半導体製造装置の国別出荷額で、中国が初めて首位に立った。半導体製造装置メーカーが組織する業界団体SEMIの調べによると、2018年7~9月期の半導体製造装置出荷額は前年同期比11%増/前四半期比5%減の158億ドルとなり、このうち中国が39.8億ドルを導入して、地域別で初めて世界首位に立った。同期に中国は世界の1/4にあたる半導体製造装置を購入したことになる。

旺盛な設備投資が装置需要の拡大を牽引

 半導体製造装置の地域別出荷額は、2011年1~3月期に北米が首位になった以外、2010年以降は四半期ベースで韓国か台湾がずっと首位を維持してきた。台湾には世界最大のファンドリーであるTSMC、韓国にはメモリー市場で世界1位と2位にあるサムスン電子とSKハイニックスがあり、世界の他の地域よりも旺盛な設備投資を間断なく実施しているためだ。

 一方、中国は2014年に半導体の産業発展ロードマップを策定し、半導体関連企業の育成を促進する補助金制度も確立して、国産化を強力に推し進めてきた。これにより、ファンドリーのSMIC、メモリーの国産化を目指すYMTCなどが大型投資を断行し、生産能力を高めつつある。

 また、サムスン電子が3D-NANDフラッシュを量産する西安工場、SKハイニックスがDRAMを生産している無錫工場、TSMCが新設した南京工場、米インテルがメモリーの量産拠点としている大連工場など、外資系半導体メーカーが中国国内に持つ工場で増産投資を進めていることも、購入額世界首位に立つ原動力となった。

米国の輸出禁止装置で強まる不透明感

 しかし、ここにきて苛烈さを増す米中ハイテク摩擦によって、中国半導体産業の先行きには不透明感が強まっている。米国政府は先ごろ、中国でDRAMの量産準備を進めているJHICC(晋華集成電路)に対し、米国製半導体製造装置の輸出を禁止することを決定。これは、JHICCが米国の半導体メーカーMicronの技術を盗用したとされることに端を発した措置。これにより、DRAMの量産に不可欠な製造装置が入手できなくなり、JHICCが総額60億ドルを投じて福建省に建設中だった工場の立ち上げは頓挫した。

 すでに、半導体製造装置で世界最大手のアプライド マテリアルズは2018年8~10月期の決算発表で「次の四半期の見通しを押し下げる要因になった」と説明している。調査会社IHS Markitの南川明アナリストは、今後の展開を「米国政府は、すでに中国にある外資系の半導体工場には製造装置の納入を認めるものの、中国ローカルの半導体工場には認めないようになるのではないか」と見る。米国政府が日本や欧州の製造装置メーカーに、輸出禁止措置に足並みを揃えるよう強く要請してくることも想定される。

 米国政府の措置の背景には、中国が掲げる「建国100年を迎える2049年までに世界一の超大国になる」という目標を少しでも遅らせ、半導体をはじめとするハイテク産業の成長速度をスローダウンさせようとする狙いがある。これを考えると、中国の「半導体製造装置の購入額で世界一」の座は、たった1四半期で終わってしまうのかもしれない。

電子デバイス産業新聞 編集長 津村 明宏