2018年8月20日に行われた、株式会社やまみ2018年6月期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。

スピーカー:株式会社やまみ 代表取締役社長 山名清 氏

はじめに-「平成30年7月豪雨」の影響について

山名清氏(以下、山名):本日はありがとうございます。

まずは(2018年)7月の豪雨についてですが、一部工場(が被害を受けました)。20年ほど前に一度水害に遭った経験があり、高台に工場を移設したので大丈夫だと思っていたのですが、さすがの豪雨で電力、水道が停止しました。そこで、関西工場がバックアップとなり、10日間ほど稼働しておりました。

現状は完全復帰をしており、売上も平常の状態です。

7月の月次ではマイナスにならない程度としか言いようがありません。豪雨の影響は第1四半期に若干出てくるとは思いますが、2Q以降は通常どおりかと思いますので、通年の計画は大きく変えておりません。

はじめに-新工場用地の取得について①

次に新工場の用地取得についてです。当地取得額が12億5,500万円で、建物と設備が30億円程度。自己資金と借入によってまかなっていきます。

はじめに-新工場用地の取得について②

静岡の駿東郡の一番東にあたり、神奈川県との県境で足柄サービスエリアや海老名インターまで35~40キロメートルぐらいのところです。横浜や町田は非常に近く、西東京、東北のほうにも抜ける道ができるということで、そのあたりを範囲内に入れた新工場の整備を現在行っております。

現在は、広島本社工場と、2012年にできた関西工場を運営しており、新工場稼働は来期(2020年6月期)を予定しております。豆腐の売場の状況が年に2回、大きく変わるものですから、来年(2019年)秋の棚替えをしっかり稼働させようということで、セールス活動を行っております。この1年間の売上は大したことはないのですが、取引の窓口までは開いていただくということで、流通大手各社さんに直販できる状態にさせてもらっています。

今のところ、(商品は)いらないという会社は1件もない状況です。

関西工場ができたばかりの6年前の状況は、未上場で、知名度が低いということもあり、商談が(スムーズには)できませんでした。

ただ、このたびはみなさまに快く話を聞いていただいております。関東の方のほうが「素直でくせがない方」がいるのかもわからないですが、関西では足蹴にされたといいますか、話を聞いてもらえなかった時間が長かったものですから、逆に少し戸惑っています。

ビデオを見ていただいたりして、設備のスケールが違うということ(を知っていただき)、相手にしっかり利益を提供できるかたちでやっております。通常の販売の納価よりも、3~5パーセントぐらいはもうかりますし、賞味期限が長いので廃棄ロスが出ません。

お客さまが明確な「目的買い」でなくても、冷蔵庫の中になかったら補充するために買ってもらえるというのがコンセプトですので、そのあたりで(業績を)伸ばしてきました。

関東には豊かな市場がありまして、私を含めて、おもに役員4人でセールスをやらせていただいておりますが、非常に反応がいいです。

それと関東は(経済的に)豊かなんですかね、(設定した)値段が通ります。具体的に内定のところもありますが、名前を言うことはできないですね。

焼き豆腐などは(通常)、国産のものだと、すでに8つくらいに切られたものが入っていて使いやすいですが、普通の焼き豆腐でしたら4~5日しか日持ちしないでしょう。しかし当社(の焼き豆腐)は12日ほど日持ちしますし、イージーオープンといって包丁で切らなくても開くよう(なパッケージ)になっております。冬に、冷たい水に手をつけなくてもいいといった利便性の高さ、利益率の高さ、同業者が(あまり)製造しないため値崩れしにくい点などに、非常に魅力を感じていただいております。

おそらく各社……関東でもわずかながらですが、取引がゼロの状態をイチにするための起爆剤としては、そのあたりでしょうか。または、木綿豆腐による木綿厚揚げの自動機などは当社にしかない機器ですので、そのへんの期待されている品目はほかにもあります。あとは、まだまだ売上は立っていませんが、「べに花」などもあります。

後ほど説明いたしますが、とにかくスピードとスケールがあり、利益も出て新しい商品があるということです。ただ、あまり言うと後の説明で、対して売上が伸びていないといった話になるといけないですね。整合性がとれないと言われるかもしれません。

広島・岡山・関西は単価が非常に安く、その中で苦しみながらの利益構造のため、関東の商売とはまったくの別物です。ですので、戸惑いながらやっています。

2018年6月期業績

それでは、昨年度の決算状況ですが、売上予測を102億円で組んでおりましたが、なんとか達成できました。

四半期業績比較

設備投資が少し増えており、償却が増えたということと、当社も人手不足ということで、労務費の(かかる)ところにも取り組んできました。

もともと中小企業枠から上場しましたが、優秀な人材確保(に注力する)ということで、少ないながらもずっと(予算を)上げてはきましたが、そのあたりが費用として大きく効いてしまったということで、利益は横ばいになっています。

また、第1四半期は季節柄、少し安い商材が多いものですから、売上構成はいつも芳しくありません。よって、第2四半期や第3四半期で稼ぐという構造になっているため、こういう業績となっています。

拠点別売上高

拠点別売上は、本社がまったくの横ばいのような感じになっています。しかし、関西工場へ一部移管ということもありますので、微増ではありますが、このように68億~69億円あたりとなっています。なお、関西の売上は伸びてきております。

以前にもお話ししたように、2012年に当社が(関西に進出して)いったときの売上は、初年度で6億円ほどしかありませんでした。それが伸びたということです。

従来のナンバーワン、ナンバーツーで、(売上が)50億円を超える業者さんのうち、1社が(2018年)2月に廃業しました。ナンバーワンでも利益がほとんど出ない状況になり、やまみが焦がしたといいますか、「やまみ価格」と「やまみスペック」に合わせた(商品を展開した)ものですから、利益が出なくなったようです。

関東のバイヤーさんは、そのあたりをよく勉強されており、POSデータや販売実績を基準に、当社の主力品目が大きく売り場を変えています。

小切りのカット豆腐は値崩れしない、厚揚げも当社しかできないもの(を提供する)、切れている焼き豆腐のように(他社と)競争しない商材があるといったことをよくご存知なものですから、この度の商談は、そのあたりを十分に聞いていただきました。

私も訪問させていただきますが、「そうは言っても、1万5,000坪の工場を建てて関東へくるわけですから、目論見はもうちょっとあるんでしょ」といった話もあります。しかし「そうですね」ぐらいの話しかしていません。

営業利益

夢は大きいですが、数字が滞っています。ちょっと評価が低いとは思いますが……。では、営業利益の内訳です。

これは先ほど申しましたように、売上増は達成しても、労務費や材料費がこういう状況になっており、営業利益が横ばいということで、このようなかたちです。

人件費がかなり効いています。本来でしたら(生産は)自動で、多少増産しても無人ラインですから、それほど(人件費は)見込んでいないのですが、待遇改善がかなり入っていると思います。

前期ふり返り

なお、消費は非常に安定しております。豆腐ですから健康にも良いということで、割と順調だと思います。今後の売上については、やはり新規のお客さま(を獲得したい)。とくに関東は大きな市場ですから、新しいお客さま(を獲得するために)、私を含めた役員4名を中心にセールスを進めております。

バランスシート

バランスシートは、キャッシュフローが増えております。長期の借入も若干減った中で、余剰金も増えたかたちです。

キャッシュフロー

キャッシュフローに関連してですが、設備投資を積極的に行うことで同業他社との差を一層つけていこうという基本姿勢はずっと変わっておりません。

キャッシュフローで増加しているところは全額、投資に回した形になっております。お客さまの利益、新しいお客さま作り、新しい利益作りがあってこその商売ですから、今の段階では先行投資という形になっております。

トピックス-主力商品の販売状況

引き続き、商品についてです。当社にしかできないものを、圧倒的な設備ラインとロボット化でやっていこうということです。後ほど説明しますが、その部分をさらにブラッシュアップします。加工費が圧倒的に低いものですから、そこに原材料比率をのせて、いい商品にしても、いいものでお買い得なら売れます。

関東も含めて、商品構成をその方向にシフトしていこうと考えております。厚揚げにも国産商品を投入したり、水が入った木綿や絹のカップ豆腐も、従来品も伸びていますが、さらに付加価値部分のウエイトを増やそうと思います。

切れてる焼き豆腐については、まだまだ小さいですけれども、ここはさらに伸びると思います。当社にしかできない設計と技術でやっておりますし、値段が同業他社とは競合しませんので、値崩れもしません。それは販売先にとってもいいことですし、お客様にとっても使いやすいということで、みなさまに理解してもらっている商品だと思います。

去年(2018年6月期)第2四半期の時に発表して、まだ大きな売上にはなっておりませんが、北海道産大豆を使った商品であるとか、べに花で揚げた油揚げの自動化ということに取り組んでいきます。これはまだ、全体の構成を変えるとか、利益を変えるところまではいっていませんが、こういう方向性でやろうということです。

トピックス-コンシューマ向け新商品

それから、売れ筋のカップ豆腐・絹木綿の150グラム三段重ねであるとか、絹厚揚げ……関東では木綿厚揚げというのは市場に全然ありませんが……これが2個入っています。関西で言えば1つが50円程度の売価ですが、関東に来たら一気に80、90円です。厚揚げの木綿豆腐で国産という、(他社が)真似のできないところで、中くらいの価格で売れるものを売る方向性に変えていこうと考えております。

ですから普通の豆腐も、加工費が安いため、うちならではのいい大豆を使っても、みなさまが買いやすい100円中心の価格帯。関東ではそうした商品を中心に展開します。関西・中国・四国についても、この割合を増やしていこうということで、これからはそのあたりが数値に出てくるのではないかという期待があります。

トピックス-業務用豆腐の売上が順調に拡大

業務用豆腐の売上は順調に拡大しています。大きなグループで準業務用商品というのはまだまだ小さい売上なのですが、切れてる焼き豆腐をはじめ、ゴーヤチャンプル用の固くて美味しいお豆腐や1センチキューブになった麻婆豆腐用の豆腐……以前は2段切りの50ミリでしたが、今度は3段切り、75ミリで600グラムという商品など(さまざまなもの)をやっています。その商品を外食(産業用)にも置いているのですが、他社ができないということで、関西の大手チェーン店さんの独自商材としても(売上が)上がってきています。

トピックス-設備投資の状況

去年(2017年)に手がけた油揚げのラインについてです。当社が納品する前も、もちろん他の業者さんが製造して納品していたわけですから、それぞれバランスが取れていたと思いますが、今切り替えの入り口ということで、こういうものをやらせてもらってます。

全自動で動いて、最後にロボットで段積みをして、袋詰め・箱詰めまでできるということで、稲荷揚げサイズのもので、1時間で3万枚対応できますが、まだまだ稼働がほとんどいってないというのが現状です。

ローリング計画のポイント

今後の展開については、中期の方も計画を立てておりましたが、関東工場のところが計画内に入っておりませんでしたので、一部数字がずれるような形にはなりますけれども、関東の設備投資が入ってきます。

2021年6月期については、徐々に売上が発生して利益に寄与してくるということで、1年遅れのようなかたちにはなっておりますけれども、関東の売上が上がるほど利益構造が変わります。

(関東のお客さまはみな)よいお客さまで、高い食材、かつ1つずつのロットが大きいですから、飛躍的な伸びの予定は1年遅れにはなっておりますけれども、そういう動きになってくると思います。

新工場の計画に伴って、1年遅れになっておりますし、豪雨の影響も多少はありますが、全体に影響を及ぼすほどではありませんので、計画は修正しておりません。もともと保守的に取り組んでおりました。

それから関東での市場開拓についてです。現在、大手と言われるところはほとんど商談ができておりますので、(今後)進んでくると思います。原則的には、同業他社ができないようなスケール、商品、利益(が訴求点)です。(他社と)同じものを提案しても意味はありません。

それと日本の流通はこれから一層集約されると思いますし、大手流通を担うサプライチェーンの供給メーカーも、やはり大きくなっていかなければならないと思います。

とくに、豆腐はずっと(規模が)小さく、今までそれ(大手流通各社)に対応できるところがありませんでした。それに対応できる工場が今度できるという認識は持っていただいています。

2019年6月業績予想

これは来期(2019年6月期)の売上予定で、113億円です。利益はギリギリのところです。経常利益がマイナス1.6パーセント。うちの経営企画室は緻密で安全(第一)な人ですから、ちょっと情けない数字ですが、保守的に組んでおります。

営業利益予想

労務費は、今年(2018年6月期)は1億円ちょっとでしたが、ずっと上がり続けるものではないため、ちょっとは落ち着いてくるのではないかなと考えております。そこで、このような数字になっていると思います。

設備投資・減価償却費

それから設備投資、減価償却はいかにも増えていて、多いような感じです。関東工場の稼働が始まる年には関西、中国、四国の設備がやっと一段落するというかたちです。それと、関東への物流バックアップ要因の機械設備を入れるということで、いつもよりは大きくなっております。

本社工場のスクラップ・アンド・ビルド……時間5,000台で、業界では今トップメーカーがこれから取り組むところなのですが、それを捨てて1万台以上のものに替えていこうと考えています。また、関西工場も同じく……これは完全増設ですが、関東のバックアップ、注文、引き合いをいただいているところを淀みなく対応できるようにということで、(設備投資などが)こうしたかたちになっています。

イメージする将来の業界の姿

これはいつもご説明しているように、同業者の数は確実に減っています。4人以上の業者も1,100社ほどになっています。

ただ豆腐は非常に健康的な食材であるという認知もありますし、健康食でもありますので、商品提案を上手に行い、使いやすい提案をしていけば、コンシューマー向けで3,000億円強、あとは中食・外食合わせて6,000億円程度の上乗せがあるのではないかなと思っております。

株主還元

これは成長を優先しておりますので、引き続き配当はこういうかたちでお願いしたいということです。

先ほどのように業者はどんどん減っております。とはいえ、なかなか厳しいところではあるのですが、合理化、自動化で価格を上回る改善をやっていこうということで、引き続き進めていきます。

豆腐市場動向②-事業者動向

ほとんどが簡易工場ではあるのですが、29ページの左の図のように、従業員が4人以上のところも減っております。右のグラフの4人以上のところで残った事業者は、当然売上も増えております。年商50億円以上に絞ると、もう10社もありませんので、実際には全国で残るメーカー数は20社程度かなと考えております。

引き続き、即食関連含めて労働者の数も十分にいない状態なものですから、どうしても中食は増えてくるのかなというところです。

しかし、それに合わせた商品提供が十分できておりません。今まででしたら、どうしても豆腐は扱いにくいよねとか、安定供給してくれないんじゃないかなど、いろんな問題があって、途中で潰れるのではないかといったことを言われるのですが、(当社の製品を)使っていただいたところは、継続的に取引していただけていますし、必ず増えていくものだと思っております。

以上となります。

質疑応答:新工場の稼働について

質問者1:アドバンスト・リサーチ・ジャパンのアニヤと申します。1つは関東の工場が完成する前まで……2019年6月期と2020年6月期までとして、要するに富士山麓工場が稼働していない前提でいった場合に、本社工場と関西工場の今後の増設分も合わせて、その段階での生産金額というのは、能力的にはどの程度までできるのでしょうか?

山名:油揚げのラインも導入しましたが、2割ぐらいしか稼働しておりません。投資対回収などで難しいことを言ったら、少し外れているのかもしれませんが、将来への投資を優先しておりますので、キャパシティはかなりあります。

油揚げのラインでもフルに動けば15億円ぐらいはいけると思いますし、新しいラインは1ラインが10億円ほどの売上を達成すると思います。9億円しか売上増を見込んでいないのは、バックアップが1つあるからです。

一段落して、今度は関東の設備に移行していくスケジュールです。関西工場を設立したときも、2012年の投資以降はほぼ関西中心でした。この間に、最後の本社のスクラップアンドビルドをやりますが、同じようなかたちで、2020年の6月以降、ほとんど関東の設備投資に変わってくると思います。

質問者1:例えば関西工場など、御社が増設する時、1つのラインを増設しようと判断する場合について、増設しようと思っていろいろ手配を始めてから稼働までの期間は、だいたいどのくらいでしょうか?

山名:今は正直、かなり(期間が)かかり、1年弱ほどかかります。

質問者1:売れ行きなどを考えながら増設を進めると思いますが、実際に稼働するまでに、だいたい1年を見ておけばいいということになるわけですか?

山名:スタートが1年なものですから、売上が潤沢になるまで、また2年ぐらいかかります。先の長い話ですが、関東工場も(稼働開始から)2年目の2021年6月ぐらいから、売上も増えてくるでしょうし利益も増えてくるだろうと(見込んでいます)。

それと、消費者の構造が(関東と関西で)全然違います。商品部からは、「関東は安くても、欲しくないものは売れないし、いいものでお買い得なら関東はいくらでも売れます」と言われています。田舎者だとわかっているから「戒め」を受けているのだと思いますが、そういう方向でやりなさいという「印」ということで、僕らも方向転換していくところです。

質問者1:そうしますと、今関東で商談をされていて、試験的に店頭に流れ始めるのかと思いますが、それ自体の採算性はどうなのでしょうか? 関西方面から運んでくるということで、その分(コストが)かかりますよね。だから、仮にそこが売上に上乗せになったとしても、2020年度ぐらいまでは、基本的には効かないと見ておいたほうがいいわけでしょうか?

山名:単価が高いものですからダメージは食わないのですが、利益になるまでには乗らないかなということです。営業経費も増えますし、販売促進の費用などが必要になるかもしれません。マイナス面といいますか、先行投資部分もありますし。しかし、単価が全然違うため、利益にはなりませんが、種まきにはなります。

質問者1:わかりました。

質疑応答:関東における事業展開について

質問者2:野村證券のミナガワと申します。お世話になります。3点お願いします。

まず1つ目が、先ほどから関東地方のお豆腐の販売価格が高いといったお話が何度も出ました。こちらの背景……そもそも豆腐を目玉商品にしないという商習慣によるものなのか、それとも物流費や人件費等がその分余計にかかってしまっていて、高いのは仕方ないことなのか、それとも、そもそも材料にいいものを使っているから高いのかなど、考え得る理由を教えてください。

2つ目が、最近、豆腐の無菌充填による常温販売が解禁されたと思います。御社の事業に対する影響について教えてください。

3つ目が、関東の新工場についてです。この新工場の初期段階での損益分岐点の売上高はどれぐらいで、稼働してから何年後ぐらいにそれに達すると見ておけばよいでしょうか?

山名:関東のお豆腐が高い理由は、所得が高い点があると思います。それから、需給バランス。得意先で話をしても、回してもらえてない、作ってくれと言っても対応してくれないなど、いろいろな声を聞きます。ですから、需給バランスでそういった値段が通っているのかなと思います。

とくに関東だからいいものを売っているとか……関西もいいものを売っているのですが、いいものをさらに安く売るのが田舎だったんです。

それから僕らは、販売者のほうは高く売るのが販売力で、君たちのいい商品を安く仕入れるのが力だよねといったことをよく言われてきました。関東の商談は、この売価に対して「いくらあればいいので、それ以上はいらない」といったような、当たり前と言えば当たり前なのですが、新鮮な驚きがあります。そのあたりも違うのかなと思います。

無菌充填の豆腐については、ドライ商品の扱いのため、今のところは豆腐売場には並ばないのかなと思っています。販売方法が違うので、宅配であるとか、いろんなところに出てくると思います。

僕らの豆腐がこれだけ安価で販売されているというのは、毎日の販売ロットと物流費の軽減と人件費……1つにかかる人件費の低減を、すべて達成できているから、安い豆腐が出回ります。無菌充填(の環境が整って、その豆腐)が安くなるまでは、もうちょっと時間がかかるかなと思っています。

当社ももちろん検討しております。ドライ商品をデリ・チルド売場で売るまでには、もうちょっと時間がかかるのかなということで、(様子を)見ていこうというのが当社の状況です。

売れないことはないと思うのですが、今販売している値段が150円……宅配ではそういう値段で売られています。便利ではありますが、ちょっと(当社のコンセプトとは)違うものではあるかなと思います。

3番目の新工場の損益分岐点は、投資の際に採算表を作っております。約2年半ぐらいで20~25億円に到達したあたりから利益が出てきます。

今まで見ていただいたように、15億円、17億円といった規模の数字で毎年やってきましたが、今回の設備は30億円。しかも建屋が15億円です。

初期投資ということで、ユーティリティや水処理施設など、償却(期間)が長いものが10億円程度あります。機械設備は20億円程度です。商品単価は非常に高いため、それほど心配しておりません。従来と同じように、2年ないし2年半ぐらいで、損益分岐点を超えてくるのかなと思っています。

質問者2:先ほどの部分で、関東の販売価格が高いというところですが、仮に、御社の価格帯で関東地方に攻め入ったときに、競合さんがそれに対して値段を下げて攻勢をかけてくる様相を呈しているのでしょうか。それとも、黙って見ている状況でしょうか。

山名:投資家さんと話をしたときに、散髪のQBハウスについて話しました。1,000円を1,200円に上げられたということでした。

普通の散髪屋さんが3,000円で営業していたら、何も設備投資までして人を雇って、単価の安いところへ参入しようとは思わないでしょうから、その価格帯の部分はQBハウスさんが担えばいいのではないかと思っています(し、それと同じことだと思います)。

やまみの商売は日配デリですので、工場を止めるわけにはいきません。もし(低価格で)やろうと思ったら、大きな土地を買って建屋を建てて、大きな機械を入れて、単価を15パーセントぐらい下げて、人を新たに雇って、ロボットを入れて、というところでしょうか。

しかし、計算できる人ほど(別のところには)参入しません。やまみスタイルには参入してこないでしょう。ただ、参入してもらってもいいと思って、私たちもやっております。

また関東の市場はあまりにも大きいため、私どもが日配デリでがんばっても、それほど響かないといいますか、最初は容認していただけると思います。

先ほどもご説明したように、切れてる焼き豆腐がパックになって、日持ちが長かったり、木綿厚揚げ豆腐が、今1個80円から90円で売っているものが、国産で2個入りにして150円ぐらいで売れて、利益も取れますよということです。

当社も、今の厚揚げの自動機を始めたときには、自動機の中で切ったカスがパックの中に入ったり、浮いた衣が焦げ付いて入るといったことがあり、社内でも「社長、もう厚揚げは撤退しましょう」といった話もありました。

しかし、今はそういう問題も解決して、経験値も積んで問題なく製造できます。同業者がそこまで苦労して投資して、安く売ってしまうと、いわば自分の売場を苦しめますから……。よその市場は新たな市場ですが、崩すつもりはありませんので、粛々とやっていきます。

質問者2:ありがとうございます。あともう1点、常温豆腐についてです。

もし同じように設備投資をして効率化を行った場合、常温と日配とで、どちらがコストパフォーマンスが優れているのでしょうか。

山名:同じだと思います。私どもも、豆乳事業に参入して……常温豆腐の無菌充填は、中のアルミ蒸着で120度の3秒殺菌して、テトラ・ブリックで……といったかたちで、豆乳と同じなんです。豆乳はニガリの凝固剤が入っているだけの違いで、普通の牛乳やジュースがとまったく同じなのです。

私どもも豆乳事業をやりましたが、撤退した理由は、ナンバーワンになれないところでは、競争力も効率も発生しないからです。

今、キッコーマンさん、マルサンアイさんが残っているように、どの業種においても1位、2位になるようなところは残ると思います。しかし、3、4、5番手はどの業種においても残らないのではないかなとは思います。

おそらく、一定のポジションは獲得するとは思いますが、いまのところは直接参入できません。M&Aで利用するとか、いろんな手もあるとは思っています。

ただ、慣習的に豆腐売場が0度から10度のチルド売場になっていて、そこでお豆腐を買うという商慣習があるものですから、もう少し時間はかかるのかなと思っています。

質問者2:どうもありがとうございました。

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