はじめに

どの会社にも必ずといっていいほど存在する「経理」の部署。なんとなく、お金を扱うところらしい…とはわかるものの、そこで働く人たちは、具体的にどのような仕事をしているのでしょうか。この記事では、経理の仕事の内容と、そこから考えることができるキャリアアッププランについて、ご紹介いたします。

目次

1. 経理とはどんな仕事なのか?
2. 経理の会社の中での役割とは
3. 経理と会計、財務の違いとは
4. 経理の職に就くために必要なこととは
5. 未経験から経理になるためには?
6. 経理の仕事は給料がいいのか?
7. 経理職から目指すキャリアアッププランとは?

1. 経理とはどんな仕事なのか?

企業は、顧客に対して商品やサービスを販売することで収益を上げています。得られた収益は、給与や賞与として企業で働く人々に分配されるとともに、商品やサービスを販売し続けていくための元手となります。このように、企業の活動においては、常にお金が動くことになります。このお金の流れを管理することが、経理の仕事になります。

では、経理で働く人は、この「お金の流れを管理する」ために、どのような業務を行っているのでしょうか。

売上・入金確認

顧客に商品を売ると在庫が減り、顧客が商品の対価を支払うと、現金や預金などの資産が増えます。また、商品を仕入れると在庫が増え、現金や預金などの資産が減ります。経理で働く人は、商品在庫のように、モノが動く場合は、それらを価値に見合った金額に置き換え、企業に入ってくるお金と出ていくお金を、都度管理しています。

預金管理

企業の資産は預金などの金融資産として銀行に預けておくのが一般的です。また、金額が大きな取引の場合、入金や支払は口座間でのやり取りとなることが普通です。この金融資産の動きを把握し、管理することも経理で働く人の仕事となります。

小口現金管理

企業では、基本的に現金は社内に置かず、「当座預金」などの口座に預け入れ、現金が必要な時は、そこから引き出して使う、ということをしています。しかし、現金が必要な取引の中には、文房具などの小さな備品の購入や、オフィスに常備しておく飲み物などを購入するときなど、数十円、数百円といった少額の支払いも含まれます。このような少額支払いのたびに銀行からお金を引き出していたのでは、手間も時間もかかって大変面倒です。そんなときのために多くの企業では、小口現金という名目である程度の現金を社内において置き、少額の支払いの場合には、そこからお金を出すということをしています。この小口現金の管理も、経理で働く人の大切な仕事になります。

経費精算

社員が出張に出かけた際の交通費や宿泊費など、仕事に必要な経費をいったん社員が立て替えて支払うというケースがあります。この場合、企業は社員に申告をしてもらい、現金での支払い、もしくは給与と一緒に振り込みといった形で清算を行います。これを経費精算と呼びますが、こちらも経理の主な業務のひとつとなります。

2. 経理の会社の中での役割とは

一般的に経理では、帳簿とよばれるノートに、「いくら売り上げた」「いくら仕入れた」という記録をしていくことで、お金の流れを管理しています。このノートに記録をすることを簿記とよびますが、この記録した結果をもとに、年間のお金の流れを一目で把握することができる、貸借対照表や損益計算書といった年次決算書類を作成するということも、経理の仕事となります。なお、コンピューターが普及した現在では、手書きで簿記をするということは少なくなり、経理ソフトへの入力という形で行っているところが多いようです。

一般的に、経理の仕事は会社の規模によって異なります。大きな規模の会社では多くの人が経理部に所属し、預金管理を専門に行う人、経費精算を専門に行う人、小口現金管理を中心に行う人…など、分業制になっているケースが多いようです。一方、小規模な会社になると、専任担当制を取るほど取引量が多くないことから、一人の経理担当者が、日々のお金の管理から年次決算書類の作成まで、すべての業務をこなしているところも多いようです。

3. 経理と会計、財務の違いとは

経理に関連してよく耳にする言葉に、「会計」「財務」があります。これらの違いは何なのでしょうか。

会計

お金や物品の出入りに関する記録や計算をすることを指します。先ほど、帳簿への記入または経理ソフトへの入力は経理の仕事、というふうに説明しましたが、会計は経理の仕事の一部と位置づけることができます。

経理

会計の仕事に加え、年次決算書類(貸借対照表や損益計算書など)の作成、税金(法人税や消費税など)の申告といった手続きを行います。

財務

決算書類をもとに、予算の管理や資金運用、融資の調達を行う仕事です。「お金の流れを管理しているなら経理と一緒なのでは?」と思う人もいるかもしれませんが、経理は「お金がどう動いたか。」を記録する仕事であり、財務は「お金をどう動かすか。」を検討する仕事という点で違いがあります。

4. 経理の職に就くために必要なこととは

基本的に、帳簿をつけ、決算書類を作成することができれば、無資格でも経理の仕事に就くことは可能です。しかし、転職活動においては、全くの未経験かつ無資格だと、なかなか厳しいのが現実です。まずはアルバイトやパート、派遣といった立場からでも構わないので、未経験OKや経理のサポート業務等の仕事を探し、経験を積むことをおすすめします。

なお、現在の仕事を辞めてまで経験を積むのは難しい…という人は、簿記の資格を取得することを検討しましょう。基本的な帳簿つけと決算書類の作成ができる商業簿記の3級程度であれば、独学でも十分に勉強は可能です。ただ、実務につくことを考えた場合、複数の会社の連結決算や財務諸表の読み取り、工業簿記などを含む商業簿記2級以上を取得しておくのがベストでしょう。ただし2級以上は独学での取得は難しいため、ビジネススクールや通信教育などを利用して勉強するのがおすすめです。

5. 未経験から経理になるためには?

では、未経験でもOKという経理の仕事に就くには、どうしたらよいのでしょうか。

能力が未知数の新卒や第二新卒の場合、まったくの無資格、未経験であっても、ポテンシャル重視で採用されることはあります。しかし、これは、あくまで人材を育てるということを視野に入れてのことですから、即戦力としての働きを求められる中途採用となると、そのような理由での採用は、ほとんどないというのが現実です。

まずは、簿記2級以上の資格を取得し、経理知識を蓄えたほうがよいでしょう。なお、資格を取らずに、経験を積むつもりでの未経験からの経理の仕事を狙うのであれば、中小企業など、あまり複雑な経理処理を行わないところが狙い目です。職務経歴書や面接では、過去の事務経験をアピールするなど、経理は未経験でも、応用できる実務の経験をアピールすることで、採用の可能性があるかもしれません。

6. 経理の仕事は給料がいいのか?

では、経理の仕事では、どのぐらいの給料をもらえるものなのでしょうか。

経理の仕事は、同じことの繰り返しが多く、他の職種に比べて様々な経験をするということが難しい職種といえます。しかし、長年仕事をしていると、実務の処理スピードが上がり、処理の正確性が増しやすい職種ともいえます。このため、一般的に経理の仕事は、経験年数を積むほどに、着実に年収があがる傾向にあるようです。

また、経理の仕事では、決算書類を作成しますので、必然的に企業のトップとのやりとりも密になります。また、財務の部署がある企業では、そこで使われる大元の資料を用意する部署ということで、経営に食い込む業務にも、自然と関わることになります。このため、高い評価を受けやすく、早い昇給が期待できる職種であるともいえるでしょう。

7. 経理職から目指すキャリアアッププランとは?

経理の仕事に就いた場合、同じ会社内での異動となると、財務などの限られた部署になることが多いようです。このため、「さらなる収入アップを目指したいが、今いる会社では給料の額も頭打ち」というときは、どのようにキャリアプランを考えたらよいのでしょうか。以下に例を挙げてみました。

税理士

企業の依頼を受けて、税務署に申告する書類を作成し、場合によっては実際の手続きを請け負うという職業です。国家資格である税理士試験に合格することで、資格を取得することができます。

中小企業などでは、「日常のお金の流れを記録する経理担当が1人だけ、税務までは手が回らない。」というケースも珍しくありません。税理士は、こういった企業の依頼を受けて、動くことが多いといえます。経理担当として働く中で、税務も行っていたという人にはうってつけの仕事といえるかもしれません。

公認会計士

企業の依頼を受けて、監査やコンサルティングを行うという職業です。国家資格である公認会計士試験に合格することで、公認会計士と税理士両方の資格を得ることができます。試験にはいくつかの段階があり、プラス実務経験2年以上という条件も加わりますので、合格までには3年ほどの期間を要するのが通例といわれています。

より、経理の知識を活かして、経営に近い仕事をしたいという人にはうってつけの仕事といえるでしょう。

中小企業診断士

中小企業向けの経営診断や経営コンサルタントを行う仕事です。企業の社員として、自分が勤務している会社の経営診断を専任で行う「企業内診断士」と、独立して複数の企業と契約してコンサルティング業務を行う「独立診断士」のふたつのスタイルでの働き方があります。

おわりに

いかがでしたか。最近では、経理業務をアウトソーシングする会社も増えてきましたが、それでも、お金の流れを把握し、管理をすることができる人は、企業にとっては非常に貴重な人材といえます。独立も視野に入れることで、キャリアアップの可能性が、さらに広がる仕事といえるのではないでしょうか。

LIMO編集部