あなたは外国人から日本がどのような印象を持たれていると思いますか? 「勤勉で働き者の人が多い」、「犯罪が少ない」「礼儀正しい」といった内容を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。
しかし、日本国内の一部では、このようなイメージとは真逆の、外国人に対する人権侵害がいまだに行われているようなのです。
被収容者の骨折やアレルギーを放置!?
平成も終わりに差し掛かっている今もなお、人権侵害を行っていると指摘され、このところたびたび報道で取り上げられているのが、「東日本入国管理センター」です。これは茨城県牛久市にある入国者収容所で、主に不法入国やビザが切れたことにより強制退去を命じられた外国人を収容する施設です。
この収容所で、被収容者は信じられないような扱いを受けているといわれています。一体、どのような扱いを受けているのでしょうか。
一例を挙げると、あるカメルーン人男性は、成田空港で不法入国を摘発され、そのまま収容施設に連行されました。収容前から足を骨折していた男性は、職員に「病院で継続的な治療を行いたい」と主張しましたが、職員からの許可が下りず、少なくとも10カ月間、骨折を放置されていたと報道されています。
他にも、あるクルド人の男性は、パン・卵・牛乳にアレルギーがあるにもかかわらず、収容所内の給食にはアレルギーの原因となる食材が含まれていて、じんましんがずっと治らないままになっていると指摘されています。
5人もの自殺者
このような悲惨な状況に耐えかねてか、東日本入国管理センターを含む国内の収容施設全体では、2007年から2018年4月までの期間で、公表されているだけでも合計5人もの自殺者が出ており、自殺未遂も入れるとこの数はさらに多くなります。これを見ても、被収容者が精神的・肉体的に追いつめられていたことがわかります。
また、自殺以外の死因も含めると、同期間で13人もの死者が出ているといいます。体調不良を訴えていたにもかかわらず放置されて死亡してしまったという話もあり、いずれも不慮の事故や寿命による死ではないと見られています。
これらの大半に対しても当局側は「詐病(病気だとウソをついている)だと思っていた」などとして明確な落ち度はないと強調しています。
もちろん彼らは日本の法律に違反しているということで収容されているわけですが、法律違反をしているから人権侵害をしてもよいというわけでは決してありません。これらの報道について、ネット上の反応でも、「人を人として扱っていない」「ナチスの収容所のようだ」といった感想が上がっています。
「入管密着番組」への批判
また、こうした状況の一方で、この夏から秋にかけて「入国管理局への密着取材番組」が相次いで放送されました。
これらの番組内では、摘発や拘束を受けた不法滞在者が不法滞在になった背景や、その遠因のひとつといわれる外国人技能実習制度の問題点には一切触れずに、入国管理官など関係者を「無法者を取り締まる正義の味方」的に描いています。外国人技能実習制度については、日本弁護士連合会(日弁連)も「多くの人権侵害を引き起こしていることから、早急に廃止するべきである」と声明を発表しているほどです。こうした番組やその内容に対して、「入管のPR番組」「露骨なプロパガンダ」といった批判も集まっています。
このように批判が起こっている中で、2018年9月、収容者が使うシャワー施設の脱衣所などに「破壊行為への抑止策」として監視カメラが設置されていたことも発覚し、「プライバシー侵害ではないか」という指摘もなされました。これに対して山下貴司法務大臣が10月16日に記者会見で「カメラ撤去を指示した」と明らかにするなど、新たな問題点もたびたび浮かび上がってきています。
この先、状況は改善されるか
2010年ごろには、相次ぐ死者が出ていた状況を受け、国会議員などが東日本入国管理センターに出向き、仮放免の条件の緩和などを提案しました。その後、被収容者が弁護士に無料で相談できる機会をつくるなど、状況の改善が見られました。しかし、その後は状況改善の動きはあまり見られなくなったといいます。
おそらく、国内でこのように悲惨な場所があるということを知らなかった方も多いのではないでしょうか。この先、上記のような状況がどのように変化していくのか、その道筋はいまだ見えません。ただ、他のメディアも含めて、こうした状況を少しでも伝えていくことが、状況改善の一助となることを祈るばかりです。
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