定年後のことを考えたことがありますか? たとえば、30歳であれば65歳が定年だとしてもあと35年あるので、そこまで思いを巡らす人は少ないかもしれません。しかし、老後資金のことを考えてみると、35年というのはそう余裕のある年数ではないのです。今回は、夫も妻も30歳、世帯年収500万円の家庭が実際に老後資金を貯めるために始めたことをご紹介します。思うようにお金が貯められない人は、ぜひ参考にしてくださいね。

とりあえずiDeCoを始めてみたものの…

まず、夫婦の収入の内訳を簡単に紹介しておきたいと思います。奥さんは結婚後すぐに子どもを産む予定で退職、現在は旦那さんの収入だけで暮らしています。旦那さんは業界の中では中堅のメーカーで営業の仕事をしており、帰宅はいつも22時過ぎ。月収は約30万円、手取りにすると残業の量にもよりますが、25~27万円というところでした。

結婚を機に引っ越したマンションは、都内で駅まで徒歩13分、家賃11万円の1DK。少し手狭ですが、子どもができるまではお金を貯めようという方針は夫婦2人の間で固まっており、今は不満なく過ごしているそう。

しかし、まだ肝心の貯金がうまくできていないといいます。何かやらなきゃ、という漠然とした不安がよぎり、夫婦2人で「老後資金、どうしよう?」という話になったのは、ちょうど法改正で個人型確定拠出年金のiDeCo(イデコ)が知られてきた頃でした。

老後資金を貯めるのに節税効果が見込めることから、「とりあえず」という気持ちでiDeCoを始めたという2人。しかし、もともと奥さんは投資反対派。資金を投資信託へ振り向けることには積極的ではありません。老後資金のほかにも、子どもの教育資金やマイホームの頭金など、他の目的でも貯めなければならないこともあり、iDeCoへの毎月の拠出金額は自然と消極的な金額になっていました。

確かにiDeCoは掛金が全額所得控除になるという節税メリットがあります。ただ、それだけでなく、iDeCoでは運用益にも税金がかからないので、せっかくですからしっかり運用益が期待できるような運用に変えてもよさそうです。それが不安なら、元本確保型の商品と価格変動型の商品をバランスよく組み合わせることがポイントです。

積立預金で「守るお金」を地道に確保

同時に、60歳まで引き出せないiDeCoだけでは今後の貯金は不十分であると感じ、マイホームの頭金や子どもの教育資金のために自由に引き出せる銀行預金を始めようと2人は考えたそうです。これまで貯金がうまくできなかった理由の一つとして、「口座にあるお金を全部使ってしまう」ということがありました。

家計を任されているのは奥さんでしたが、働いていないという後ろめたさもあり、残高が少なくなっていても夫の「飲み会代」や「ゴルフ代」を出してしまっていたそう。そうした状況を変えるため、もっとシステマティックにお金を貯めようと「自動積立預金」をスタート。最初は、とりあえず毎月1万円から。ボーナスは壊れかけの大型家電を買い替えた以外、全額預金に回しました。

毎月1万円という金額を見て、「もっと増やしたい」という気持ちが沸いたという旦那さん。奥さんも、無理強いはできないけれど、毎月1万円ずつしかふえない残高に焦りを感じていたといいます。そこで、家計からもっと多くの金額を捻出することはできないか2人で考えてみたそうです。

家計の見直しで月の収支が+2万円