2018年9月26日に行われた、株式会社はてな2018年7月期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。IR資料
スピーカー:株式会社はてな 代表取締役社長 栗栖義臣 氏
ミッション
栗栖義臣氏:こんにちは、株式会社はてな代表取締役社長の栗栖でございます。本日は2018年7月期の通期の決算についてご説明させていただきます。
最初に当社のミッションでございます。当社は「知る」「つながる」「表現する」で新しい体験を提供し、人の生活を豊かにするというものを掲げております。当社は2001年に創業しまして、以来、WebサービスでUGCサービス、ユーザー・ジェネレイテッド・コンテンツという、ユーザー様がコンテンツを投稿するWebサービスを提供しまして、市場をリードしてまいりました。
このサービスを通じて、新しい体験を提供し、生活を豊かにするということをやっていこうと考えております。
個人向けサービス
当社は、個人ユーザー向けのサービスと法人向けのサービスを提供しております。まず最初に個人向けのサービスについてご説明させていただきます。
コンテンツプラットフォームサービスと呼んでおりまして、ユーザーが文章や画像などのコンテンツを発信・閲覧・拡散するプラットフォームを提供しております。とくに発信・閲覧というところではブログサービスです。「はてなブログ」というサービスを提供しておりますし、拡散するという点につきましては、「はてなブックマーク」というサービスを提供しております。
「はてなブックマーク」は、気になったWebページをユーザー様がオンライン上に保存することで、その瞬間、瞬間でネット上で盛り上がっているコンテンツをユーザー様が見ることができて、それを拡散できるサービスでございます。
法人向けサービス
続きまして、法人向けのサービスでございます。直近では法人向けのサービスを大きく拡充しております。こちらはコンテンツマーケティングサービスとテクノロジーソリューション(サービス)というものを提供しております。
コンテンツマーケティングサービスは法人のコンテンツマーケティングを支援するサービスで、法人がオウンドメディアをやっていこうという時に、オウンドメディアの構築物ですとか運用、およびコンテンツの制作といったところを手助けしています。
さらには、先ほどの「はてなブックマーク」の広告枠を使いまして、作ったコンテンツの拡散というものを手伝うサービスを提供しております。
続きましてテクノロジーソリューションサービスですが、こちら(のスライドで)は「Mackerel」と受託サービスと書いてあります。「Mackerel」につきましては、クラウド時代に適合したサーバー監視サービスと書いてありますが、近年、いろいろなサービスが多くのサーバーを使えるようになってきまして、サーバーも、クラウドのサービスが大きく広がってきております。
企業が自社で管理するサーバーの台数が増えていまして、そこを効率的に管理するといったサービスです。弊社が自社のノウハウをサービス化しまして、SaaSのかたちで提供しております。
また受託サービスですが、こちら先ほど弊社が個人ユーザー向けにUGCサービスを長年やっています、というご説明をしましたが、直近だといろいろな法人様がUGCサービスにも挑戦してみたいと、ニーズが増えてきております。
そういった中で、UGCサービスというのはなかなか……そのサービスやシステムを作って終わりではなくて、そこに来るユーザー様にしっかりと向き合って運用していくというところにノウハウがたいへん求められるというところです。弊社がそのUGCのサービス開発と運用を受託しまして、提供しているサービスでございます。
以上が当社の概要になりますが、本日は2018年期の決算をご説明させていただきまして、最後に今後の見通しといった順番でご説明いたします。
決算サマリ(1/5)
最初に2018年期の決算サマリーをご説明します。売上は20.9億円を達成しまして、対前年でプラス11パーセントと増加しております。
決算サマリ(2/5)
一方の経常利益ですが、こちらは3.35億円を達成しましたが、対前年で比べますと5パーセントの微減となっております。
決算サマリ(3/5)
純利益につきましては、2.34億円というところで対前年でプラス1パーセント伸びているというかたちでございます。
決算サマリ(4/5)
業績の達成率で見ますと、2018年で5月に出しました予想に対しては、それぞれ達成率が101パーセントと121パーセントで、対計画ではしっかりと達成してるかたちでした。
決算サマリ(5/5)
利益率でございます。利益率は、2018年の期は16パーセント。その前の年の18.6パーセントには及びませんでしたが、その前の15.1パーセントという水準からは上がってきておりまして、底固い数字を達成できたかなと思っております。ここからしっかりと数字を上にあげていきたいと考えております。
CPFサービス(1/3)
続いて、各サービスを順に説明していこうと思います。まずはコンテンツプラットフォームサービスです。個人ユーザー向けでございますが、利用する登録ユーザー数が対前年でプラス6パーセントというところで、713万人に到達しました。
一方で当社のサービスへのアクセス数、ユニークブラウザ数というものは2.25億UBというところで、高止まりを示しております。
CPFサービス(2/3)
こちらは「人力検索はてな」など、当社が2001年の創業近くから長く提供しており「レガシーサービス」と呼んでおりますが、いくつか(他社でも)サービスがありまして、こちらのレガシー系のサービスへの訪問者数が徐々に減ってきているというものがございます。
理由としましては、検索エンジン経由の流入数が変動しており、こちらがイメージ図になっておりますが、半期ごとに見ても、段階的に減ってきてるというかたちでございます。
CPFサービス(3/3)
こちらのレガシー系のサービスも、弊社としては広告を貼っており、広告収入というものは得ているのですが、訪問数は変動している影響もございまして、コンテンツプラットフォーム単体で見ますと売上は対前年で微減、0.8パーセント減少しているかたちでございます。
コンテンツマーケティングサービス(1/4)
続いてコンテンツマーケティングサービスでございます。コンテンツマーケティングサービスは、「はてなブログMedia」というオウンドメディアの支援サービスです。企業様がオウンドメディアを提供したいというときに、弊社の「はてなブログ」のサービス・システムをうまく利用して、簡単にメディアを開設できるという、「はてなブログMedia」の運用数が、目標に対しまして1件未達ではあったのですが、新規開設の数が堅調に増加しており、2018年の期でプラス17件でした。
一方で解約も9件ございまして、運用数の増分では8件というかたちになりました。こちらの解約数も昨年度と同程度で推移しており、解約理由もいろいろと検証しているのですが、メディアごとに事情がございまして、当社としては市況や商品力は問題ないかなと考えております。
コンテンツマーケティングサービス(2/4)
解約理由の中身を見まして、当社として手が出る部分はしっかりと手を打っていき、引き続き運用数を伸ばしていこうと考えております。
コンテンツマーケティングサービス(3/4)
2018年の期の「はてなブログMedia」の新規案件をいくつかご紹介させていただきますと、1つがLINE株式会社様の「LINE RECORDS」というサイトにご利用いただいております。こちらはアーティストやオーディションなどの情報を掲載するページとして、当社のサービスを利用いただいております。
また株式会社DMM.com様の「DMM inside」というサイト。こちらはDMM.com様の社員インタビュー、プロジェクト紹介、技術イベントレポートなどを紹介するサイトとしてご利用いただいております。さらに、株式会社パソナ様の「GeekOut」では、エンジニア向けの情報サイトのCMSとして当社のサービスを利用いただいております。こうしたかたちで、大手のお客様の利用を広げていけた期かなと考えております。
コンテンツマーケティングサービス(4/4)
コンテンツマーケティングサービスの売上につきましては、7.33億円ということで対前年でプラス16パーセント、売上を増加させることができました。
テクノロジーソリューションサービス(1/3)
続いてテクノロジーソリューションサービスの説明をさせていただきます。テクノロジーソリューションサービスですが、サーバー監視サービスの「Mackerel」の顧客数が順調に増加してきております。
こちらの実数は競争上の理由で出せないため、指数というかたちで出させていただいております。2015年の末時点の顧客の指数を100とした場合の2018年末における累積顧客指数が2,880で、およそ30倍弱まで成長してきております。こちらも目標の2,850をしっかり達成しましたし、引き続き引き合いが多く、ご利用が広がっています。
テクノロジーソリューションサービス(2/3)
テクノロジーソリューションサービス、次はマンガビューワーです。ブラウザで漫画を読む時のビューワーを提供しておりますが、「GigaViewer」という名前で、こちらの搭載件数も増えてきております。引き続き搭載需要を拡大していこうということで、引き合いもたくさんございまして、順調に伸びてきております。
2018年の期で言いますと、講談社様です。『ヤングマガジン』『モーニング』などの合同誌のコミックデイズというウェブサイトに、当社のサービスを利用いただくことができました。こちら、もともとは集英社様のジャンプのサイトから始まったサービスでございまして、ここで今期、講談社様というまた大きな会社様とタッグを組めたというのは大きなトピックだったかなと思っております。
テクノロジーソリューションサービス(3/3)
こちらのテクノロジーソリューションサービスも(売上)7.85億円ということで、対前年でプラス15パーセントと大きく増加させることができております。
費用の状況(1/3)
続きまして、費用の状況でございます。費用全体としましては対前年でプラス15パーセントと増加しております。当社は人件費とデータセンターの利用料の2点が大きな割合を占めており、それぞれ人件費が対前年でプラス6パーセント、データセンター利用料がプラス40パーセントというかたちで増加しております。
費用の状況(2/3):人件費
人件費のところですが、通期で予定を上回る24名の採用に成功いたしました。一方、退職等もございまして、人件費の増加ペースは若干緩やかだったかなと考えております。期末時点で127名となり、対前年度の期末と比較しますとプラス10名増員になりました。
費用の状況(3/3):データセンター利用料
データセンター利用料でございますが、ITインフラの投資額は1.49億円。予定額の84パーセントという着地になりました。こちらはコスト削減の施策も功を奏しまして、想定を0.56億円下回ったかたちとなっております。
19年7月期業績予想
今後の見通しでございます。2019年の7月期の業績予想ですが、増収増益を予定しております。売上につきましては25.2億円というかたちで、増収率プラス21パーセントを目指しております。また利益の方は3.53億円というかたちで、増益率はプラス6パーセントを目指しております。
サービス毎売上想定
サービスごとの売上の中身をグラフにしております。とくにテクノロジーソリューションという分野で、2019年の期は売上増収を牽引するかたちを考えております。その中でも、サーバー監視サービスの「Mackerel」が顧客数をさらに積み上げてきまして、AWS(アマゾン ウェブ サービス)やその他クラウドサービスの連携を強化することで、顧客数の増加を狙っていこうと考えております。
また受託サービスの方も、先ほどご説明しました「GigaViewer」というマンガビューワーの導入件数を増やしていくというところ。また新規顧客の獲得に加えまして、既存で利用いただいているお客様……マンガビューワー「GigaViewer」をご利用いただいておりますお客様への深耕というところで、新しいビジネスであったり、その会社様の中での利用事例というものを深く掘っていこうと考えております。
19年7月期業績予想(費用予想)
費用面の予想でございますが、人件費とデータセンター利用料で増加すると予想しております。データセンター利用料はプラス12パーセント、人件費につきましてはプラス24パーセントの増加率と予想しております。
今後の方針
今後の方針ですが、3点ございます。1つがB2Bのストック型ビジネスを深掘っていくという点。2点目が引き続き技術基盤への投資を拡大していくという点。3点目が新規事業への布石をいろいろ試していく点でございます。
1. B2Bストック型ビジネスを深掘り(1/4)
まずはB2Bのストック型ビジネスを深掘っていくというところ。まず、サーバー監視サービスの「Mackerel」につきましては、引き続き引き合いが多いですので、ダイレクトセールスの方を継続していこうと考えております。
先ほどご説明しました顧客の指数につきましては、この2019年の目標「4,270」というものを目指して引き続きセールスを行っていこうと考えております。こちらの「Mackerel」のサービスにつきましては、新規のクライアントの獲得に加えまして、当社のサービスを利用いただいているお客様自体のビジネスが伸びてきますと、お客様の中でのサーバーの利用台数も増えますので、弊社の単純な積み上げだけでなく、よりドライブがかかっていくかたちと考えておりますので、引き続き伸ばしていきたいと考えております。
1. B2Bストック型ビジネスを深掘り(2/4)
また、このダイレクトセールスを後押しするといいますか、この「Mackerel」自体はAWS等のクラウドサービスとの連携を強化することで、よりセールスにドライブをかけていくということを考えております。DevOpsコンピテンシー、開発・運用の技術領域でAWS様からお墨付きをいただいていますので、AWS様をご利用いただいている企業様に多く使っていただこうと考えております。
また、AWS様の最上位コンサルティングパートナーのクラスメソッド様と「Mackerel」の販売店契約を締結しましたので、クラスメソッド社が持つ高いAWS監視運用技術と、当社の「Mackerel」というツールをうまく2つ組み合わせて、お客様に効率的な開発・運用プロセスを提供していこうと考えております。
1. B2Bストック型ビジネスを深掘り(3/4)
マンガビューワー「GigaViewer」につきましても、導入事例はさらに拡大していくことを考えています。2019年の状況について、月刊ヒーローズというヒーローものの漫画を集めたサイトがございますが、そちらにもうすでに導入予定が決まっております。導入事例が広がれば広がるほど、引き続き引き合いが多くなり、順番に対応していこうと考えております。こちらも開発・運用料、またレベシェアの売上を拡大していくという方針でございます。
1. B2Bストック型ビジネスを深掘り(4/4)
最後にコンテンツマーケティングサービスの「はてなブログMedia」の運用数も引き続き伸ばしていこうと考えておりまして、2019年の期末では56件の運用数を目標として考えております。
2. 技術基盤への投資を拡大(1/2)
続きまして、技術基盤への投資の拡大という点でございます。ITインフラ投資を行っておりますというご説明を、この場でも何度かさせていただいておりますが、いよいよ2年目というところにさしかかっております。
「はてなブックマーク」と長年継続したコンテンツプラットフォーム系のIT基盤を刷新するということを行っております。古いデータセンターから新しいデータセンターへの移管や、システム自体を新しくしていくときに、データセンターの利用料が二重化してしまうところで、いまは費用が大きくかかっております。
しかし、この投資をしっかり終えると古いデータセンター部分が使えなくなっていきますので、この先ではその部分のコストがなくなって、よりスマートなかたちで運用ができると考えております。今期は、この投資の部分をしっかりやりきり、その先に向けてコスト面をなるべく抑えられるような対応をしていこうと考えております。
2. 技術基盤への投資を拡大(2/2)
開発投資によってサービスの統廃合を果たすと(スライドに)書いております。先日、当社がユーザー様向けに発表しましたが、2003年から「はてなダイアリー」というサービスを提供してます。日本でもわりと最初の段階からやっているブログサービスの廃止を発表させていただきました。
ユーザー様には、2012年から提供している「はてなブログ」に移ってくださいというご案内をしました。古いサービスと比較しますと、新しいサービスの方がより効率的に運用もできますし、開発と運用面でもしっかり集中と選択ができます。ユーザー様には一部ご迷惑をおかけするのですが、ご理解いただき、こちらの古いサービスを廃止して、新しい方に移行していくということをしっかりと行います。
2019年の春に統合予定というところですが、サービスも古く、弊社のいろんな部分に関わるサービスのため、単純にサービスを閉じてユーザーを連れて行けばいいというものではないです。しっかりと計画を立てて、ユーザー様にもなるべくご負担のないかたちで、サービスの統廃合を果たしていければと考えております。
3.新規事業への布石
最後に、新規事業の布石というところです。当社は「はてなブックマーク」「はてなブログ」等でユーザーコンテンツのような情報の基盤を持っております。こちらの情報をよりうまく活用して、新しい事業連携等々をできないかと模索しております。
こちら(のスライド)に載せておりますのは、2018年8月にリリースをしておりますが、unibo社が提供している(スライドのような)ロボット型のスマートスピーカーに、弊社のサービスで「はてなブックマーク」の情報を一部提供しまして、ニュースがありませんかと聞くと答えてくれるというサービスで、私どもが提供しております。
こういったかたちで新しいデバイス……とくにスマートスピーカーなど、今後もいろんなデバイスが出てくると思います。そういったデバイスに当社のサービスがうまく適用できないかというところを探って、利用が広がりそうなところに集中してサービスを提供していきたいと考えております。
短中期成長イメージ
短中期の成長イメージでございます。引き続き、この3つの領域……コンテンツプラットフォーム、コンテンツマーケティング、テクノロジーソリューションという領域で、このシナジー効果を最大限に活用しつつ、各サービスの売上を伸ばしていくことを計画しております。
売上高ベースでは、年間で20パーセントの成長をしっかり果たしていきたいと考えております。このグラフを見ていただきますと、コンテンツマーケティングサービスにつきましては、強みである「はてなブログMedia」の拡販をしっかりと行いまして、強いニーズに対応していこうと考えております。
コンテンツプラットフォームサービスは、今期は微減ではあったのですが、機能開発、もしくは他社との連携等々を行いまして、会員数を引き続き伸ばします。会員数が増えますと、投稿されるコンテンツも増えますし、閲覧者数も増え、いい循環ができますので、その循環をしっかりと作っていこうと考えております。
また(スライドに)課金サービスと書いておりますが、「はてなブログPro」というブログを一部の個人ユーザーの方に課金いただいて、より便利に使っていただくサービスを提供しております。こちらのユーザー数は基本的には右肩上がりで成長している部分でございますので、この部分をよりドライブをかけまして、課金サービスというものの増大にも努めていこうと考えております。
一番下のテクノロジーソリューションにつきましては、個別の受託・開発案件がありますので、引き続き発掘していくと同時に、「Mackerel」というものが非常に引き合いが強いですので、ここの領域をしっかりと伸ばしていき、当社のユーザー顧客数を伸ばしていこうと考えております。
これら3つのサービスがそれぞれ成長することで、当社の年率20パーセントという成長を達成できるのではないかと考えております。
ご説明としては以上になります。ありがとうございました。