2018年10月30日に行われた、川崎重工業株式会社2019年3月期第2四半期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。IR資料
スピーカー:川崎重工業株式会社 代表取締役副社長執行役員 富田健司 氏
第2四半期決算実績 サマリー
富田健司氏:みなさん、こんにちは、富田です。第2四半期の実績、各セグメントの見通しなどを中心に、ご説明していきたいと思っております。
まずは、全体のサマリーです。受注についてですが、エネルギー環境におきまして、国内向けLNGタンク、それから国内向けのコンバインドサイクル発電プラントを受注しましたので、前期比で約500億円の増加となりました。
売上は精密機械・ロボット、モーターサイクル&エンジンで増収となったものの、航空宇宙システム事業、車両での減収幅が大きく、全体でも減収となりました。
営業利益は船舶海洋事業で改善は見られましたものの、航空宇宙システム事業において、新型エンジンの開発償却負担増に伴いまして、主要費用が増えました。それから、車両において受注工事費損失引当金の計上がありましたため、約80億円の減益となりました。
経常利益は、営業利益の減益に加えまして、航空宇宙システム事業で民間航空エンジンの運行上の問題にかかる引当金を、営業外費用で約100億円計上したこともありまして、トータルで約150億円の減益となりました。
また、親会社株主に帰属する当期純利益ですが、経常利益の減少もあり、約140億円減益の35億円の損失となりました。このスライドの下に、売上加重平均レートと影響外貨量を示しております。ドルは109.80。前年同期から約0.7円ですが若干の円高となっております。
なお、10月19日に通期見通しを修正しておりますが、後から出てきますように、例えば営業利益では通期計画値が660億円であるのに対して、上期の実績が84億円ということで、進捗率が非常に低い状態です。上期・下期の利益配分がアンバランスな点に、懸念を抱かれる方が多いと思います。
しかしながら、今回損失を計上しました車両は、今回第2四半期に計上したわけですが……昨年は車両セグメントの売上と利益を第4四半期に計上いたしましたが、控除をしてしまいますと、上期・下期の利益配分バランスはほぼ同水準ということになります。
また、いつもご案内しているとおり、当社官公庁向け、あるいはモーターサイクル事業で下期に売上利益が多く計上される傾向にあります。今回、航空宇宙でも増収等により下期での採算改善が見込まれておりますので、今回の見通しは十分に達成できると考えております。
前年同期比損益増減要因分析
前年同期比の増減要因分析を説明させていただきます。営業利益ですが、161億円から今回が84億円ということで、74億円の減益となりました。この減益の要因分析を順番に申し上げます。
まず、前年同期にLNG船契約で受注工事損失引当金を計上しましたが、これが今回はなく、36億円のプラスに働いています。それから、車両損失のうち、当期決算に計上されたものということで、ロングアイランド向けのベース契約の追加引当金が25億円です。また、ワシントン向けの補修費用の売り込みが30億円と、国内向けの引当計上が30億円です。ここまでが車両でございます。
為替の変動ですが、これは0.7円の円高ということで、約10億円のマイナスで採用しております。次に売上変動ですが、航空宇宙システムや車両事業の減収による減益がありましたが、精密機械、モーター&サイクルエンジンの増収がカバーしまして、ネットでプラスの11億円となっております。
売上の構成変動ですが、航空宇宙システムの新型エンジンの開発費償却負担増ということで、採算低下。それから、ロボットにおいて、半導体ロボットが売上に占める割合で低下ということで、精密機械・ロボットの収益が悪化しました。反面、船舶で低採算案件が減少。また、エネルギー事業の採算性改善もありまして、全体ではプラス8億円という試算になっております。
販管費ですが、第1四半期の時に、モーター&サイクルで海外販売代理店の貸し倒れ引当金の計上がありました。それから、第1、第2四半期を通じて精密機械ロボット事業の増産対応費用の増加が見られました。これらにより、36億円の費用増ということです。
前年同期比損益計算書の概要
営業外損益のご説明をいたします。営業外は、前期比で72億円悪化のマイナス82億円となっております。変動要因はいくつかありますのでご説明します。
持分法利益ですが、中国における合弁会社の利益減。それから、医療用ロボットの開発費の増加によって赤字幅が拡大しました。ということで、トータルで17億円悪化しております。
為替差損益ですが、前期末から今期末にかけて、為替レートが円安に動いたことに伴いまして、16億円のプラスになります。また、ここにありますように、民間航空エンジンの運航上の問題に係る負担金ということで、営業外では97億円を計上いたしました。
航空宇宙システム
第2四半期の実績ですが、受注売上の前期比は期待のとおりでありますが、民間航空エンジンの分担品が増加した一方、防衛省向けの航空機、民間航空機向けの分担製造品の減少により、ネットで減収になっております。
営業利益は、航空エンジンの分野で、新規プログラムの開発費償却負担が増加しましたので、全体では62億円の減益ということになりました。
通期見通しですが、全体の為替レートが今回107円から110円に見直しましたので、このセグメントで約40億円弱の増益になりました。その他で、民間航空エンジン分担製造品の採算性向上、コストダウンの推進によって増益が見込まれますので、本セグメントでは為替と併せて、前回公表時よりも80億円の増益を見込んでおります。
なお、第2四半期の営業利益ですが、ジェットエンジンの開発費負担に加えまして、今回の特徴ではありますが、前年度に納入しました民間航空エンジン本体の値引きが、この第2四半期、前半に集中したということで、非常に低水準になっています。第3四半期以降は、このアフターを中心とした売上増が見込まれますので、通期の見通しに関しては十分達成可能なレベルにあると考えております。
エネルギー・環境プラント
エネルギー・環境プラントです。第2四半期の実績ですが、受注売上はここに書いてあるようなかたちになります。国内向けのLNGタンク、産業用ガスタービン案件の受注が伸びております。
売上は、海外向けの化学プラントの工事量減少がありましたが、エネルギー事業の工事量増加がありまして、前年同期並となりました。この化学プラントは、トルクメニスタン向けのガス・ガソリンプラントのことであります。
利益面では、主にエネルギー事業におきまして、増収です。採算性の改善が見られましたので、先ほど申し上げた化学プラントの減収に伴う減益をカバーいたしまして、全体としてはこのセグメントで21億円への好転となりました。
一方、通期見通しですが、下期に産業用ガスタービンの売上時期の見直しがありまして、これに伴って売上が減少いたしました。結果的に、これは通期では減益になるだろうと見ております。海外LNGプラントの下請け会社への請求状況につきましては、後でご説明申し上げます。
精密機械・ロボット
精密機械・ロボットです。第2四半期実績、まず受注売上ですが、前期比は建設機械市場向けの油圧機器並びに各種ロボットとも好調に推移いたしました。
営業利益は増収でしたが、ロボットの売上ミックス、半導体ロボットの悪化、油圧機器の増産対応費用、それから事業拡大に伴う固定費の増加などがありまして、絶対額は増加いたしましたが、このセグメント全体の売上率は若干の低下という結果になりました。
通期見通しですが、受注・売上とも建設機械市場向けの油圧機器の増加がある一方、ロボットは減少として見ております。半導体ロボットの売上の減少等、売上ミックスの変動によって、(このセグメントは)7月の公表値から5億円の減益と見ております。
船舶海洋
船舶海洋のご説明をいたします。第2四半期の実績は記載のとおりで、売上は前年同期に比べましてLNG船が減少しました。一方で、LPG船の増加ということで、絶対値では若干の減少になりました。
営業利益は階段グラフにありましたとおり、前期はLNG船の損失処理等がありましたが、今年はそれがありません。また構造改革の実行中で、コストダウン等で今期売上案件の採算が改善しておりますので、前年同期比では63億円の改善となりました。
通期に関しては、大きな変動はございませんで、見通しは据え置いております。
車両
車両事業です。こちらは、先ほどの説明にもありましたが、簡単にレビューをします。第2四半期実績は、受注売上は書いてありますとおり、北米案件を中心に減収となりました。
第2四半期の利益ですが、階段グラフにありましたように、M9のベース契約です。M9ロングアイランドの追加損失が25億円。ワシントン(首都交通局向け車両)の補修。国内向けの受注引当等々で合計85億円の大型損失計上がありました。他案件で若干の採算改善があったのですが、トータルで79億円の悪化となってしまいました。
通期見通しに関して、売上は今回損失計上しました北米案件、ロングアイランドと、ワシントン(の補修)の売上時期を見直しましたので、250億円の減少になるかなと思っています。
利益は、第3四半期にロングアイランドM9のオプション契約受注を見込んでおりまして、第2四半期実績の88億円のマイナスに加えて、さらにおよそ60億円の受注工事損失が見込まれることから、今回月通期見通しを140億円の営業赤字と、大幅に引き下げております。
モーターサイクル&エンジン
モーターサイクル&エンジンにまいります。第2四半期の実績でございますが、売上の前期比は、先進向けの2輪車、4輪車の販売が好調だったということで、60億円の増加になりました。
営業利益は、海外販売代理店に対する貸し倒れ引当金の計上と販促費の一時的な増加、鋼材等の若干の値上がりで26億円の減益となっております。通期に関しては、今回為替レートの前提変更を行ったこと、販売計画を少し見直したことで、売上・利益ともに見通しを引き上げております。
貸借対照表の概要
貸借対照表についてご説明をいたします。今年度は、過去最高の売上となる見込みでございまして、全般的に生産が拡大基調にありますことから、前期末に比べて棚卸資産が増加しまして、総資産が1,155億円増加しております。
一方で買掛債務が減少しましたので、運転資本が増加しまして、借入金が前年度期末の3月末から1,552億円増加しております。その結果、D/Eレシオは119.1パーセントとなりました。例年、第1四半期から第3四半期にかけては借入金が増加いたしますので、例年の傾向ではあります。なお、前年同期のNet D/Eレシオは116パーセントでしたので、ほぼ1年前と同水準にございます。
次に、海外LNGタンクの建設工事の賠償請求についてご説明いたします。前回、7月31日の決算説明会で、下請け工事会社の契約違反によって、当社が被った損害の一部、約400億円を請求したと説明いたしました。本費用は、当社が工事会社と結んだ当社工事範囲の下請契約に関するものでございます。当該工事会社は、コンソーシアムメンバーでもありますので、本来は工事会社訴訟分の工事についても、当社が肩代わりをしているという格好になります。従いまして、この肩代わり費用を今回請求しました結果、9月末時点での請求額は480億円に増加をいたしました。
引き続き、請求額の回収に向けた手続きを進めてまいります。なお、請求費用の一部は総原価見積もりから控除しまして、貸借対照表のその他資産に計上しております。
キャッシュ・フローの概要
このところの傾向でございますが、営業キャッシュ・フローは、事業拡大に伴います運転資本の増加はありますが、船舶海洋事業の入金の増加、並びに海外プラントの工事量減少による材料・工事費の支出減がありまして、前年同期比では99億円改善いたしました。
投資キャッシュ・フローですが、前年に引き続きまして、まだ航空宇宙を中心に高水準の設備投資を継続しており、当期に支払いが増加したことから72億円の増加となっております。結果、フリー・キャッシュ・フローは前年比26億円の改善で、マイナス1,609億円ということになっております。
2018年度ですが、売上増に伴う運転資本の増加や、航空宇宙等の設備投資の継続によって、厳しい状況が想定されておりますが、引き続き改善に向けた努力を継続してまいります。
連結受注高・売上高・利益見通し
2018年度の見通しの総括でございます。2018円度の見通しに関しましては、前回7月末の公表値と比較しまして、航空宇宙システムの増加などにより、受注こそ見通しを引き上げるものの、営業、経常、純利益といった利益面では、それぞれ、この19日に発表しました業績予想の修正のとおり、見通しを引き下げざるを得ません。
(税前)ROICに関しても、ハードルウェイトとしている8パーセントを割り込む見通しでございます。
先に社長より説明いたしましたとおり、車両事業の再建に向けまして全力を尽くすとともに、今回の公表値から少しでも改善するよう、さらなる上積みに向けて全社を挙げて努力を継続してまいります。
配当に関しましては、業績見通しは修正しましたが、前回のアナウンスどおり、1株当たり70円を想定しております。為替に関しましては、前回の公表時の1ドル107円から今回は110円に見直しております。ユーロに関しては据え置きでございます。
研究開発費・設備投資・期末従業員数
ひと言、補足をいたします。この中で研究開発費が動いておりますが、設備投資に関しましては、キャッシュ・フロー改善の施策の一環ということで、取得時期の見直しをやっており、投資額・減価償却費とも抑制をしている次第でございます。
説明は以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。