2018年8月8日に行われた、キリンホールディングス株式会社2018年12月期第2四半期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。IR資料

スピーカー:キリンホールディングス株式会社 代表取締役社長 磯崎功典 氏
キリンホールディングス株式会社 取締役常務執行役員 横田乃里也 氏

2Q決算ハイライト

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横田乃里也氏:それでは私から、第2四半期決算及び通期の業績見通しについて、ご説明申し上げます。

4ページをご覧ください。第2四半期決算は、日本綜合飲料・海外綜合飲料の販売数量増により、(連結売上収益は)401億円の増収でした。一方、連結事業利益は38億円の減益であり、増収減益の決算となりました。

ただし、年初計画との比較では、キリンビールの販売好調を中心に、ほとんどの事業が計画を達成しており、連結で事業利益計画を上回りました。

親会社の所有者に帰属する四半期利益は、大幅な減益となりました。これは、昨年度はブラジルキリンの売却益が計上されていた(ため、今年度はその反動の影響がある)からです。

2Q事業利益 事業会社別増減(対前年)

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続いて、6ページをご覧ください。こちらでは、連結事業利益の対前年増減を事業会社別にご説明いたします。

キリンビールは、「一番搾り」「本麒麟」やRTD等の販売好調による限界利益増と、販売費の削減等により、31億円の増益となりました。

キリンビバレッジは、清涼飲料全体の販売数量は2パーセント増加しましたが、「ファイア」の数量減により、商品・容器構成差異等が悪化し、22億円の減益となりました。

ライオン酒類事業は、注力カテゴリーへの活動強化を行ったことなどにより、ミックスが改善しました。コスト削減効果もあり、現地通貨ベースでは増益となりましたが、為替の影響により、円ベースでは2億円の減益となりました。

ライオン飲料事業は、主力商品では「Dare」の販売が好調でしたけれども、収益性の低い果汁飲料のSKUを削減した影響が響き、10億円の減益となりました。

ミャンマー・ブルワリーは、エコノミーカテゴリーの「アンダマン・ゴールド」の販売数量増により、ミックスが若干悪化しましたが、販売数量増と昨年(2017年)6月の値上げの効果等により、6億円の増益となりました。

協和発酵キリンは、(薬価改定による)国内医薬品の売上収益減少や、海外での新製品販売準備に伴う販管費の増加等により、13億円の減益となりました。

その他、メルシャン・CCNNE等の減益を加え、連結トータルで38億円の減益となりました。

通期業績予想

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続いて、9ページをご覧ください。通期連結業績予想について、ご説明いたします。

こちらにお示ししたとおり、事業ごとに内訳の修正を行いますが、売上収益・事業利益、その他各段階利益に関しても、年初計画のまま、通期業績予想の修正はございません。

(スライドの)右にグラフがございますけれども、ライオンの為替影響など、海外綜合飲料事業における下方修正の約45億円を、好調なキリンビールを中心とした日本綜合飲料事業でカバーすることにより、引き続き、年初計画の達成を目指してまいります。

通期計画達成に向けた取組み①

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10ページをご覧ください。続いて、通期計画達成に向けた主要各社の取り組みについて、ご説明します。

キリンビールでは、上半期の実績を踏まえ、「一番搾り」の通期販売計画を上方修正しました。今年(2018年)の8月でリニューアルから一巡しますけれども、猛暑の効果を含めて、最盛期の増分も見込んでおります。

また、ビール類全体の販売好調のモメンタムを維持するため、販管費は年間の計画どおりに投入してまいります。各種マーケティングを通して、さらなる話題化を図り、間口を広げることで通期計画の達成を目指します。

通期計画達成に向けた取組み②

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11ページをご覧ください。キリンビバレッジでは、基盤3ブランドへの注力に加え、リニューアル後の販売が好調な「生茶」や「キリンレモン」を中心に、小型PET容器の販売強化を図ってまいります。これらによるミックス改善を通じて、通期の目標達成を目指します。

ライオン酒類事業では、「Iron Jack」の新商品を投入するなど、注力カテゴリーの販売強化をさらに進めます。

ライオン飲料事業では、引き続き「Milk Based Beverage」の販売を強化し、ミックスを改善してまいります。

また、これまでに取り組んできた、サプライチェーンに関するコスト削減施策の効果も下期に見込んでおり、修正計画の達成を目指します。

キリングループコスト削減の取組み

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12ページをご覧ください。年初に掲げた各社のコスト削減目標を、こちらのスライドのとおり、上方修正いたします。その結果、今中計の3ヶ年トータルで、約400億円のコスト削減を達成します。

資本コストを意識した財務戦略

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続いて、13ページをご覧ください。最後に、政策保有株式の保有に関する当社の考え方について、ご説明いたします。

当社では、資本コストを意識したバランスシートマネジメントの一環として、2010年以降、政策保有株式の売却を進めてきました。今年(2018年)の売却見込み額と合わせて、9年間で800億円を超える政策保有株式の売却をする予定です。

今回、「資本コストに見合わない政策保有株式は、原則保有しない」という方針変更を行いまして、今後一層の削減に着手していきます。政策保有株式に限らず、株主価値の最大化に向けて、今後も資本コストを意識した財務戦略を進めてまいります。

私からのご説明は以上です。

はじめに

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磯崎功典氏:改めまして、みなさんおはようございます。キリンホールディングスの磯崎でございます。

まず、ご説明に先立ちまして、今回の西日本豪雨で被災されたみなさまに対しまして、心よりお見舞いを申し上げたいと思います。一日も早く地域社会が復興するよう、グループを挙げて支援してまいります。

さて、前回の(2018年)2月の決算説明会以降、私は国内・海外の多くの投資家の方々と、面談をしてまいりました。その中で、私の受けた印象は、大きく2つあります。

1つは、これまでの迅速な構造改革によりまして、定量目標を着実に達成しているという点について、みなさまが一様に評価されているということでございます。もう1つは、キリングループのさらなる成長に、大変期待されているということであります。

また、ベトナムのサベコ(サイゴンビール・アルコール飲料総公社)に対する出資を見送ったという点も、規律ある投資判断として、ポジティブに受け止められております。

本日は、こうした状況も踏まえまして、その後の中計の進捗状況と株主価値最大化に向けた取り組みについて、ご説明申し上げます。

2016年中計進捗の振り返り①

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まず、中計の進捗状況に関する振り返りです。基本方針である、構造改革によるキリングループの再生に向け、着実に前進しております。

周知のとおり、重要課題の1つであります、低収益事業の再生・再編につきましては、ブラジルキリンの売却、キリンビバレッジの収益構造改革など、大きな成果を上げることができました。さらに、ビール事業の収益基盤強化におきましても一定の進展があり、とくに最優先課題でありますキリンビールの業績が、回復基調にあります。

2016年中計進捗の振り返り②

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そのキリンビールは、先月(2018年7月)発表のとおり、上半期の課税輸出数量が対前年プラス3.3パーセント増となり、お客さまの支持率も、3年ぶりに大きく増加しました。

中計において、「ビールカテゴリーの魅力を高めること」と、「新ジャンルにおけるお客さまの支持率の回復」に一貫して取り組んできており、その成果がようやく出始めたと認識しております。

ただし、昨年(2017年)6月に施行されました、酒類の公正な取引に関する基準の趣旨に則り、シェア獲得のための過度な価格競争に後戻りするつもりは、まったくありません。主力の「一番搾り」が、昨年9月の全面リニューアル以降、大変好調な販売を続けていることに加えまして、今年3月に発売いたしました「本麒麟」も、順調に拡大を続けています。

コスト削減の効果もありまして、中計で掲げた増収増益の実現に、確実に近づいています。

株主価値最大化に向けた取組みの進捗

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さて、今年(2018年)は、中計最終年度の目標に全力を注ぐと同時に、今後の持続的な成長と、株主価値のさらなる向上に向けた取り組みも強化しています。

その実現のために、年初にご紹介した3つの取り組みのうち、「既存事業による利益成長」と「事業の強みを活かしたシナジー創出」について、これまでの進捗と今後の方針をご説明いたします。

なお、既存事業につきましては、キリンビール・ライオン酒類・キリンビバレッジ・協和発酵キリンの4社にポイントを絞り、お話をいたします。

既存事業の利益成長-キリンビール①

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まず最初に、キリンビールでございますが、今中計では、一貫してマーケティングの変革に取り組んでまいりました。その最大のポイントは、主力ブランドに継続的に投資し、中長期的に育成できる構造を作り出すことであります。そのためには、収益性をより一層高めなくてはなりません。

具体的に申し上げますと、注力ブランドの絞り込みと、中期育成プランの策定・実行。そして、徹底したお客さまのニーズ分析に基づく商品開発。また、広告と店頭での販促のさらなる連動といった取り組みを進めてまいりました。さらに、デジタルを活用した統合マーケティングも実践しています。

その結果、トップラインに対するマーケティングコストの比率も低下し、我々が目標とする姿に、着実に近付いています。マーケティングROIを高めることによりまして、利益成長とブランドへの投資という好循環を生み出してまいります。

今後も、ビール市場をより魅力的なものとして、業界全体のプロフィットプールのさらなる改善に貢献してまいります。

既存事業の利益成長-キリンビール②

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もう1つの重要な取り組みが、クラフトビールです。これまでもお伝えしてきましたとおり、ビールカテゴリーの魅力を高めるために、既存ブランドの強化と併せて、クラフトビール事業にも力を入れています。依然として、ビール市場全体に占めるクラフトビールの割合はまだまだ限定的であり、市場そのものの拡大が喫緊の課題であると考えています。

これに対しまして、ヤッホーブルーイング、ブルックリンブルワリーへの投資や、スプリングバレーブルワリー、タップ・マルシェによる体験の場の提供を行ってまいりました。こうしたさまざまな活動によりまして、ユーザーの裾野は確実に広がっています。

また、市場への新規参入も増加しており、2018年のクラフトビール市場は、4年前の約2倍の規模になると予想されています。今後も、クラフトビール市場のさらなる拡大に向け、取り組みを加速させてまいります。

既存事業の利益成長-ライオン酒類

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続きまして、ライオン酒類事業です。この事業の最大の課題は、ABIブランドの喪失など、中計策定時に想定していなかった大きな経営環境の変化によりまして、収益が減少していることです。

これに対しまして、成長カテゴリーにおけるブランドの強化、クラフトビールの構成比アップによるミックスの改善、業務プロセスの改革などによるコスト削減などの対応を進めています。

また、豪州ライン事業の売却など、事業の選択と集中も進め、より効率的に経営資源を配分しています。引き続き、キリンホールディングスがハンズオンで現地マネジメントと連携し、収益の回復にスピーディーに取り組んでまいります。

既存事業の利益成長-キリンビバレッジ

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続いて、キリンビバレッジですが、これまでの収益構造改革により、謙虚に申し上げても、低収益事業から脱却しつつあると考えています。従いまして、今年度からはトップラインの成長による、利益の拡大に向けた取り組みを開始いたしました。とくに、強固なブランド体系の構築は大変重要な課題であり、主力商品に継続して投資ができるよう、より一層収益性を高めてまいります。

具体的には、当社単独でのコスト削減に加え、競合との非競争分野でのアライアンス等により、さらなる効率化を実現してまいります。この点につきましては、先日発表のとおり、アサヒ飲料社との協働取り組みを決定いたしました。

今後もこうした取り組みを加速させ、ブランドの強化とさらなるコスト削減によりまして、2021年には事業利益率10パーセントを達成したいと考えています。

既存事業の利益成長-協和発酵キリン

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既存事業の最後は、協和発酵キリンです。くる病の治療薬であります「ブロスマブ(KRN23)」が、商品名「Crysvita®」として欧米で承認を受け、第2四半期からドイツ・アメリカ国内で販売を開始いたしました。

各国の販売体制も整え、発売以降トップラインの伸長は順調でございます。こうしたグローバル戦略品の拡大によりまして、引き続き、2020年のコア営業利益1,000億円の達成を目指してまいります。

以上、既存事業の取り組みについて、ご説明いたしました。

事業の強みを活かしたシナジー創出①

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最後になりますが、株主価値のさらなる向上に向けた2つ目の取り組みであります、事業の強みを活かしたシナジーの創出について、お話しいたします。

ご承知のとおり、キリングループは、成熟市場を中心に事業を展開しています。こうした環境の中で、企業として持続的に成長するためには、既存事業の強化に加え、新たな収益源となる事業の創造が必要と考えます。そのベースとなるのが、キリングループの共通の強みである発酵バイオ技術や、免疫分野における研究開発力です。

こうした強みを活かした新規事業として、昨年(2017年)、「iMUSE」ブランドを立ち上げました。「プラズマ乳酸菌」の効果を表す科学的エビデンスや、グループの知見を活かしたプロチャネルの活用などにより、これまでにない競争力を持ったビジネスモデルを築いています。

「iMUSE」を含む「プラズマ乳酸菌」関連商品の販売は、計画を大きく上回って推移しています。今後、より一層の拡大にご期待いただければと思います。

事業の強みを活かしたシナジー創出②

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さらに、健康・未病領域での事業拡大に向け、先月(2018年7月)、アメリカのThorne Research社への資本参加を決定いたしました。Thorne Research社は、機能性の高いサプリメント商品を、プロチャネルを中心に販売することで成功しています。

当社が目指している方向性と合致しており、彼らとのシナジーにより、日本・北米・その他の地域において、健康・未病領域における新たなビジネスモデルを構築してまいります。

終わりに

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以上、中計の進捗状況の振り返りと、株主価値のさらなる向上に向けた取り組みについて、お話しいたしました。次期中計につきましては今後発表いたしますが、既存事業のさらなる利益成長とシナジーの創出、そして資本コストを意識した財務戦略により、引き続き株主価値の最大化に努めてまいります。今後のキリングループの持続的成長に、ぜひご期待いただければと思います。

ご清聴ありがとうございました。

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