CMOSイメージセンサー市場は、スマートフォン用カメラの複眼化によって、2019年も好調をキープしそうだ。スマホ市場は台数ベースでの成長にストップがかかり、19年に関してはマイナス成長も現実味を帯びる中、CMOSセンサーに関しては2眼、3眼カメラの普及で、数量ベースでも大幅な伸びが期待できそうだ。19年は各社の旗艦機種においては3眼タイプが主流になりそうで、ソニーをはじめとする供給メーカー各社は引き続き積極的な増産投資を展開していく構えだ。

ファーウェイのブランド力向上に貢献

 アップルが16年の「iPhone 7 Plus」でデュアルカメラを採用したことを契機に、スマホ上位機種では複眼モデルが主流となった。それを進化させるかたちで、中国ファーウェイが「P20 Pro」で3眼モデルを市場に投入。このカメラ性能が高い評価を受け、ファーウェイのブランド力向上に貢献したのは記憶に新しい。

 ファーウェイの成功を受けて、19年以降は同社以外からも続々と3眼モデルが発売される見通しだ。成熟期を迎えたスマホ市場では、他社製品との差別化要素を見出すのが年々難しくなってきているが、カメラ性能に関しては一般ユーザーへの訴求効果も含めて、まだまだ差別化要素となりうるポイント。スマホ各社も開発に力を入れている。

19年は複眼モデルが50%を超える水準に

 18年のスマホ市場に占める複眼モデルの台数比率は約35%であるが、19年にはこれが50%を超える水準となりそうだ。上位メーカーの中で最も比率が高くなりそうなのはファーウェイで、19年は実に8割近い水準で複眼化が進むとみられる。

 サムスンも「Galaxy A」や「Galaxy J」といった中位機種においても複眼化を推進する。アップルは19年の新機種すべてで複眼化を図る。うち最上位機種に関しては3眼タイプとなるもようで、第3のセンサーとして、超広角センサーが用いられる見通しだ。

 3眼センサーの組み合わせは各メーカーで異なるが、ファーウェイの「P20 Pro」の成功もあり、メーンカメラとして4000万画素以上の高画素品を採用するケースが増えそうだ。製造面では画素ピッチ0.8μmの技術が確立できたことが、4000万画素クラスの製品化に大きな貢献を果たしている。

 ソニーは18年7月に、スマホ向けとしては業界最多となる有効4800万画素のCMOSセンサーを発表済み。0.8μmを用いることで、2分の1型でありながら、4800万画素という超高画素を実現した。競合のサムスン電子も4800万画素品を製品化しているものの、現状ではソニー製に一日の長があるもようで、アロケーション状態になっているという。

ソニーやサムスンは積極投資

 19年のスマホ出荷台数が仮に横ばいだった場合でも、想定どおりに複眼化が進めば、「年間ベースで約5億個のCMOSセンサーの需要増加が期待できる」(テクノ・システム・リサーチの三輪秀明氏)見込みで、供給メーカー各社も生産キャパシティーの増強に積極的だ。

 ソニーは18年度からの3カ年で、CMOSセンサーを中心とする半導体分野に約6000億円の設備投資を計画。既存工場内での生産能力を最大化することで、月産能力を現状の約10万枚から20年度までに13万枚に引き上げる。

 サムスンもDRAMを製造していた華城地区の第11ライン(現・S4ライン)をCMOSセンサーに転換。18年末ベースでCMOSセンサーの300mmウエハー投入能力は月産5.5万枚程度にまで拡張するとみられる。19年以降に向けては同じくDRAMを生産する第13ラインのCMOSセンサー転換を進めることで、生産能力を6.5万~7万枚規模にまで増強するプランを検討している。

電子デバイス産業新聞 副編集長 稲葉 雅巳