老後は仕事を引退し、悠々自適に過ごしたいと思う方もいるでしょう。
そのカギとなるのが年金額です。年金が少ない「いわゆる低年金」の状態になると、老後を過ごせるか不安になりますよね。
ある程度の見込額は、ねんきんネットやねんきん定期便などで確認することができます。
この時点で想定よりも少ないと気づけた場合は、そこから老後に向けた準備を始めていきましょう。
老後に向けて貯蓄を進めることも重要ですが、一方で支えになる「公的制度」「給付金」「助成」について知っておくと心強いでしょう。
本記事では、そのひとつである「年金生活者給付金」について徹底解説していきます。
1. 【低年金者も】年金額は個人差が大きいことに注意
厚生労働省の「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、公的年金の平均月額は国民年金(老齢基礎年金)で5万円台、厚生年金(国民年金部分も含む)で14万円台です。
その実態は、グラフのように個人差が大きいもの。
もし現役時代のうちに年金見込額が少ないとわかれば、不足額を私的年金や貯蓄などで備えていく必要があるでしょう。
一方、年金とその他の所得を含めても、一定基準以下の低所得となる場合は「年金生活者支援給付金」が受け取れる可能性もあります。
次章にて、「年金生活者支援給付金」の支給要件や金額について整理していきましょう。
2. 【低年金者を支える】年金生活者給付金はどんな人に支給される?
「年金生活者支援給付金」は、年金収入やその他の所得額が一定基準額以下の年金生活者を支援する目的で、2カ月に一度、年金に上乗せして支給される給付金です。
2019年に始まった比較的新しい制度なので、聞きなれない人もいるかもしれません。受給中の年金に合わせて、以下の3種類の給付金が設定されています。
- 老齢年金生活者支援給付金(補足的老齢年金生活者支援給付金)
- 障害年金生活者支援給付金
- 遺族年金生活者支援給付金
次では年金生活者支援給付金の「給付額」や「支給要件」について見ていきます。
2.1 年金生活者支援給付金の金額(2025年度は2.7%引き上げ)
2025年度、年金生活者支援給付金の基準額が前年度から2.7%の引き上げられ、以下のとおりとなっています。
- 老齢年金生活者支援給付金(月額):5450円(※基準額)
- 障害年金生活者支援給付金(月額):1級6813円・2級5450円
- 遺族年金生活者支援給付金(月額):5450円
老齢年金生活者支援給付金については、この基準額に基づき保険料納付済期間等に応じて実際の給付額が計算されます。
上記はいずれも「月額」の金額です。支給日には2カ月分まとめて年金に上乗せされます。上記の金額通りを受給できる場合、1回の支給で約1万円、年額にすると約6万円になります。
なお「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、2024年3月における平均給付月額(※)は、老齢年金生活者支援給付金4014円、障害年金生活者支援給付金5555円、遺族年金生活者支援給付金5057円でした。
※2024年3月において認定されている平均給付金額です。
2.2 年金生活者支援給付金の支給対象者
続いて、年金生活者支援給付金の支給対象者を見ていきます。
「障害年金生活者支援給付金」と「遺族年金生活者支援給付金」は、それぞれの年金(障害基礎年金もしくは遺族基礎年金)を受給中で、前年の所得が472万1000円以下の人です。
給付金の判定には、障害年金や遺族年金などの非課税収入は含まれず、扶養親族等の数に応じて所得基準額は変動します。
老齢年金生活者支援給付金のみ、支給要件がやや複雑となっています。
老齢年金生活者支援給付金の支給対象となるのは、下記の支給要件をすべて満たす人です。
- 65歳以上の老齢基礎年金の受給者
- 同一世帯の全員が市町村民税非課税
- 前年の公的年金等の収入金額とその他の所得との合計額が昭和31年4月2日以後生まれの方は88万9300円以下、昭和31年4月1日以前に生まれのは88万7700円以下
老齢年金生活者支援給付金の判定にも、障害年金・遺族年金等の非課税収入は含まれません。
また「基準額ギリギリで給付対象となる人」との間に不公平感が生じないように、「基準額をわずかに超えて給付対象外となる人」は「補足的老齢年金生活者支援給付金(※)」の支給対象となります。
※補足的老齢年金生活者支援給付金
1956(昭和31)年4月2日以後に生まれた方で78万9300円を超え88万9300円以下である方、1956年4月1日以前に生まれた方で78万7700円を超え88万7700円以下である方には「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給されます。所得が増えるにつれて、補足的老齢年金生活者支援給付金の給付額は減ります。
3. 年金生活者支援給付金の注意点:手続きしないと受け取れない!
注意点として、年金生活者支援給付金を受け取るためには請求手続が必要です。
※そもそも、公的年金の受け取り自体も請求が必要です。
これから65歳を迎える人には、誕生日の3カ月前に、老齢基礎年金の請求書に同封されて給付金請求書が郵送されます。同封の給付金請求書に必要事項を記入し、老齢基礎年金の請求書とともに提出しましょう。
すでに年金を受給中の人で、新たに年金生活者支援給付金の対象となった場合は、毎年9月1日順次年金生活者支援給付金請求書(はがき型)が郵送されます。必要事項を記入し、郵便ポストに投函しましょう。
なお、繰上げ受給中の場合は書類の様式が異なります。
一度請求書を提出すれば、支給要件を満たす限り2年目以降の手続きなしで継続して受給が可能です。継続支給の判定結果は前年の所得に基づき、毎年10月分(12月支給分)から1年間反映されます。
なお、給付額の改定に際しては「年金生活者支援給付金支給金額改定通知書」が、支給対象外となった場合は「年金生活者支援給付金不該当通知書」が郵送されます。
4. 年金生活者支援給付金の支給開始日
手続き後、実際に年金生活者支援給付金の支給が開始するのは、原則として手続きした翌月分から支給の対象となります。
請求書が届いたら、早めに認定請求の手続きをおこないましょう。
なお、新規で基礎年金の受給権を得た人は、受給権を得た日(※1,2)から3カ月以内に、年金生活者支援給付金の認定請求の手続きをおこなえば、年金の受給権を得た日に年金生活者支援給付金の認定請求の手続きをおこなったものとみなして、遡って支給されます。
受給権を得た日から3カ月を過ぎると、手続きをおこなった翌月分から支給対象となるので注意しましょう。
※1 老齢基礎年金の繰上げ受給をされている方は、65歳に到達した日
※2 老齢基礎年金の繰下げ受給をされる方は、繰り下げの申出を行った日
5. 年金だけで生活する人の方が少ない
厚生労働省「2023(令和5)年 国民生活基礎調査の概況」では、公的年金・恩給だけで100%生活できている高齢者世帯は41.7%であると示しています。
つまり約6割の高齢者世帯が、年金収入だけで生活できていないことになります。
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が100%:41.7%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が80%~100%未満:17.9%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が60~80%未満:13.9%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が40~60%未満:13.2%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が20~60%未満:9.3%
- 公的年金・恩給の総所得に占める割合が20%未満:4.0%
年金だけで生活する人の方が少ない現状を踏まえ、しっかり対策することが大切です。
6. まとめにかえて
2025年度、年金生活者支援給付金は2.7%の増額となります。
これにより、すでに受給している人は物価上昇分をカバーできると考えられます。
しかし年金自体にはマクロ経済スライド調整がかかり、実質的な目減りが続いているのが現状なのです。金額を見ても、低年金の根本的な解決にはならないかもしれません。
公的制度、給付金などは漏れなく知った上で、それでも足りない分をしっかり準備できるようにしておきましょう。





