2018年10月31日に行われた、ヤフー株式会社2019年3月期第2四半期決算説明会・質疑応答の内容を書き起こしでお伝えします。IR資料
スピーカー:ヤフー株式会社 代表取締役社長/社長執行役員/最高経営責任者(CEO) 川邊健太郎 氏
ヤフー株式会社 常務執行役員/メディアカンパニー長 宮澤弦 氏
ヤフー株式会社 常務執行役員/コマースカンパニー長/コマースカンパニー ショッピング統括本部長 小澤隆生 氏
ヤフー株式会社 執行役員/最高財務責任者(CFO)/コーポレートグループ財務統括本部長 坂上亮介 氏
利益成長に回帰するのはいつごろか
質問者1:説明ありがとうございます。私から2点、お願いいたします。まず1点目、利益成長に回帰するのはいつ頃になりますでしょうか。先ほどご説明いただいた中で、「Yahoo! JAPAN」全体の利用時間が12パーセント伸びているというお話しだったのですが、ディスプレイ広告の成長はほとんどない状況にあると思います。
データ・ドリブン化が進むのであれば、これは本来、利用時間よりも伸びるべき数字だと思いますので、(ディスプレイ広告の数字が伸びるのは)いつなのかというところを教えてください。
また、今四半期でウォーターフォールを示していただきましたが、売上増と販管費増が一緒になっている状態は正常ではないと思います。広告売上がきちんと増えるようになり、費用増が売上を下回るのは、いつ頃になるのでしょうか。
川邊健太郎氏(以下、川邊):今年度から、未来を創造するための追加投資ということで、新たなチャレンジもしています。以前から行っていたeコマースへの投資ですとか、広告売上ナンバーワンに向けた投資にそれが加わっておりますので、少し長い目で見ていただければと考えております。
ただし、今も触れていただいたように、各種KPIは確実に伸びております。最終的には、何も投資をしない時よりも大きな利益成長を迎えるという筋書きの中で進めておりますので、若干の長い目で見ていただければなと考えております。
2点目は、詳細は坂上CFOからですが、連結も含めた複合的な要因で、今回たまたまフラットになっているということです。それが構造的にということではないと、私はマクロでは理解をしております。
坂上亮介氏(以下、坂上):今回は第2四半期同士の比較で、こうしたフラットなかたちになっている、その1つの要因としては、この1、2年、引き続き人材の採用を強化しているからです。リテンションプランなども含め、人材採用の強化による費用が少し上回っているという点が1つあります。
もう1つは、去年と比較するとアスクルが、物流や配送のところで非常にコストヘビーになってきており、今回で言うとアスクル自体がマイナスの赤字という状態です。第2四半期に関しては、これが特殊な要因としてあったと思っています。年度のトータルで見ますと、前回年度のガイダンスをお示ししたところ……ベースの事業のところで、まずはフラットに着地させるようにしていきたいと考えております。
川邊:他の方もいらっしゃいますので、できるだけ質問はコンパクトにお願いします。
質問者1:2点目を簡単にお願いします。「PayPay」でTポイントを使っていないのは、今後、ヤフーにおけるTポイントの扱いについての示唆でしょうか。
川邊:「PayPay」でTポイントを使っていない理由は、Tポイントに対応していないお店や事業者さんも含め、あらゆるところで「PayPay」を使えるようにしたいと思っているからで、Tポイントとマッチしないと考えております。
他方、eコマースにおいて、Yahoo!ショッピングとTポイントというのは、ユーザーの認識も含めてしっかり機能しておりますので、とくにやめてしまうということではなく(引き続き)継続していきたいと考えております。よろしいでしょうか。
アドフラウド対策の影響について
質問者2:ご説明ありがとうございました。私も2点あります。1つ目が、広告収入と言いますか、広告事業の見方についてです。アドフラウド対策ということで、先ほど減収の可能性もある、減収インパクトもあるとおっしゃいました。下期からこの1年くらいの広告事業の見方について、アドフラウド対策の影響も含めて教えてください。
坂上:アドフラウドですが、見通しとして含めているのが、四半期でおおむね十数億円くらいの影響があると見立てています。来年まではまだ見通せていないのですが、今年度の見通しとしては、広告全体で言うと1桁半ばくらいというところで、通期として見通しているところです。
SS(スポンサードサーチ)に関しては、上期で13パーセント台の成長がございました。ここに関しても、下期は10パーセント近い成長を見越していますので、通期で見ても10パーセント程度というところで、検索連動広告に関してはそういった成長をイメージしています。
ディスプレイのところは、先ほどアドフラウドのところでもお話ししましたが、通期で見るとだいたい1桁の前半に落ち着いてしまうかなというところが、今の見通しです。
質問者2:ありがとうございます。2点目ですが、モバイル決済の座組みをもう一度整理していただきたいと思います。「PayPay」、ソフトバンク、御社、もう1つ「Alipay」さんが入ってきて、例えば「Alipay」を使った時に金銭的なものが発生するのでしょうか。
また「PayPay」の役割と、とくに御社のプロモーションや店舗の開拓など、そのあたりについて、もう1度整理して教えていただきたいと思います。
小澤隆生氏(以下、小澤):では私からお話しします。まず、プロモーションの考え方ですが、一時的にはPayPay社が負担をします。一部、「Yahoo! JAPAN」アプリに搭載する「PayPay」を、ユーザーにしっかり普及、促進させていくものに関してはヤフー側で費用を負担するという分担です。いずれにしましても、一時的には、例えば「ポイントのキャッシュバックをします。これは一時的に大きくやります」なども含めて、「PayPay」で展開するなら、PayPay社が負担します。人員の確保、人件費もPayPay社(の負担)となります。
それから「Alipay」が使われた場合について、「Alipay」に関しては加盟店さんが「Alipay」決済手数料をAlipay社に支払うということで、PayPay社としては売上もコストも立たなかたちになります。「PayPay」が使われた場合と「Alipay」が使われた場合で、ユーザーから見ると同じQRコードを読み込んでいるのですが、PayPay社はあくまで、QRコードを「Alipay」と共有している程度のことだと思ってください。
「PayPay」の店舗開拓の進捗について
質問者3:ご説明ありがとうございました。私から2点で、まず「PayPay」サービスについてです。店舗の開拓の進捗についてお伺いできればと思います。今、地図を確認させていただいたら、全国的に展開されています。現状の進捗、数をご開示いただけるかわからないのですが、もし可能でしたら数字と、手応えや目指す部分などをご整理いただければと思います。
川邊:まず、数については、残念ながらまだ非開示であります。営業の進捗は、当初は思ったより苦戦しました。なぜなら、実物がないため、お店側が急ぐ必要もなかったということです。これはよくないと、我々のアプリのローンチも一生懸命に急ぎまして、ローンチしました。それ以降は実物があってイメージできるので、比較的(営業の)能率は上がってきているところです。
チェーン店さん、個店さんとそれぞれ対応していますので、ここからスパートをかけて、なんとか年度において、自分たちが獲得目標としていた数字に近づけていきたいと思っています。
質問者3:ありがとうございます。2点目、アドフラウド対策についてです。これもダウンサイドリスクということでご説明いただきました。長期的に見て、アップサイドに働く部分は、どういったところを期待しておけばよいでしょうか。悪いものを排除して、メディアの価値が高まったりというところもあるかと思います。そのあたりについて、お話しいただければと思います。
川邊:今まさにおっしゃられたこと、および先ほどの資料の目的の3つ目(信頼性の高いメディアに広告を出稿する広告主の拡大)にあったところは、アップサイド要因としてあると思います。なぜなら、我々も相当デジタルマーケティングを実施してきましたが、それなりにアドフラウド被害にあったわけです。
その感覚からすると、「どうなっているか、わからない」「どんなところに出ているか、わからない」という出稿ではなく、安心できるところにきちんと出稿したいというのは、一広告主としても思うところであります。ここは、多少そういうダウンサイドリスクがあったとしても、きちんと対応して、「ヤフーはちゃんと(対策)している会社なんだ」というイメージをクライアントさんに持っていただくことで、アップセルにつながっていくのではないかと考えています。その規模がどれぐらいになるかは、もう少し時間をかけないとわからないところではあります。
質問者3:追加でお伺いしたいのですが、単価などへの影響は、現状で見えていますでしょうか? バリューが高まってくれば、一番最初に出てくるのは、出稿数が減って単価が高まってくる……そういった動きが見えてもいいのかなと思っています。
宮澤弦氏(以下、宮澤):アドフラウド対策は一時的、短期的にはマイナスの影響が大きく出ます。一方でクライアントさまからの反応は、当初予想していたよりも好評と言いますか、「よくここまで思い切った判断をした」と、非常に高く評価いただいていると思っています。それがどの程度、単価向上につながっていくかというところは、現在はまだ織り込んでいません。
今後、それが再評価につながり、ビッドをより高くしていく方向につながるように、営業努力をしていくことになると思います。
スマートフォン版のYahoo!プレミアム広告の状況について
質問者4:2点、お願いいたします。まず1点目、7月から導入されたと思いますが、スマホのプレミアム動画広告についてです。これが今、初速としてどのようなかたちになっていて、この下期、そして来期以降の押し上げ効果としての手応えなど、どのように感じていらっしゃるかを教えてください。
坂上:9月は広告の出稿が多い時期ということもあり、動画の部分は売り上げが盛り上がったのは事実でございます。第3四半期の見通しとしては、これまでと大きく変わらないかたちです。通期で見ると、これまでガイダンスしていたところよりも若干弱い……今はまだ動画広告全体として、というような見通しです。今回7月にリリースしたものが、動画広告全体を補えるほどまでには、まだ到達していない状態です。
宮澤:この第2四半期は、スマートフォンの動画広告でいきますと前年比で4倍に成長いたしました。一方で、従前よりご報告しておりますとおり、PCのマイナス分がありますので、それによって成長が多少打ち消されているかたちになります。今後、スマートフォンは引き続き好調に売れると思っておりますが、PCの売上をどのようにできるかというところが肝になってくると思っております。
我々としては、デバイスに依存しない商品に変更したり、期間をもう少し短めにした商品に再設計したり、ブランドリフトの指標をきちんと計測できるようにするなど、いくつかプロダクトに変更をかけて、このプレミアム広告全体を再建していきたいと考えているところです。
質問者4:ありがとうございます。2点目は「Paypay」の導入店舗数についてです。導入店舗向けの御社のプロモーションの内容などを調査しておりますと、決済額に対して1パーセントを還元したり、わりと積極的な販促を展開されているかと思います。
その内容も、先着30万店舗に1パーセント還元のキャンペーンを、現在プロモーションとして展開されていらっしゃいますが、規模間として、今の営業の進捗が、2019年1月前後には30万店舗くらいの獲得ピッチであるという理解をしているのかについて確認させてください。
小澤:うかつに口を滑らせそうでございますが、意気込みとしては30万店舗どころか、というお話でございます。実際、今後のスケジュールといたしましては、10月にサービスをローンチしていますが、今、ユーザー様にとって使う意味があるかというと、他社よりも劣っている状態ですし、もちろん店舗様から見ても1パーセントの還元や決済手数料ゼロ(のメリット)が、今はそこまでないと思います。
むしろ、「どれくらいの送客があるのか」という状態で、大手チェーン店さま、個店さまなどいろいろ重みづけはございますが、我々はどのあたりでキャンペーンを打ち込むのかや、「Yahoo! JAPAN」のユーザーに対してのキャンペーンを……これから「Yahoo! JAPAN」のアプリ上に「PayPay」が導入されますから、そのタイミングを見据えながら、営業と調整をしております。
(キャンペーンを)打ち込むタイミングによっては、1月、2月、12月など前後しますが、現場サイドとしては一刻も早く30万店舗どころか、という気持ちでやっております。しかし、時期と数に関しては、お約束と言いますか、ここでは申し上げられません。
ただし、感じていただきたいのは、意気込みレベルではそういう数字である、というところでご認識いただければと思います。
川邊:ほかのモバイルペイメントのサービスに比べて、あるいは日本がキャッシュレス化に向かうためには、とにかく対応店舗が多くないと、「ここでは使えて、ここでは使えないとなると、不便だから使うのはやめよう」となってしまうため、我々としては対応店舗に最大のこだわりを持っていきたいと思っております。現に、PayPay社でも、かなりの営業員がいるうえに、ソフトバンクの法人営業部隊も乗り出して、大手にも営業していきたいと思っております。当面「Paypay」としては、店舗拡大の営業力があるというところを最大の特徴にしていきたいなと思っております。
現状を踏まえ、Yahoo!ショッピングの目標数値は見直す必要はないか?
質問者5:まず、YDNについてです。これは9月にアドフラウドの問題が起きて、それがなければ、7~9月期の数字はもう少し上に上がったのか……7~9月期の数字を見ると、前四半期比では減っていると思います。
逆に、10億円の影響があるとおっしゃいましたが、1年前もそうした不正な広告で売上が立っていたのでしょうか。それが、1年前の第1、第2四半期はプラスですが、アドフラウドの問題……アドフラウド的な広告でも売上を取っていたのであれば、それを外すとどのようになるのでしょうか。
つまり、先ほど10億円の影響があるとおっしゃったのは、1年前も過去も、10億円ぐらいの影響があったものを配信したのであれば、これから前年比でかなり減っていきますよね。その意味での10億円の影響なのか、今後配信できなくなるものが10億円あるということなのか(整理して教えてください)。
坂上:アドフラウドのようなことへの対策は、ずっと継続してやっておりました。9月に大々的な発表の仕方になってしまいましたが、第2四半期に関しては、期初から徐々に、そこの部分は切っていたため、前期比で減っているように見えるというのが1つあります。
2017年第2四半期に関しては、どちらかと言うとプロダクトのところで一部、改変があったため、前年比で第2四半期は伸びていたように見えています。
どういった内容かと申しますと、2017年第2四半期まではインフィード広告へ出稿するという指定をされた在庫しか、インフィード広告上に検出されませんでした。しかし以降は、いわゆるインフィードに出せるようなフォーマット……例えばYDNなどのフォーマットでも、在庫として広告主さんに出稿していただいた部分でも掲載するようになりました。その分、ビッドが活性化したということで、2017年第2四半期は伸びてきています。
その後、アドフラウド対策も継続して行った部分が多少ミックスされて、YDNは切っていた状態でございます。
質問者5:これから10億円減る、その影響があるというのは、どういう意味なのでしょうか。配信していたところが10億円あったものが、第3四半期にはなくなるということでしょうか。
坂上:そうですね。そこの部分はいったん1回は止めるという……。
質問者5:それは、昨年は配信していなかったのでしょうか。
宮澤:正確に申しますと、アドフラウドの対策自体はずっとやっておりました。このようなアドフラウドの問題は常々起こっている問題ですので、対応はしてまいりました。悪質なものに関しては、広告主への返金も、その都度発生ベースで行っており、それで売上を取り消すことも行っていました。
リリースにも書かせていただいておりますが、今回は一段踏み込みまして、SSP経由での配信等をすべてブロックしています。それによる影響は当然大きく出ました。良質なメディアも含まれており、その1つ1つを確認してからでないと復帰しないという対応をしております。これは去年とは全然違う方針になっております。
ですので、影響も大きいですし、逆に広告主さまからすると、よくそこまで思い切った判断をしたということになっております。当然、良質なメディアはきちんと戻していく対応を、鋭意進めている段階でございます。よろしいでしょうか。
質問者5:2つ目はEC(Yahoo!ショッピング)です。この第2四半期は1,735億円という、前年比約20パーセント増なのですが、我々の予想どおりなんです。確か、御社としては「30パーセントを目指し、四半期ごとにボラがある」ということでした。
この下期は、相当踏み込んだプロモーションを想定されているのでしょうか。当初の30パーセント増は、少し軌道修正が必要になっているのか、そのあたりを教えてください。
小澤:下期、現場サイドとしてはいつでもキャンペーンはやりたいと(考えています)。それは、将来の収益性であったり、会社全体のPLの中で許されるものであれば、またそれが株主さまのご理解を得られるものであればということで、常に調整はしております。
このタイミングで決まっている話はないため、ここではお話はできません。ボラがあると言ったのは、まさに(キャンペーンを)実施したり、実施しなかったりして、それがちゃんとした蓄積として残るか残らないかの検証を繰り返しながらですので、明確なお答えができなくて申し訳ありませんが、(30パーセント増の)目標を下げるつもりはございません。
目標に対して必要な手は打ちます。その結果、本当にこれは(数字を)修正しなければいけないというタイミングが来たら、修正いたします。よろしいでしょうか。
質問者5:ありがとうございます。
「PayPay」で採用しているQRコードは決済手段として普及するのか
質問者6:「PayPay」に関して2点、教えてください。1点目が、投資の出方の確認です。これからユーザー向けの還元策などを発表されると思いますので、それを見てということにはなってしまうのですが、今期はかなり加盟店開拓に大きな投資を割いていると理解をしています。来期は、ある程度加盟店開拓コストは落ち着いて、一方でプロモーションなどが加速していくことになるのでしょうか。
来期に関しては、伸びれば伸びるほど原価赤字が拡大していく想定をしておいたほうがいいのでしょうか。明確には言えないと思うのですが、トータルのコスト、投資額について、今期対比での方向感を……うまくいった場合でもいいのですが、どのように想定されていらっしゃるか、考え方を整理させてください。
川邊:私からまず回答して、詳細があれば坂上から(お伝えします)。お察しのとおり、第2四半期に関しては、サービスが始まってもいませんでしたので、加盟店にフォーカスをしておりました。第3四半期に入った直後から、一気にユーザーを獲得して、さらに、今日もご説明させていただいたような、その先のマネタイズ……O2Oの集客のソリューションや、FinTechのサービスなどを矢継ぎ早に充実させていき、きちんと収益化に持っていきたいなと考えております。大局的な見通しです。
坂上:この目先、半年程度は、ユーザーさま向けのプロモーションを実施することで、ユーザーにお店で使いたいと思っていただくことが、加盟店の営業用の材料になる。そういったかたちのプロモーションを考えております。
これまでは、加盟店を開拓するための営業の人員的なコストで、比較的費用がかかりました。しかし、この先は販促を進めることで、ユーザーさんも獲得しつつ、店舗も開拓するための費用を、この半年程度は取ろうとしてます。
結果的に、3月以降にどれぐらい店舗を獲得できるか次第です。そうなってくると、来期以降は加盟店だけに関わる開拓コストは、徐々に減っていくかたちになるという見通しでございます。トータルのコストに関しては、ユーザーさんがどこでも、常に使っていただける状態を生み出すために、まだコストがどこまでかかるかは見通せていないところでございます。
小澤:補足よろしいでしょうか。いずれにしてもPayPay社のコストになりますので、ヤフーから見た場合は常に出資をさせていただいているということです。念の為、補足させていただきます。
質問者6:ありがとうございます。2点目が、QRコードがそもそも普及するのかという議論があるかと思います。各社さん、サービスの展開を図るうえで、どのフォーマットがユーザーに受け入れられるかわからないため、いずれにせよ普及したものに対応できるような準備をしてます、というようなことかと思っています。
御社の場合、例えば日本人には馴染みの深いタッチ決済など、仮に別の方法で普及が進んでいった場合に、そもそもそのあたりをどう考えて戦略を立てていらっしゃるでしょうか。どのような対策を考えていらっしゃるのか、ヒントをいただければと思います。
川邊:QRコードは、あくまでも「How」の1つでしかないと思っています。我々自身はテクノロジーカンパニーだと思っていますので、より簡便な方法に対してイノベーションを作り出していきたいと思っております。
なお、今までのように、それなりの価格のする機器をどんどん置いていく形式ですと、普及に限界があったのがクレジットカードの事業なのではないかなと思ってます。本当の意味で日本をキャッシュレス化するには、今までクレジットカードが使えなかったお店で使えるようになってこそだと思っていますので、そういった店舗さんでも導入いただけるような、簡便な手段を研究・開発していきたいなと思っております。回答になっていますでしょうか。
質問者6:QRコード以外にも、簡便に導入してもらえるソリューションはあるということですね。もしくは、そのソリューションが結果的にQRコードで、QRコードの普及に注力しますということなのでしょうか。
川邊:それ以外のものも、もちろんあると思っています。今日、それが何かということをここで開示できるかどうかは別として、CTOの藤門を中心に、新たな簡便な手段の研究・開発も既に着手しています。
小澤:補足いたします。QRコードを普及させたいわけではないです。リアルを中心とした決済において、ヤフーを経由する金額を一番最大化させたいのです。恐らく、コストの関係だったりがあり、直近ではQRコードが店舗に受け入れられやすく、中国の先行事例があるため、進めやすいということで取り組んでおります。
我々から見ても、Suica(のようなもの)が楽であるということは、ユーザーのアンケートを見るだけでなく、自身の体験からしてもそうです。非接触型だったり、さらにその先に進化していく、その過渡期なんだろうなと思っております。
いずれにしましても、何が採用されるにせよ、ユーザーにとっても店舗にとっても重要なサービスを作り、そのお金とデータの流れをヤフーを経由させる状況になれば、それは広告のビジネスなどに幅広く展開できます。まずはQRコードでスタートしますが、時代の変化、ユーザーのニーズ、テクノロジーの進化に従って、どんどん進化させていくことになると思います。
「PayPay」が目指すキャッシュレスのマーケットにおけるシェア
質問者7:ご説明ありがとうございます。1点だけ、お願いします。QRコードでもそのほかの決済でもいいのですが、御社としては最終的に、消費のうちのどれぐらいの割合を取れば勝ちと言えるのでしょうか。
質問の仕方を変えますと、どれぐらいの比率を獲得できればマネタイズできるとお考えでしょうか。具体的な数字は難しいかもしれないですが、考え方を教えていただければと思います。
川邊:まずは、日本のキャッシュレス化を、競合も含めてどんどん進めていきます。キャッシュレスの大きなマーケット、要するにお金のデジタル化を進めることが前提になると思います。現在のキャッシュレス化は、非常に少ないなと思っておりますので、これは競合も含めてですが、キャッシュレス化比率を飛躍的に上げていきます。その中で、我々は最大シェアを持つということにチャレンジしたいと思っております。
もちろん、最大シェアを持たなくても、徐々に収益化していくとは思います。メディア事業、ネット上のコマース事業に並んで、リアルとネットの融合の決済からつながる事業ということで、同じような営業利益の単位を作り出すには、やはり最大シェアを持たないと駄目かなと思っております。これがおおよその考え方です。小澤さん、補足はありますか。
小澤:数字の考え方がいろいろあるとは思います。例えば、アメリカのAmazonが今、広告費を急激に伸ばしているところから紐解きますと、アメリカの全体の消費のうち、Eコマース化率が15パーセントぐらいです。
15パーセントのうち、例えばそのシェアの半分である7.5パーセントをAmazonが持っていると仮定するなら、Amazonはそこに対して、誰が何をどこでいくらで買っているか。どこで買っているかはAmazonですが、誰が何をいくらで買っているかという情報をもとに、広告配信のビジネスがどれだけ伸びるかということから考えると……例えば日本の消費150兆円に対して、このかけ算をしていくと、恐らく10兆円から15兆円ぐらいです。これはちょうどセブン&アイさんやイオンさんの売上、流通総額あたりにミートする(と思いますので)、8兆円から10兆円ぐらいの幅で決済ができると考えています。
ちなみに今、Yahoo!ウォレットで1兆4,000億円ぐらいの決済ができております。ネット上でこれぐらいできており、楽天さん、Amazonさんが恐らく2兆円台の流通総額。そして、トラベルと合わせると3兆~4兆円という幅ですから、リアルの決済を、例えばカード会社で5兆~6兆円を足していくと、10兆円、15兆円は大げさな数字ではないのかなと思います。
我々はメディアですから、広告事業とかけ算ができる。それはヤフーだけです。当然、楽天さんもAmazonさんもメディアを持っていると言っても過言ではないかもしれませんが、ここまでリーチの広いメディアを持っているのはヤフーくらいですから、当社が一番この価値があると確信しております。数値的には他社と同じぐらいだとしても、メディアがあることによるマネタイズの効率は、とても良いと考えています。これぐらいかなというのが目標の1つの考え方で、まったく会社としてはコンセンサスは取れておりませんが、Amazonから見るとこんな印象というところです。
通期営業利益ガイダンスにおける上方修正について
質問者8:2つ、質問があります。1つは、通期の営業ガイダンスの上方修正について、もう少し理解を深めたいと思います。30億円の上方修正は、基本的に上期の上振れ分と理解してよろしいでしょうか。もしそうであれば、下期はただ見直していないだけなのか、それともプラスとマイナスの要因があって、結果的に打ち消されているのかというところを、もう少し教えてください。
坂上:ガイダンスについて、今回30億円上げた部分は、上期が堅調に推移した部分で、ここは確実に数字が届くと思ったところです。下期のところは、社内の目標どおりに進むもっと数字が上昇するのですが、下期をリスク等々ひっくるめて、現段階で見通せるかたちでいろいろと計算した結果、今回は、上期のその部分と下期の未達リスクが残った状態で、今回は30億円だけ上げさせていただいたということになります。
質問者8:ありがとうございます。2点目は、株主構成の変化により、将来取りうる資本政策の幅が変わるかどうかをお伺いしたいです。端的に言いますと、もともとは恐らく自社株買いなどはできなかったと言いますか、大株主から買わないと、もう株価が安いから、自主的に自社株買いをするというのは、恐らくもともとの株主構成ではできなかったと(考えています)。
今の構成ですと、そのあたりの取りうる政策が変わったかどうか……つまり、引き続きSoftBankさんの了解を得ないと自社株買いができないのか、それとももっと機動的に……例えば今日の株価ですと、SoftBankさんから自社株買いで買った360円を下回っているわけですから、例えば安い水準と思っていれば、ある程度までは機動的にできるのかというところを教えてください。
坂上:機動的にできる余地が増えたかというと、増えたと思ってます。ただし、当然ながら取締役会等々の構成メンバーなどを踏まえると、やはりSoftBankの方も含めた中でのコンセンサスは当然得たうえでということになると思います。TOB前の、この微妙なバランスを取っていた出資比率を維持するための制約は、多少は外れたとご理解いただければと思います。