少子高齢化による労働力不足によって日本経済の黄金時代が始まった、と久留米大学商学部の塚崎公義教授は主張します。
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日本経済は、黄金時代に突入しました。もちろん、バブル期のようなキラキラ輝く時代が来るとは思っていませんが、これまでの諸問題が嘘のように解決して新しい時代を迎える、という意味では、チョッと大げさですが「黄金時代」と呼べるような気がします。
バブル崩壊後の長期低迷期、諸問題の根源は失業だった
バブル崩壊後の長期低迷期、日本経済は失業問題に悩みました。人々が懸命に働いて多くのモノを作り、倹約してモノを買わなかったからです。ちなみに本稿では財およびサービスのことを「モノ」と記します。
懸命に働いて倹約することは、良いことなのですが、皆が一斉に良いことをすると、皆が酷い目に遭う場合があります。劇場火災の時に、皆が出口に向かって走る場合などです。これを「合成の誤謬」と呼びます。
皆が勤勉に働くと、多くのモノが作られます。皆が倹約をすると、少ししかモノが売れないので、売れ残りが生じます。そこで企業は生産を絞り、雇用を絞ります。失業が発生するわけです。
政府は、失業対策の公共投資をしますから、財政赤字が膨らみます。増税をしたくても、「そんなことをしたら失業が増えてしまう」と言われて増税ができません。
企業は「いつでも労働者が雇える」と考えるので労働者を囲い込む必要を感じなくなり、正社員を減らして非正規労働者を増やします。そうなると、正社員になりたくてもなれない人は「ワーキングプア」になります。
ブラック企業も増えます。学生は「失業者やワーキングプアになるよりブラック企業の方がマシ」と考えて入社しますし、辞めたくても「失業者やワーキングプアになるよりブラック企業の方がマシ」と考えて我慢するからです。
企業は、正社員を非正規労働者に置き換えたことで人件費が浮きますから、それで値下げ競争をします。ライバルから顧客を奪おうとするわけです。しかし、ライバルも同じことをしますから、結局物価が下がるだけで売上数量も利益も増えません。デフレです。
企業は、安い労働力が使えるので、省力化投資を怠ります。したがって、日本経済全体が効率化せず、労働生産性が向上しません。
以上のように、日本経済が抱えている多くの問題は、ほとんどが失業問題に起因しているわけです。