物価の上昇が続くなか、日々お金の相談を受けているファイナンシャルアドバイザーとしても、「生活が苦しい」と感じている方の声を多く耳にします。

これまでは「とりあえず銀行に預ける」が主流だった日本でも、最近は“預けるだけじゃ守れない”という意識が広がり、少しずつ資産運用に目を向ける人が増えてきました。

一方で、国もこうした物価高への対応として、住民税非課税世帯への給付金など、一定の支援策を講じています。

とはいえ、「うちは対象?」「どこまでが非課税世帯?」といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。

この記事では、住民税が非課税になる条件や、年金生活の高齢者世帯のケース、さらに世代別の平均貯蓄額まで、給付対象が気になる方に役立つ情報をわかりやすく整理しています。

少しでも「自分の暮らし」に置き換えて参考にしてもらえたら嬉しいです。

1.  「住民税非課税世帯」に3万円支給が進む!給付の背景をチェック

2024年12月に可決・成立した2024年度補正予算には、「低所得者世帯支援」として、特に物価高の影響を受けやすい「住民税非課税世帯」を対象とする給付金が盛り込まれています。

今回の支給額の基本は「1世帯あたり3万円」です。

この給付金は、物価高騰の影響を受けやすい低所得世帯の暮らしを支えることを目的に、3月現在、各自治体で給付作業が進んでいます。

1.1 子ども1人につき2万円の加算

給付金の支給対象世帯のうち「子育て世帯」を対象に、18歳以下の子ども1人につき2万円が加算されます。

「夫婦+対象となる子ども2人」の世帯であれば、支給額は合計7万円です。

【ご注意】給付金の申請方法や給付までのスケジュール、細かい支給要件などは市区町村により異なります。お住まいの自治体の最新情報は、ホームページや広報誌などでご確認ください。LIMOでは個別のお問い合わせへのお答えはいたしかねます。

このような支援対象の基準として、「住民税非課税世帯」と呼ばれる区分が用いられることがあります。次章では、住民税の基本をおさえたあと、この「住民税非課税世帯」となる所得要件などを整理していきます。

2. 住民税非課税ってどういうこと?制度の基本と“非課税世帯”の定義

住民税の仕組みにも触れながら、住民税非課税世帯となる要件などを整理していきましょう。

2.1 住民税の基本をおさらい

住民税は「均等割」と「所得割」の2層構造2/7

個人住民税のしくみ

出所:総務省「個人住民税」

住民税は、住んでいる都道府県や市区町村に支払う地方税で、その地域の公共サービスやインフラ整備の財源となっていいます。

個人住民税は、均等割(※1)と所得割(※2)の合計です。

(※1)所得に応じて税額が決まる部分
(※2)所得に関係なく一律課税となる部分

均等割・所得割ともに免除になることを「住民税非課税」と言います。「住民税非課税世帯」は、世帯全員が住民税非課税となる世帯を指します。

なお、「住民税の所得割のみ非課税」となる区分もあります。ただし今回の給付金の対象となるかどうかは自治体により異なるため、必ずお住まいの市区町村などの基準をご確認ください。

2.2 住民税が非課税となる<3つの要件>

住民税が非課税となる要件は、以下のいずれかに該当した場合です。

  1. 生活保護を受けている
  2. 障害者、未成年者、寡婦、ひとり親で、前年の所得が135万円以下である
  3. 前年の所得が各市町村の基準を下回る

1と2の要件は全ての市区町村で共通となっています。

一方で、3の所得要件は市区町村ごとに異なる基準があります。次章では参考に札幌市を例に挙げて、具体的な基準を見ていきましょう。

3.  「住民税非課税世帯」に該当する年収の目安は?所得ラインを具体例で解説

「住民税非課税世帯」に該当する所得や収入の収入の限度額を確認していきます。

前述のように、市区町村ごとに基準が異なりますが、ここでは札幌市の例を見てみましょう。

3.1 【札幌市の例】「住民税非課税世帯」となる《所得》の基準

札幌市で住民税非課税となる人3/7

住民税非課税世帯に該当するケースとは?

出所:札幌市「個人市民税」

  • 扶養親族を有さない方:45万円
  • 扶養親族を有する方:35万円×家族数(本人+同一生計配偶者+扶養親族数)+31万円

「収入」から各種控除や経費などを差し引いた最終的な手取り金額が「所得」です。そのため、年収で考える方がわかりやすいという人もいるかもしれません。

しかし住民税非課税の限度枠は、収入額だけではなく収入の種類や扶養親族数などの諸条件によって変動するため、判定基準がやや複雑です。

引き続き、札幌市を例にして年収の基準を解説していきます。

4. 年収以外でも変わる?住民税非課税の限度額の違い

今度は「世帯構成と収入の種類別」に住民税非課税となる基準について、札幌市の例から見てみましょう。

札幌市の住民税非課税限度額「所得金額」と「収入種類別の収入金額」4/7

【非課税限度額早見表で見る】所得金額と「収入種類別の収入金額」

出所:札幌市「個人住民税」

札幌市で「住民税が非課税となる所得基準」と、それに対応する収入金額について「扶養親族なし」と「扶養親族1名」の場合を比べてみましょう。

4.1 扶養親族なし

  • 非課税となる合計所得金額:45万円
  • 給与収入のみの場合の収入金額:100万円
  • 公的年金収入のみの場合の収入金額(65歳未満):105万円
  • 公的年金収入のみの場合の収入金額(65歳以上):155万円

4.2 扶養親族1名

  • 非課税となる合計所得金額:101万円
  • 給与収入のみの場合の収入金額:156万円
  • 公的年金収入のみの場合の収入金額(65歳未満の方):171万3334円
  • 公的年金収入のみの場合の収入金額(65歳以上の方):211万円

例えば、単身世帯(扶養親族0人)の場合、給与収入のみであれば100万円が非課税限度額ですが、65歳以上で公的年金収入のみの世帯であれば155万円まで引き上がります。

また、扶養親族が1名いる世帯の場合、給与収入のみの場合は156万円、65歳以上で公的年金収入のみの場合は211万円となり、単身世帯よりも非課税限度額が高くなります。

このように、住民税が非課税となる限度額は、世帯構成や、65歳以上であれば収入の種類(給与収入か年金収入か)によって変動します。

5.  年金だけで暮らす世帯は非課税になりやすい?

65歳以上の年金収入のみの世帯では、住民税の非課税限度額が高く設定されています。

一般的に年金生活に入ると現役時代よりも収入が減少するうえ、65歳以上の方には公的年金に対する所得控除が大きく、また遺族年金が課税対象とはなりません。

そのため、高齢者の年金生活者は「住民税非課税世帯」に該当しやすい傾向があるのです。

厚生労働省の「令和5年国民生活基礎調査」から、住民税が「課税される世帯」の割合を見てみましょう。

住民税課税世帯の年代別割合5/7

【一覧表】住民税課税世帯の年代別割合

出所:厚生労働省「令和5年国民生活基礎調査」をもとにLIMO編集部作成

  • 30歳代:88.0%
  • 40歳代:90.0%
  • 50歳代:86.4%
  • 60歳代:78.3%
  • 70歳代:64.1%
  • 80歳代:47.5%
  • 65歳以上(再掲):61.9%
  • 75歳以上(再掲):50.9%

注1:全世帯数には、非課税世帯及び課税の有無不詳の世帯が含まれます。
注2:総数には、年齢不詳の世帯が含まれます。
注3:住民税課税世帯には、住民税額不詳の世帯を含む。

住民税が課税される世帯の割合は、30~50歳代では約90%でしたが、60歳代で78.3%となります。その後65歳以上は61.9%、75歳以上は50.9%となっています。

このように、年齢が高くなるにつれて、住民税が課税される世帯の割合は低下する傾向にあります。

ただし先ほど触れたように、住民税非課税世帯の判定基準となるのは「収入(所得)」です。

そのため、年金収入は少ないものの、十分な預貯金があってそれを取り崩して生活している高齢者世帯も一定数含まれていると考えられます。

次では参考までに、各年代別の貯蓄額に関するデータを見ていきます。

6. 20代~70代の平均貯蓄はいくら?世代別データで“お金のリアル”を知る

二人以上世帯の貯蓄額について、平均と中央値、ならびに「100万円未満の世帯の割合」を見てみましょう。

金融経済教育推進機構が公表している資料をもとにします。

2人以上世帯の貯蓄額《平均・中央値・世帯差》6/7

2人以上世帯の貯蓄額《世帯差・平均・中央値》

出所:金融経済教育推進機構「家計の金融行動に関する世論調査 2024年」をもとにLIMO編集部作成

6.1 全体

  • 平均1374万円 中央値350万円
  • 貯蓄100万円未満の割合33.1%(うち貯蓄ゼロ世帯24.0%)

6.2 20歳代

  • 平均382万円 中央値84万円
  • 貯蓄100万円未満の割合46.2%(うち貯蓄ゼロ世帯22.8%)

6.3 30歳代

  • 平均677万円 中央値180万円
  • 貯蓄100万円未満の割合37.6%(うち貯蓄ゼロ世帯24.5%)

6.4 40歳代

  • 平均944万円 中央値250万円
  • 貯蓄100万円未満の割合36.9%(うち貯蓄ゼロ世帯25.7%)

6.5 50歳代

  • 平均1168万円 中央値250万円
  • 貯蓄100万円未満の割合37.9%(うち貯蓄ゼロ世帯29.2%)

6.6 60歳代

  • 平均2033万円 中央値650万円
  • 貯蓄100万円未満の割合27.0%(うち貯蓄ゼロ世帯20.5%)

6.7 70歳代

  • 平均1923万円 中央値800万円
  • 貯蓄100万円未満の割合26.2%(うち貯蓄ゼロ世帯20.8%)

貯蓄の平均値や中央値を見ると、年齢層が高くなるほど貯蓄額も増加する傾向が見られます。

しかし、どの年齢層においても、貯蓄額が100万円未満の世帯が30%~40%程度存在しています。

平均値よりも実態を捉えやすいとされる「中央値」を見ると、20歳代から60歳代までの各年齢層において、中央値は平均値の3分の1から4分の1程度です。

貯蓄額には、世帯間で大きな差があることがわかります。

7. 【参考】なぜ住民税は年金から“天引き”されるのか?特別徴収の仕組みとは

住民税は、その地域の公共サービスやインフラ整備の財源となっているとお伝えしました。この住民税、実は給与からだけでなく、多くの場合は老齢年金からも天引きされます。

ここでは、最低限知っておきたい「年金からの天引きに関すること」を説明します。

7.1 Q 多くの場合、住民税を年金から天引きで納めるのはどうして?

 →A 高齢者の方々と市区町村の両方にとって、支払いや徴収の手間を減らすための便利な仕組みです!

高齢者の方にとってのメリット

年金から自動的に天引きされるので、自分で銀行や郵便局へ支払いに行く必要がありません。また、支払いを忘れてしまう心配もありません。

年金から天引きされるもの

  • 介護保険料
  • 国民健康保険料(税)
  • 後期高齢者医療保険料
  • 住民税
  • 森林環境税

老後の年金から、各種保険料(税)が自動的に天引きされることが多い点には留意しましょう。

8. まとめ|給付の対象になりそう?収入・年金・家族構成から判断を

本記事では住民税非課税世帯に対する給付金制度や年代別の貯蓄について確認していきました。

年代別の貯蓄を確認すると、貯蓄が100万円未満の世帯の割合も少なくないため世帯間で大きな差があることが分かりました。

住民税非課税世帯には給付金制度がありますが、今後も物価高が進んでしまうと大きな負担になるため自力で資金を増やす努力が大切です。

無駄遣いをしないことももちろんですが、運用などによって増やすこともひとつでしょう。

参考資料