは
2025年7月4日に厚生労働省が公表した「2024(令和6)年国民生活基礎調査の概況」によると、18歳未満の子どもがいる家庭では母親の約8割が何らかの形で就労していることがわかります。
年々、「働く母親」の割合が増えており、特に正規・非正規雇用のどちらも増加傾向にあります。また、「その他」のカテゴリーには会社役員やフリーランスなどが当てはまりますが、その割合は2004年以降、一時的に減ったものの最近は横ばい状態が続いています。
1.1 子育て世帯の6割超が「生活が苦しい」と回答
「2024(令和6)年国民生活基礎調査の概況」によると、生活が「苦しい」と答えたのは全世帯の約6割で、「ゆとりがある」と答えた世帯は少数にとどまっています。特に児童のいる世帯では「苦しい」と感じる割合が64.3%と最も高く、その中でも「大変苦しい」と感じる割合が33.9%と突出しています。一方、高齢者世帯は他の世帯に比べて「苦しい」と感じる割合が最も低い結果でした。「働く母親」が増えて共働きであっても、家計に余裕がない現実が見えてきます。
2. 家事・育児時間の「見えない不平等」がもたらす影響
厚生労働省の調査「令和6年版厚生労働白書・日本の1日」によると、子育て世帯の夫婦の中には「見えない不平等」が存在していることがわかりました。
1日平均で「夫が約2時間、妻が約7時間半」。
これは6歳未満の子どもをもつ親が育児・家事に費やす時間です。
夫婦であまりにも違いすぎる育児・家事に費やす時間の差、本当?と思われる方もかもしれません。しかし、朝の登園準備から夜の寝かしつけ、食事や掃除・選択、買い物などを積み重ねると、気づかないうちに長時間になっていることが多いようです。「そんなにやってる実感はない」と思っていても、実際には“ながら作業”や細切れの家事が日々の大半を占めているのが現実です。このようにして、「全国のお母さんは本当に頑張っている」状態で、1日約7時間半も育児・家事に費やしているのです。働きながら育児・家事をこなす「ダブルケア状態」で、家計管理や資産形成に回すエネルギーも不足している可能性もありますね。
3. 【40歳代・子育て世帯】約25%「貯蓄ゼロ」の実態
では、そんな子育て世帯である40歳代・二人以上世帯を想定して家計の状況、とりわけ金融資産保有額についてみていきましょう。
※金融資産保有額には、日常的な出し入れ・引落しに備えている普通預金残高は含まれません。
※J-FLECの調査では、「子どもがいない世帯」も含まれますが、ここでは子どもがいる40歳代の二人以上世帯を想定して家計の状況を考察します。
J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査 2024年」によると、金融資産をまったく保有していない世帯が25.7%で、約1/4の世帯が「貯蓄ゼロ」という厳しい状況にあります。さらに、金融資産の中央値は250万円と低く、一部の高資産層(3000万円以上が6.5%)が平均である944万円を押し上げている構図です。全体の65.8%が700万円未満の資産規模で、多くの家庭が資産形成の途中段階にあるといえます。
育児や教育にかかる「見えにくいコスト」が日々の家計を圧迫し、投資に踏み出す余裕が持ちにくい現実も、こうした数字の背景にあると考えられます。子育て世帯ならではの家計の負担感が浮き彫りになっています。
4. 「今からできる!」無理なく続けられる資産形成のコツ
今回は、「2024年国民生活基礎調査」や「家計の金融行動調査2024」の結果をもとに、子育て世帯が直面する家計リスクとその対策について解説しました。
まとめると、
- 約8割の母親が働いていても、家計にゆとりがあるとは限らない
- 育児・家事にかかる“見えないコスト”が資産形成の壁になっている
- 少額から始められる仕組みづくりで、家計改善の一歩が踏み出せる
元マネースクール講師である筆者としては、生活用と貯蓄用で「目的別の口座」を分けることをまずおすすめします。買い物の端数を自動で貯金できるスマホアプリも、無理なく続けられる仕組みとして有効です。また、少額から始められるNISAの「つみたて投資枠」を活用した積立投資も有効な選択肢となります。最初の設定が済めば手間は少なく、100円・1000円からでも資産形成を始めることが可能です。子どもや家族の将来のためにも、「今の自分にできること」から始めていきましょう。



