台湾のパッシブ型有機ELディスプレーメーカー、ライトディスプレー(RiTdisplay、新竹県)は2018年12月20日に事業説明会を開催し、19年に月産能力を10%前後引き上げる考えを示した。リストバンドなどのウエアラブル機器や活動量計などのヘルスケア機器向けにパッシブ有機ELの需要が堅調なため。加えて、米国企業と合弁会社を設立し、自動車用照明市場にも進出する方針だ。
ウエアラブル機器の増加が回復の契機に
同社は、台湾のストレージメディアメーカーRiTEK Corporationのディスプレー開発部門として1997年に創設され、台湾初のパッシブ型有機EL専業メーカーとして2000年3月に独立した。これに先立つ99年にパッシブ型有機ELの開発に成功。以来、パッシブ型有機ELで世界No.1の生産能力を誇っている。
かつては折りたたみ型携帯電話、いわゆるガラケーのサブディスプレーが主力用途だったが、スマートフォンの登場でこうした端末が世界的に減り、一時はパッシブ有機ELの需要が大きく減った。しかし、近年はウエアラブル機器やヘルスケア機器向けに需要が右肩上がりで伸び、業績を大きく回復させている。
営業利益率は2桁をキープ
事業説明会で公表した18年1~9月の9カ月累計業績は、売上高が前年同期比14%増の18.8億台湾ドル、営業利益が同5%増の2.4億台湾ドルだった。営業利益率は12.8%と2桁台をキープしており、台湾の中小型液晶メーカーの中華映管が会社更生手続きを申請したり、大手FPDメーカーが液晶パネル価格の下落で業績を大きく下げたりする厳しい市況にあって、堅実に利益を上げている。
用途別の売上構成比は、ウエアラブル44%(17年通年は36%)、ヘルスケア12%(同21%)、金融関連11%(同3%)、ネットコム9%(12%)、ホーム8%(同8%)、産業用途7%(同7%)、その他9%(同13%)。18年はウエアラブル向けが引き続き好調で、すでに9カ月で17年の年間実績を上回った。金融関連は17年から新たに需要が立ち上がったが、18年はドアノブのスマートロック表示パネル用などに需要が伸び、18年の売上高は9カ月で17年通年実績の3倍以上に達している。
19年に月産2万7000枚体制へ
旺盛な需要に対応するため、パッシブ有機ELの増産も進めている。17年には5.5億台湾ドルという同社としては大型の設備投資(18年は9カ月累計で6600万台湾ドル)を実施したが、これは17年11月に3本目となる新ラインを立ち上げたことによる。これにより、2.5世代(370×470mm)マザーガラス換算で月間1万7000枚だった生産能力を、18年中に2万4000枚まで高める予定だ。
ちなみに、同社はもともと370×470mmと400×400mmの生産ラインを持っているが、前述のガラケー向け需要の消失で、400×400mmライン(月産7000枚分)を長く休止していた。だが、ウエアラブル需要の立ち上がりに伴い、これを16年半ばに再稼働させて月産能力を2万4000枚まで高め、さらに17年11月に3本目となる生産ラインを新たに稼働させた。
3ライン体制となったことで、フル稼働時には最大で月産2万8000枚のキャパシティーを備えているが、19年にはまず2万6000~2万7000枚まで順次引き上げていく考えだ。
米社と車載用有機ELで合弁
生産能力を引き上げる要因は他にもある。このほど、自動車用照明メーカーの米Luminitと合弁会社「Luminit Automotive Technologies」を設立することに合意し、パッシブ有機ELを用いた自動車用ランプやLiDAR光源に参入する。合弁会社には、Luminitが70%、ライトディスプレーが30%を出資し、19年から少量サンプル生産を開始して、20年以降に本格的な需要の拡大を目指すという。
車載用の有機EL光源には、すでに独オスラム傘下のOsram OLEDが参入し、アウディやBMWなどに採用実績を上げているほか、日本ではコニカミノルタとパイオニアが互いの技術を持ち寄って折半出資で17年6月に設立したコニカミノルタ パイオニア OLED㈱が本格参入を表明するなど、新たなアプリケーションとして注目を集めている。
車載機器メーカーが有機ELに注目するのは、電球やLEDと違って「平面光源をフレキシブルに曲げられる」ため、照明の設計や形状の自由度が大きく高まるからだ。ライトディスプレーも今後、パッシブ型でフレキシブル有機ELの生産を拡大していくことを考えているに違いない。
電子デバイス産業新聞 編集長 津村 明宏