高齢化と長寿化が進む日本では、現役を引退した後のセカンドライフの過ごし方も重要視されるようになりました。
2023年8月に実施された国民生活に関する世論調査では、悩みや不安の内容として「老後の生活設計」や「今後の収入や資産の見通し」に関する項目で、前年と比較して該当者が増加しており、将来への経済的不安を感じている人が多いことが明らかになっています。
充実した老後を過ごすための経済的な不安を持っている人が多いことが窺えます。では、実際の現在のシニア世代の経済状況はどのようになっているのでしょうか。
今回は、60歳代の二人世帯の平均貯蓄額と平均支出について解説します。ぜひ、ご自身の老後生活設計の参考にしてください。
1. 60歳代・二人以上世帯の貯蓄額
まずは、60歳代の二人以上世帯の平均貯蓄額をみていきます。
1.1 家計調査による年齢別平均貯蓄額と資産内訳
2023年時点で、世帯主が60歳代の二人世帯における、貯蓄種類別の貯蓄平均は下記の通りとなっています。
【世帯主が60歳代の二人世帯貯蓄平均額】
- 貯蓄合計:2432万円
定期性預金:700万円
通貨性預貯金:833万円
生命保険など:465万円
有価証券:410万円
その他(金融機関外):25万円
通貨性預金(普通預金や現金)の保有割合は全体の3割以下となっており、生命保険や定期性預金など、貯蓄性のある金融資産で資産を合計すると流動的な通貨性預金よりも割合が高くなります。
一方で、負債の内訳は下記の通りです。
【世帯主が60歳代の二人世帯負債平均額】
- 負債合計:201万円
住宅・土地のための負債:163万円
住宅・土地以外の負債:24万円
月賦・年賦:14万円
負債額を考慮すると、およそ2231万円が純粋な資産額となります。
2. シニア世代の平均的な年金受給額はいくら?
次に、シニア世代の平均的な年金受給額を確認してみましょう。
厚生労働省が公表する「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、2023年時点の老齢年金(基礎年金と厚生年金の合計)平均額は、男性で16万6606円、女性で10万7200円です。
一方で、受給金額1万円ごとの人数を見たときに、最も受給者人数が多い金額層は、男性は17万台、女性は9万円台です。男性は平均値よりもやや高く、女性はやや低いことがわかります。
年金額を確認する際の注意点としては、年金受給金額は額面の金額であるため、実際の手取額は原則として支給金額から所得税や健康保険料などが差し引かれた額となります。
ただし、年金額はそれぞれの金額層で広く分布されており、人により大きく異なります。
次に、年金額の決定方法について簡単に解説していきます。
3. 年金額の決定方法
老後に支給される公的年金は、国民年金の納付期間を基礎とした「老齢基礎年金」と、厚生年金の加入期間や加入中の報酬を基礎とした「老齢厚生年金」の2種類です。
3.1 老齢基礎年金(国民年金)の金額はどうやって決まる?
老齢基礎年金(国民年金)は、国民年金保険料の納付済月数や免除期間を元に算定されます。
国民年金は20歳から60歳の日本居住者は原則として納付の義務があり、被保険者の保険料は一律です。そのため、上限期間である40年間で未納付がない場合は受給金額も全員一律となります。(2024年は年間81万6000円)
未納付期間や免除期間がある場合、その月数によって満額から差し引かれていきます。
また、会社員として厚生年金に加入をしていた期間は、国民年金保険料の支払いは免除されているため、厚生年金保険料が給与から天引きされている場合には、国民年金保険料の納付期間とみなされます。
3.2 老齢厚生年金の金額はどうやって決まる?
老齢厚生年金は、厚生年金の加入期間と加入中の報酬額によって計算されます。
具体的には、被保険者期間全体の月額報酬と賞与額から、平均の月額報酬を算定した上で、一定の率と加入月数を乗じた金額となります。
計算の基礎となる厚生年金の加入期間と加入中の報酬によって、受給できる年金額も大きく異なります。
また、現役時代に厚生年金に加入をしていない、個人事業主やフリーランスの場合は厚生年金保険の加入期間がないため、老齢厚生年金を受け取ることができません。
年金額の決定方法からわかるように、年金額は現役時代の報酬額や納付状況、配偶者の働き方などによって変わってきます。
そのため、自身の老後設計のために収支を試算する際は、日本年金機構のホームページによる試算ツールや、ねんきん定期便でおおよその年金受給額を算出してみることをお勧めします。
4. まとめにかえて
60歳代世帯は、一般的に現役を引退して年金での生活に移っていく人が多い世代です。
年金生活になるとその後の収入増加を見込むのは難しいため、月々の赤字がある場合はそれまでの貯蓄で賄っていく必要があります。
そのため、60歳代までにその後の月々の収支の計算をして、どの程度の貯蓄額が必要であるかを計画しておくことは、老後生活を充実して送るために非常に重要です。
貯蓄額や月の収支は世帯によって大きく異なるため、今回の値はあくまでも参考値として、ご自身の世帯の試算をしっかり行っていきましょう。
参考資料
- 内閣府「国民生活に関する世論調査(令和6年8月調査)」
- 総務省統計局「家計簿からみたファミリーライフ 第5章 家計資産」
- 厚生労働省「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 日本年金機構「老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額」
- 日本年金機構「報酬比例部分」
斎藤 彩菜