世界最大の有機EL用燐光発光材料メーカー、ユニバーサルディスプレイコーポレーション(UDC、米ニュージャージー州)が発表した2018年4~6月期業績は、売上高が前年同期比45%減の5615万ドル、営業利益が同82%減の1091万ドルだった。ハイエンドスマートフォン向け有機ELディスプレーの生産低迷によって、前年同期比では大幅な減収となったものの、18年1~3月期実績との比較では売上高が29%の増加に転じた。主要顧客であるサムスンディスプレー(SDC)の工場稼働率が4月を底にして上昇してきたことを受けたものとみられる。
材料の売上高は1~3月期比で46%増
18年4~6月期の売上高5615万ドルのうち、材料の売上高は3683万ドル、ロイヤルティー&ライセンス収入は1552万ドル、子会社のアデシスが主に手がける契約リサーチサービスが379万ドルだった。18年1~3月期比で材料の売上高は46%増加した。材料売上高3683万ドルのうち、黄緑色を含む緑色発光材料の売上高は2570万ドル、赤色発光材料の売上高は1090万ドルだった。
ロイヤルティー&ライセンス収入では、17年まで4~6月期と10~12月期に最大顧客であるSDCからの収入を計上していた(17年4~6月期の実績は4500万ドル)が、17年末にSDCとの契約を更新し、販売量などに応じて四半期ごとに計上するかたちになった。なお、18年からはSDCからのライセンス収入を公表しなくなった。
18年4~6月期末時点の在庫は5604万ドルと、18年1~3月期末の5364万ドルから若干増加した。17年末時点では3627万ドルだった。1~3月期の決算発表時には「1~3月期がボトムで、4~6月期は改善する」と説明していたが、改善はしなかった。
ちなみに、新会計基準ASC606の影響を除いた場合、18年4~6月期の売上高は7360万ドル(17年4~6月期の売上高実績は1億251万ドル)、営業利益は2840万ドル、純利益は2510万ドルになるという。
こうした業績を受けて、UDCの株価は8月17日時点で115ドル台まで回復した。株価は1月18日につけた205.60ドルをピークに下がり続け、7月末には80ドル台まで下がったが、その後ゆるやかに回復しつつある。
青色燐光材料の商用化時期はまだ明言せず
研究開発面では、ガスを用いたインクジェットで低分子材料を成膜するOVJP(Organic Vapor Jet Printing)技術の開発をさらに加速するため、9月に新たな試験用プロトタイプ装置を導入する予定だ。
また、日本の有機EL発光材料ベンチャーである㈱Kyuluxが先ごろ独自技術「ハイパーフルオレッセンス」で世界最高効率の青色発光材料の開発を発表したことを踏まえたアナリストからの質問に対しては、「青色燐光発光材料の開発は進展しており、効率と寿命の改善を優先している」と述べるにとどめ、商用化の時期については明言しなかった。
2019年に大幅な収益拡大を見込む
UDCは、有機ELの生産能力が19年に17年比で50%増加するとみている。この大部分が中国で19年に立ち上がり、収益拡大につながると予測している。SDCは韓国での増産投資を延期・凍結しているが、中国で韓国LGディスプレー(LGD)やBOE、天馬微電子らが新工場・新ラインの立ち上げを進めていることが背景にある。
LGDは、先ごろ中期的な設備投資総額の見直しを発表したものの、中国・広州に建設する8.5世代(8.5G)テレビ用有機ELパネル工場の建設は予定どおり進める方針を明らかにしている。広州新工場は19年下期に稼働する予定で、これによりLGDはテレビ用有機ELパネルの販売数量を17年の170万台から19年に400万台、20年に700万台、21年には1000万台まで拡大する考え。
BOEは、すでに成都市に6G有機EL工場を稼働しているが、18年後半に発売予定のファーウェイ製スマートフォン「Mate 20 Pro」向けに受注を獲得したといわれており、これを機に、2番目の6G工場である綿陽工場の立ち上げを当初見通しより早める可能性があるという。また、天馬微電子は6月に湖北省武漢市に建設した6G有機EL工場の量産開始式典を開催し、これに続く第2期ラインの建設に新たに145億元(約2400億円)を投資することも明らかにした。
UDCは、18年の通年売上高見通しを2.8億~3.1億ドルに据え置いているが、ASC606の影響を除けば、売上高は10~15%高くなると述べている。17年の実績は前基準のASC605ベースで3.36億ドルだったが、18年の見通しをASC605ベースで考えれば最大3.5億ドルに達することになる。
電子デバイス産業新聞 編集長 津村 明宏