3. 年収1000万円以上でも税金や社会保険料の「負担が大きい」と感じる理由は?
年収1000万円以上でも税金や社会保険料の負担が大きいと感じる要因は、以下のとおりです。
- 所得税に累進性があるから
- 健康保険料の上限が高いから
- 生活費が必要以上にかかっているから
日本の所得税は、所得が高い人ほど税率が高くなる「累進課税」の仕組みを採用しています。そのため、収入が1000万円を超えてくると比較的税率が高くなりがちで、負担しなければいけない所得税が増えてしまうのです。
また、社会保険料の上限も負担増の要因です。厚生年金保険料は標準報酬月額が65万円以上であれば、上限額(東京都:5万9475円)を納めることになりますが、健康保険料は標準報酬月額139万円(年収1668万円)まで保険料が上昇し続けます。結果的に、所得税のように収入が大きい人ほど納める保険料が多くなるのです。
そして、年収1000万円であることを理由に生活費が増えているのも、負担が大きいと感じる要因といえるでしょう。たとえば、支出管理を適切にしていなかったり、使っていないようなサブスクに加入したままになっていたりすると、無駄な支出が見えにくく、結果的に生活費が少なくなってしまうことがあります。
また「1000万円の収入がある」という安心感から車や家に必要以上の見栄を貼ってしまい、車の維持費や家賃、住宅ローン、固定資産税などさまざまなお金が発生していることも考えられます。無駄な支出の削減をすれば、生活費に充てられるお金が増えて、税金や社会保険料の負担を感じにくくなるでしょう。
次章では、手取りを増やす工夫を解説します。
4. 手取りを増やすための工夫
手取りを増やすためには、税金を減らす工夫が必要です。なかでも「iDeCo」は会社員が節税する方法としては有効です。
iDeCoは、自分で掛金を拠出して運用していく年金です。掛金がすべて所得控除の対象となるのが特徴で、所得が少なくなる分、所得税を減らせます。原則60歳までは引き出せませんが、運用益が非課税になるうえ、受け取り時も一定額までなら税金がかからないため、節税しながらの資産形成が可能です。
収入自体を増やしたいのであれば、NISAを活用した資産運用をするのがおすすめです。NISA口座で運用すると、運用益が非課税になるのが特徴で、通常20.315%かかる税金がかからず、利益をそのまま受け取れます。
口座は恒久的に保有でき、運用したお金を非課税で保有できる期間も無制限のため、長期投資に適しています。少しずつ資産を増やして将来の生活費に充てたい人はNISAを活用した資産運用を始めてみましょう。
5. まとめ
年収1000万円でも約3割が手元から差し引かれてしまうため、人によっては生活に苦しさや厳しさを感じるものです。とくに物価が上昇してきている現代では、支出が自然と増え、家計のやりくりが難しくなりがちです。
家計の支出状況の見直しや節税などの対策を取りながら、手取り給料額を少しでも増やしていきましょう。
参考資料
- 東京都主税局「給与明細の見方」
- 国税庁「No.1199 基礎控除」
- 国税庁「No.1410 給与所得控除」
- 国税庁「No.1130 社会保険料控除」
- 国税庁「No.2260 所得税の税率」
- 東京都主税局「個人住民税」
- 全国健康保険協会「令和7年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表」
- 厚生労働省「令和7(2025)年度 雇用保険料率のご案内」
- iDeCo公式サイト「iDeCo(イデコ)の特徴」
- 金融庁「NISAを知る」
石上 ユウキ