3. 年金額は物価上昇率を下回り、実質3年連続目減り
年金額は、物価変動率や名目手取り賃金変動率に応じて、毎年度改定を行う仕組みとなっています。
物価変動率が名目手取り賃金変動率を上回る場合は、支え手である現役世代の著しい負担を避けるため、名目手取り賃金変動率を用いて改定します。
令和7年度の年金額は、名目手取り賃金変動率(2.3%)を用いて改定します。
この名目手取り賃金変動率に、マクロ経済スライドの調整が加えられます。マクロ経済スライドとは、公的年金被保険者の変動と平均余命の伸びに基づいてスライド調整率を設定します。その分を賃金と物価の変動がプラスとなる場合に改定率から控除する仕組みです。
これは、公的年金支給額を減少させる一方で、将来世代の年金の給付水準を確保することになります。つまり、長い目で見て実質的な年金受給額を公平にするために行われるのです。
2025年のマクロ経済スライドによる調整は▲0.4%です。
令和7年度の年金額の改定率は、2.3%-0.4%=1.9%となります。
つまり、物価は2.7%上昇しているのに、年金額は1.9%の増に留まっており、物価上昇率に追いついていないわけです。実質的には、年金額は目減りしているということになります。
昨今の物価高がいつまで続くのかは分かりません。今後の生活が不安な方は、年金収入だけを頼りにするのではなく、他の方法で収入を増やしたり、現在の生活の支出を見直すといった工夫をして、対策することが大切です。
4. 老後生活の変化を支えてくれる公的年金以外の備えを
今回確認してきた通り、物価高でも公的年金は追い付いていません。
公的年金は老後の生活費の軸となるので重要ですが、物価高のように世界情勢による変化があった際に対応するには年金だけでなく、それ以外の備えも大切です。
たとえば私的年金。国民年金のみの方は、国民年金基金に加入するのも一つです。また、iDeCoは利益に対する税金が非課税になるなどメリットもあるので、調べてみるといいでしょう。
ほかにも貯蓄をどのように備えていくかは大切です。
預貯金だけでなく、資産運用を取り入れると、リスクはあるものの老後も資産を増やしてくれる可能性もあります。
いつまで働けるかは誰しもわかりませんから、早くから情報収取を重ね、「お金に働いてもらう」資産運用をするのも一つでしょう。
老後どのような社会の変化があるかわかりませんから、さまざまな選択肢で備える方法を考えましょう。
参考資料
宮野 茉莉子