半導体製造プロセスにおいて、次世代露光技術となるEUVリソグラフィーの導入が目前に控えている。台湾TSMCが2019年第2四半期をめどに、「7nm+」世代でEUVを導入し、量産開始を予定しているほか、韓国サムスン電子も7nm世代で19年中に量産を開始する見通しだ。

HOYAはシンガポールに新ライン設置

 EUV露光機を手がけるASML(オランダ)の受注および出荷が好調に推移するなか、国内の関連企業も対応を強化する。HOYAはEUVリソグラフィー向けマスクブランクスの新ラインをシンガポールに設置する。顧客となる半導体メーカーのEUV量産適用に対応したもので、20年初頭の生産開始を目指し準備を進めていく。

 同社は半導体マスクブランクスのトップメーカーで、EUVに関しても業界をリードする立場にある。これまで、EUVマスクブランクスはR&D機能も伴った長坂事業所(山梨県北杜市)で生産していたが、今回シンガポールにも生産ラインを設けて、量産対応を強化する。

 シンガポール工場はBCP対応の一環として12年にマスクブランクスの生産ラインを設置。ArF世代にまで対応したラインとなっていたが、今回EUV向けの生産も行うこととなった。

 同社の18年度第1四半期(4~6月)業績のうち、半導体マスク&ブランクスが含まれるエレクトロニクス関連事業の売上高は前年同期比6%増の354億円を記録。うち、マスク&ブランクス部門は同12%増の2桁成長となった。ブランクスに占めるEUV向けの割合は20%となり、前四半期の18%から構成比が上昇した。

 EUVマスクブランクスにおいては、HOYAのほか、AGC(旧旭硝子)も事業拡大に意欲を見せる。同社はグループ会社であるAGCエレクトロニクスで18年から大幅に増強することを決定。生産能力は明らかにされていないが、18年に売上高ベースで17年比倍増させるべく能力を増強。20年に一連の設備投資が完了する見込みで、20年時点での売上高は17年比で8倍まで拡大させていきたい考えだ。

レーザーテックの「謎の大型受注」

 また、半導体のマスク/ブランクス欠陥検査装置を展開するレーザーテックも、EUVリソ向けに業績を伸ばしている。

 同社が先ごろ発表した18年6月期通期業績は、受注高が前期比69%増の429億円と大幅に増加した。うち、半導体関連装置は同81%増の348億円で、半導体関連装置に占める受注高の内訳は、マスク関連が25%、ブランクス関連が5%、残り70%が新規事業となっている。この新規事業のなかには、同社が世界で唯一製品化している、EUV光源を使ったマスクブランクス欠陥検査装置「ABICS」も含まれている。19年6月期にはも新たに2台のEUVマスクブランクス欠陥装置を受注を見込んでおり、19年6月末に受注残見通しは4台となる予定。

 また、17年9月には半導体関連で約160億円の大型受注を獲得したと発表。詳細は明らかにされていないが、新規事業はEUVマスクブランクス欠陥検査装置と、この「謎の大型受注」で構成されている。

アップルはEUV採用に難色?

 マスク関連を中心に部材メーカーの対応強化が進むEUVリソグラフィー。しかし、実際の量産ラインの現場では、ペリクルレス(マスクに貼る保護膜の役割)による露光を余儀なくされるなど、技術的課題を多く抱えている。TSMCは来年から量産導入を目指すが、最大顧客であるアップルがEUVを用いた量産プロセスの採用に難色を示しているとの情報もあり、EUVリソに対する見解は、サプライヤーとユーザーで大きな温度差がありそうだ。

電子デバイス産業新聞 副編集長 稲葉 雅巳