6月は年金の支給月。2025年度は支給額が1.9%引き上げられることが決まりました。
物価上昇が続くなか、こうしたニュースは少しほっとできる内容と言えるかもしれません。ただ一方で、「年金だけでは心もとない」「増額されたとはいえ生活が厳しい」と感じる方も少なくないのではないでしょうか。
そうした方に、ぜひ知っておいていただきたいのが「年金生活者支援給付金」です。この制度は、所得が一定基準を下回る年金受給者に対し、年金とは別に一定額を上乗せして支給するもので、生活の支えとなる重要な仕組みです。
本記事では、給付の対象となる条件や支給される金額、手続きの流れについて分かりやすく解説します。
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1. 【2019年10月1日に導入】比較的新しい制度の「年金生活者支援給付金」
「年金生活者支援給付金」は2019年10月1日に導入された比較的新しい制度であり、年金を受給している方の中には、まだこの制度について知らない方もいるかもしれません。
この制度は、公的年金を含めても所得が一定基準額以下となる人を対象とする給付金です。
年金生活者支援給付金は受け取る年金の種類に応じて、次の3つに分かれています。
1.1 年金生活者支援給付金は3種類
- 老齢年金生活者支援給付金(補足的老齢年金生活者支援給付金)
- 障害年金生活者支援給付金
- 遺族年金生活者支援給付金
2カ月に一度の年金支給日に、公的年金へ上乗せして受け取ることができます。
次章では、それぞれの年金生活者支援給付金の支給要件などを確認してみましょう。
2. 「年金生活者支援給付金」は老齢・障害・遺族の3種類
各年金生活者支援給付金とその対象者を整理すると、以下のようになります。
2.1 「老齢年金生活者支援給付金」を受け取れる対象者
- 65歳以上の老齢基礎年金の受給者
- 同一世帯の全員が市町村民税非課税
- 前年の公的年金等の収入金額(※1)とその他の所得との合計額が昭和31年4月2日以後に生まれの方は88万9300円以下、昭和31年4月1日以前に生まれの方は88万7700円以下(※2)である。
※1 障害年金・遺族年金等の非課税収入は含まれません。
※2 昭和31年4月2日以後に生まれた方で78万9300円を超え88万9300円以下である方、昭和31年4月1日以前に生まれた方で78万7700円を超え88万7700円以下である方には、「補足的老齢年金生活者支援給付金(※3)」が支給されます。
※3「補足的老齢年金生活者支援給付金」とは?
老齢年金生活者支援給付金は、一定の所得以下の年金受給者に向けた制度ですが、基準額を少しでも超えると給付対象外となり、基準額ギリギリで給付対象となる人よりも総所得が低くなる逆転現象が起こる問題がありました。
この不公平を解決するために「補足的老齢年金生活者支援給付金」が設けられています。補足的老齢年金生活者支援給付金は、所得が基準額を超えても一定範囲内であれば受給でき、所得が増えるにつれて給付額は減少するしくみとなっています。
2.2 「障害年金生活者支援給付金」を受け取れる対象者
- 障害基礎年金の受給者である
- 前年の所得(※1)が472万1000円(※2)以下である
(※1)障害年金等の非課税収入は除く
(※2)扶養親族等の数に応じて増額
2.3 「遺族年金生活者支援給付金」を受け取れる対象者
- 遺族基礎年金の受給者である
- 前年の所得(※)が472万1000円(※2)以下である
(※1)遺族年金等の非課税収入は除く
(※2)扶養親族等の数に応じて増額
それぞれ「年金生活者支援給付金」の要件をすべてを満たすと、各給付金の支給対象に該当します。
続いて、2025年度の年金生活者支援給付金の給付額を見ていきましょう。
3. 【2025年度】年金生活者支援給付金の給付額はいくらか
公的年金(国民年金・厚生年金)と同じく、年金生活者支援給付金制度の給付額は毎年度改定されます。
2025年度分は前年の物価変動率に基づいて、2.7%の引き上げとなりました。
年金生活者支援給付金の給付額

- 老齢年金生活者支援給付金(基準額):月額5450円
- 障害年金生活者支援給付金:障害等級1級6813円・2級5450円
- 遺族年金生活者支援給付金:月額5450円
老齢年金生活者支援給付金は、基準額として月額5450円が設定されており、それをもとに保険料納付状況(※保険料納付済期間や免除期間)に応じて計算されます。
そのため、実際に受け取る金額には個人差が出ることを理解しておきましょう。
支給要件を満たすと、月額で最大約5000円、1回の年金支給で最大約1万円、年額にすると最大約6万円が、年金に上乗せされることになります。
では「年金生活者支援給付金」を受け取るための手続きについて、次章で見ていきましょう。
4. 年金生活者支援給付金の「申請方法」
年金生活者支援給付金を受け取るには、申請手続きが必要です。対象となる人にはお知らせを兼ねた請求書が届きます。
請求書を受け取るところから、「これから老齢年金の受給をスタートする人」と「すでに年金を受給している人」の2つのケースについて解説します。
4.1 ケース1:これから老齢年金の受給をスタートする人
これから年金の受給を開始する人が年金生活者支援給付金の支給対象となった場合です。
この場合、老齢基礎年金の請求書に給付金請求書が同封されて届きます。給付金請求書には必要事項を記入し、老齢基礎年金の請求書と一緒に提出しましょう。
なお、支給要件に該当するか確認できない場合には、上記の「年金生活者支援給付金請求書(A4型)」とともに、所得情報等を確認するための所得状況届が送られてきます。
4.2 ケース2:すでに年金を受給している人
すでに年金を受け取っている人が、新たに年金生活者支援給付金の対象となる場合です。
この場合、 毎年9月1日以降に「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が順次郵送されますので、請求書の指定部分に必要事項を記入し、切手を貼って投函しましょう。
なお、年金を繰上げ受給している人の場合には、異なる様式の書類が届きます。
いずれの場合も、申請手続きを一度おこなうと、翌年度以降は基本的に手続きは不要です。
年金生活者支援給付金の継続支給は前年の所得を基に判定され、毎年10月分(12月支払い)から1年間反映されます。
支給要件を満たさなくなった場合には、「年金生活者支援給付金不該当通知書」が届きます。
5. 【公的年金】シニア世代の「年金月額」の平均はいくらか
では最後に、厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」を参考に、厚生年金と国民年金の平均年金月額を確認していきましょう。
5.1 「厚生年金」の平均受給額・受給割合
- 〈全体〉平均年金月額:14万6429円
- 〈男性〉平均年金月額:16万6606円
- 〈女性〉平均年金月額:10万7200円
※国民年金の金額を含む
- 1万円未満:4万4420人
- 1万円以上~2万円未満:1万4367人
- 2万円以上~3万円未満:5万231人
- 3万円以上~4万円未満:9万2746人
- 4万円以上~5万円未満:9万8464人
- 5万円以上~6万円未満:13万6190人
- 6万円以上~7万円未満:37万5940人
- 7万円以上~8万円未満:63万7624人
- 8万円以上~9万円未満:87万3828人
- 9万円以上~10万円未満:107万9767人
- 10万円以上~11万円未満:112万6181人
- 11万円以上~12万円未満:105万4333人
- 12万円以上~13万円未満:95万7855人
- 13万円以上~14万円未満:92万3629人
- 14万円以上~15万円未満:94万5907人
- 15万円以上~16万円未満:98万6257人
- 16万円以上~17万円未満:102万6399人
- 17万円以上~18万円未満:105万3851人
- 18万円以上~19万円未満:102万2699人
- 19万円以上~20万円未満:93万6884人
- 20万円以上~21万円未満:80万1770人
- 21万円以上~22万円未満:62万6732人
- 22万円以上~23万円未満:43万6137人
- 23万円以上~24万円未満:28万6572人
- 24万円以上~25万円未満:18万9132人
- 25万円以上~26万円未満:11万9942人
- 26万円以上~27万円未満:7万1648人
- 27万円以上~28万円未満:4万268人
- 28万円以上~29万円未満:2万1012人
- 29万円以上~30万円未満:9652人
- 30万円以上~:1万4292人
5.2 「国民年金」の平均受給額・受給割合
- 〈全体〉平均年金月額:5万7584円
- 〈男性〉平均年金月額:5万9965円
- 〈女性〉平均年金月額:5万5777円
- 1万円未満:5万8811人
- 1万円以上~2万円未満:24万5852人
- 2万円以上~3万円未満:78万8047人
- 3万円以上~4万円未満:236万5373人
- 4万円以上~5万円未満:431万5062人
- 5万円以上~6万円未満:743万2768人
- 6万円以上~7万円未満:1597万6775人
- 7万円以上~:227万3098人
国民年金のみを受給している場合、平均月額は全体、男女別ともに5万円台です。満額受給の場合でも、7万円弱となります。ただし、一定の要件を満たす場合は、老齢年金生活者支援給付金の支給対象となります。
一方、厚生年金を受給している場合、平均月額は全体で14万円台です。国民年金のみの受給者と比較すると受給額は高めですが、男女別に見ると、男性は16万円台、女性は10万円台と大きな差があります。
また、厚生年金の受給額は個人差が大きく、月額3万円未満から25万円超まで、幅広い受給額帯に分布しています。
年金額は、現役時代の収入や年金への加入期間によって大きく異なります。
そのため、年金受給世帯の中には、給付金を必要とする世帯もあれば、比較的十分な年金を受け取れる世帯もあります。
ただし、高額な年金を受け取る世帯であっても、現役時代に高収入を得ていた可能性が高いとはいえ、老後の収入が大きく減少するという点ではどの世帯も共通していると言えるでしょう。
受給額次第では、厚生年金を受け取る場合でも、老齢年金生活者支援給付金の支給対象となる可能性があるのです。
6. 参考:60歳代の平均年収はいくら?
国税庁の「令和5年分 民間給与実態統計調査」から、60歳代の平均年収を見ていきます。比較のために50歳代についても併記します。
6.1 年齢:全体の平均年収(男性・女性)
- 50~54歳:540万円(男性689万円・女性343万円)
- 55~59歳:545万円(男性712万円・女性330万円)
- 60~64歳:445万円(男性573万円・女性278万円)
- 65~69歳:354万円(男性456万円・女性222万円)
必要となる貯蓄額は、どれほどの給与収入を得るかによってもかわります。また、60歳以降は50歳代までの収入よりも減るケースが多いことも考慮に入れておく必要がありそうです。
7. 老後に向けて今から貯蓄を始めよう
ここまで年金支援生活者給付金について詳しく見てきました。
このような給付金は、生活を支えるうえで大きな助けになります。申請しなければ受け取れないため、手続き方法を改めて確認しておきましょう。
ただし、給付金は永続的に支給されるとは限らず、根本的な解決策とは言えません。そのため、現役世代の方にとっては、将来に向けた資産形成を今のうちから考えておくことが重要です。
具体的には、銀行預金による貯蓄のほか、NISAやiDeCoなどを活用した資産運用といった方法があります。まずは自分に合った方法を見つけるためにも、情報収集から始めてみてはいかがでしょうか。
参考資料
- 厚生労働省「年金生活者支援給付金制度について」
- 日本年金機構「令和7年4月分からの年金額等について」
- 日本年金機構「老齢基礎年金を新規に請求される方の請求手続きの流れ」
- 日本年金機構「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)が届いた方へ」
- 厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 国税庁「令和5年分 民間給与実態統計調査」
マネー編集部
