舅や姑のことが苦手、反りが合わない…という方は多いもの。でも、意外にも「義理の両親よりも実の両親の方がキライです」という方も結構いるのです。「愛情込めて育ててくれた恩はある、感謝はしてる。でも、どうしても両親のことが好きになれない…」という人たちの心の葛藤や原因、そして、どうしてそんなに親のことを嫌うのか…。2人の女性に話を聞いてみました。
こんな言い方悪いけど…
「誤解を招く表現かもしれませんが、親が虐待しているとか、モンスターペアレンツだった、だとよかったのに…と思うことがあります」
口を開くなりショッキングなセリフを口にしたのは、M美さん(42歳)。県外に、60代後半のご両親がいます。M美さんはこう話を続けてくれました。
「だって、そうすれば『私は親のことが大嫌いです』と堂々と言えるでしょ? 私は両親に何不自由なく育ててもらいました。大学まで行かせてもらって、私がやることには『お前が望むなら』と全て賛成してもらえました。我が子のことも、とても可愛がってくれます。そのことに対しては本当に、感謝してもしきれない思いです。親孝行もしなければ、と思ってます。でも…合わないんです」
M美さんが両親と合わない、その原因は?
「うちの両親は、とにかくデリカシーがない。小6で初めて初潮が来た時、父に『この子、生理がきたんよ!』という母、ところかまわず平気でオナラをする父…。実家も決してキレイだとは言えません。どちらかというと汚部屋。トイレには常におさぼりリングが発生し、お風呂はカビだらけ…。
小さい頃はそれが普通だと思っていましたが、大きくなって友達の家に行く機会が増えるにつれ、我が家の汚さが恥ずかしくて。でも、他の人に『親が片づけられない人だから、キライ』なんて言ったら、『は?』って言われそうで。
実家に帰省したら、まず私がすることは大掃除。必死に掃除する私の横で『そんな神経質にならんでも…』とヘラヘラしている両親にイライラしてしまい、デリカシーのなさばかり目についてしまいます。でも、孫には優しいし、帰ったら『友達と会っておいで』と私の自由時間をくれる。優しい親。わかってはいるんですが…」
遅れて来た反抗期
続いてご紹介するのは、S子さん(32歳)。彼女はこう話してくれました。「今、ようやく私に反抗期が来たのかもしれません」
彼女のエピソードをご紹介しましょう。
「小さい頃から私は何でも母の言うとおりにしてきました。だからと言って、母が特別厳しかったとか、高圧的だったわけではありません。さらっと『S子は○○した方がいいんだよ』と言ってくるんです。で、実際その通りにしたら物事はスムーズに。
たとえば高校の時、私は看護の道に進みたかった。でも母は『S子の性格からして、看護の仕事はキツイと思うから、大学に進んで、大学に通いながらやりたいことを探せばいいんじゃない?』と。実際その通りにして、一般職ながらやりがいのある仕事ができています。社会人になるにあたり、ひとり暮らしをしたい、と言っても『ひとり暮らしなんて貯蓄できないから、うちから通えることだし、やめといたら?』と。きっと母は、私が反対するなんて夢にも思っていなかったんだと思います。
でも、ふと思い返したら『母は私を使って自分の人生をやり直したがっているのではないかな…』と感じ始めて。今まで母の言うことは全て正しいと思っていたのに、一度そう感じると、母の言うことが全てしゃくに触るようになったんです。不思議ですね。今月、私は家を出てひとり暮らしを始めます。やっぱり母は、『仕事から帰ったら疲れて家事なんてできないんだし、やめといたら?』とか『実家の方が仕事に全力を注げるんじゃない?』と言ってきます。
わずらわしいし、なんで私の気持ちをわかってくれないんだろう、と思ってしまいます。正直、いなくなってくれたら、と思うことも。一方で、『私のことを思って話してくれているのだから』と思うと、完全には拒絶できない。きっと一生、母に対して相反する気持ちを抱いて、モヤモヤしながら生きていくんでしょうね」
割り切って付き合えたらいいのだけれど…
今回の2人の女性の共通点は「親のことは嫌いだ」と自覚はしているものの、そんな自分に罪悪感を覚えていること。「親に感謝している」という気持ちと「親のことが嫌いだ」という気持ちは全く別物だと割り切るのはなかなか難しいのかもしれません。
産み育ててくれた親とはいえひとりの人間、聖人君子ではありません。長所もあれば短所もあるものです。「親と合わない」と感じていることこそ、親を絶対的な存在ではなく、ひとりの人間として見ている証拠。「真の親離れができた証拠」と考えられれば楽になれるのかもしれません。
大中 千景