公的年金には確定申告不要制度があり、受給者は事務的な負担を軽減できます。

確定申告では年間の収支を集計し、誤りがないように申告しなければなりませんが、煩雑な作業を行う必要はありません。

ただし、すべての年金受給者が確定申告不要というわけではありません。今回は、確定申告不要となる年金受給者の条件を解説します。

1. 確定申告不要制度とは

公的年金は所得税法上「雑所得」に分類され、課税対象です。

年金受給額が一定以上の場合は所得税・復興特別所得税が源泉徴収されており、確定申告を行って税金の過不足を精算する必要があります。

ただし、以下に該当する方は確定申告を行う必要がありません。

  • 公的年金等の収入金額の合計額が400万円以下である
  • 公的年金等の全部が源泉徴収の対象となる
  • 公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下である

【年金金受給者】確定申告が不要な場合とは?1/3

【年金金受給者】確定申告が不要な場合とは?

出所:政府広報オンライン「ご存じですか?年金受給者の確定申告不要制度」

例えば、年金収入が400万円以下で他に所得がない場合は確定申告が不要です。

給与所得や事業所得、雑所得がない場合は、確定申告をしなくても納税が完了します。

2. 制度対象者でも確定申告が必要な方

確定申告不要制度の要件に該当する方でも、確定申告書を提出することにより所得税の還付が受けられる場合があります。

  • マイホームを住宅ローンなどで取得した場合(住宅ローン控除)
  • 一定額以上の医療費を支払った場合(医療費控除・セルフメディケーション税制)
  • 災害や盗難にあった場合(雑損控除)
  • 生命保険料を払っている場合(生命保険料控除)

いずれも個人的な事情に基づくもので、国で把握できないため確定申告を行う必要があります。

還付される金額は個人によって差があるため一概にはいえませんが、適用される控除がある場合は有効活用しましょう。

3. 年金は勤務先で年末調整できない

昨今は65歳以上になっても働く方が増えているため、年金を受給しながら給与を受け取る方もいるでしょう。

11月になると勤務先で年末調整の手続きが進められますが、年末調整の対象となるのは給与所得です。

年金は年末調整の対象にならないため、この場合は確定申告を行う必要があります。

年明けになると勤務先から発行される「源泉徴収票」と、日本年金機構からが発行される「公的年金等の源泉徴収票」を確認しながら、確定申告を進めましょう。

【年金金受給者】公的年金等の源泉徴収票2/3

【サンプル】公的年金等の源泉徴収票

出所:日本年金機構「令和5年分 公的年金等の源泉徴収票」

なお、公的年金等の源泉徴収票は、郵送以外にも「マイナポータル」「ねんきんネット」で確認できます。

ねんきんネットでは、前年12月末頃から確認できるため、早い段階で確認して確定申告に備えるとよいでしょう。

4. 働く人が知っておきたい在職老齢年金制度

年金を受給しながら働く方が知っておくべき制度に、在職老齢年金があります。

在職老齢年金制度とは、基本月額(報酬比例部分の老齢厚生年金)の月額と総報酬月額相当額(その月の標準報酬月額+その月以前1年間の標準賞与額の合計を12で除したもの)が50万円を超える場合、老齢厚生年金の一部または全部が支給停止となる制度です。

在職老齢年金の計算方法とは?3/3

在職老齢年金の計算方法とは?

出所:日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」

65歳以上になっても働く方は、在職老齢年金により年金が減額される可能性があります。

特に、フルタイムで働く方は相応の給与を受け取れるため、適用される可能性が高いでしょう。

なお、在職老齢年金に関しては「高齢者の就労意欲を削いでいる」という批判があり、制度の改正または廃止が議論されています。

ただし、現行制度では存続しているため、65歳以上も働いている方や働く予定の方は知っておくとよいでしょう。

5. まとめにかえて

多くの年金受給者の方は確定申告不要制度を利用でき、事務的な負担が発生しません。

しかし、65歳以上になっても給与所得を得ている方は確定申告が必要です。

また、何らかの所得控除を受けられる方は、確定申告を通じて税金の還付を受けられる可能性があります。

確定申告は手間がかかるとはいえ、自分自身で納税額を申告する大切な権利なので、税の理解を深めてみましょう。

参考資料

柴田 充輝