世界初のフォルダブル(折りたたみ可能)端末を発表したのは、韓国のサムスン電子でも中国のファーウェイでもなかった――。中国のロヨル(Royole Corporation)は10月31日、フレキシブル有機ELディスプレーを搭載した世界初のフォルダブルスマートフォン「FlexPai」を発表した。同社の公式サイトから開発者モデルとして128GB品を1588ドル、256GB品を1759ドルで販売し始めたと同時に、中国の消費者向けに予約も開始した。12月後半から出荷する予定だ。

開くと7.8インチのタブレットに

 FlexPaiは、画面を外折りに曲げることができ、開くと7.8インチのタブレットとして使える。ロヨル自社製のフレキシブル有機ELは曲率半径1~3mmで20万回以上の曲げ、ねじり、引っ張り試験に合格しているという。開いた状態で解像度は1920×1440、アスペクト比(画面の縦横比)は4:3、画素密度は308ppi。

 プロセッサーには米クアルコムの2.8GHzオクタコア「Snapdragon 8」シリーズを採用し、1600万画素の広角カメラと2000万画素の望遠カメラを搭載した。RAMは6GBと8GB、内蔵メモリーは128/256/512GBモデルをラインアップし、外部ストレージとして最大256GBのMicroSDカードに対応する。容量3800mAhのリチウムポリマー電池を搭載しており、重量は320g。

 折りたたんだ状態ではデュアルスクリーンを同時操作することができ、相互に干渉することなく異なるインターフェースを使用可能。エッジスクリーンのサイドバーで通知の受け取り、画面使用を妨げる可能性のある通話やメッセージを管理できる。

 グローバルでの製品立ち上げに向け、同社は並行して「Global Developer Support Project」を展開する。3000万ドルを投じて世界のソフトウエア開発者をサポートし、FlexPai用の様々なアプリを開発する予定だ。

 創設者兼CEOのBill Liu氏は「フォルダブルスマホはユーザーに革新的で異なる体験を提供する。人間と機械のインターフェースに全く新しい次元をもたらし、家電業界を変えてくれる」と期待を述べた。

サムスンとファーウェイも近々発表へ

 フォルダブルスマホについては、サムスン電子がグループ会社サムスンディスプレー製の7.3インチのフォルダブル有機ELを搭載し、折りたためば4.5インチになる端末を開発中とされる。本体の1/3程度を曲げられるようにし、折りたたんでもディスプレーの一部が見えるようにするとの情報もある。毎年1月に米ラスベガスで開催される世界最大の家電見本市「CES」で正式発表し、2019年2月に発売予定だといわれている。

 サムスンの商品化に向けた開発を補足する情報として、住友化学は、5月に開催した経営説明会でサムスンのフォルダブル端末向けに「ウィンドウフィルムとポラライザーを合わせた『ウィンポール』と呼ぶ製品を開発している」と述べ、採用が決まったことを匂わせた。また、かねてサムスンディスプレーに供給する可能性が高いといわれてきた韓国のコーロンインダストリーズも、フォルダブル有機EL用に透明ポリイミドフィルムの量産を開始したことを発表していた。

 一方、ファーウェイは、中国のディスプレーメーカーBOEから8インチのフォルダブル有機EL(折りたためば5インチ)の供給を受けて、早ければ11月にも端末の開発を発表するのではと噂されていた。サムスンより先に発表してブランド価値を高める狙いがあり、次いで19年末には5G通信対応の折りたたみスマホを商品化する計画も温めているとの情報も流れていた。

ロヨルは設立わずか6年のベンチャー

 サムスンとファーウェイが争っていた「世界初」の座を奪ったロヨルは、フレキシブル有機ELを開発・事業化しているディスプレーメーカーだ。ロヨルは2012年に設立されたベンチャー企業で、深セン、香港、米カリフォルニア州フリーモントにオフィスを持つ。Bill Liu氏は中国の清華大学から米スタンフォード大学へ進んだ秀才で、フレキシブルな有機ELディスプレーやセンサーの開発・事業化を進め、これを家電やスマートホーム、ファッション、オフィスなどに実装していく戦略を打ち出した。

 これまでの開発実績として、世界最薄のフルカラー有機ELフレキシブルディスプレーとフレキシブルセンサー(2014年)、世界初の折りたたみ式3Dモバイルシアター(2015年)、フレキシブルエレクトロニクスに基づく世界初の車載カーブダッシュボード(2016年)、フレキシブルセンサーを用いたスマートライティングパッド「RoWrite」(2017年)などがある。なかでも2014年に発表したフレキシブル有機ELディスプレーは厚さ0.01mmで曲率半径1mmを実現し、大きな話題を呼んだ。

 2018年6月には、深セン市の敷地110万平方フィートに総額17億ドルを投じて建設した疑似6世代(5.5世代)基板を用いた有機ELディスプレーの量産工場を完成・稼働させた。フレキシブル、フラット、カーブドの3種類の有機ELを作り分けることができ、フォルダブルやローラブル(巻き取り可能)にも対応できるという。これにより年間5000万枚以上のパネル生産能力を確保していた。

電子デバイス産業新聞 編集長 津村 明宏