会社を辞めてすぐに転職する場合、税金や社会保険の手続きは特に必要ありませんが、個人事業主や無職になるケースでは自分で手続きをしなければなりません。
また、退職後に収入が減る、または無収入になるといったケースでは、翌年の住民税と国民健康保険料の負担に注意が必要です。
今回は、会社を退職後に給与所得者にならない人の税金と社会保険料の手続き、翌年の国民健康保険料と住民税について解説します。
1. 退職後に給与所得者にならない場合の税金と社会保険料
会社を辞めた後にすぐに再就職する場合、新しい勤務先に必要書類を提出するだけで、自分では税金や社会保険の手続きは必要ありません。一方、退職後に個人事業主になる、無職になるといったケースでは、自分で税金や社会保険の手続きをします。
1.1 国民年金
会社を退職後に給与所得者にならない場合、60歳未満の人は「国民年金」の第1号被保険者として加入が必要となります。退職後14日以内に、居住する市区町村の国民年金窓口で加入手続きをしてください。
1.2 所得税
会社を退職後に給与所得者にならない場合、所得税については確定申告をする必要があります。退職時に受け取った源泉徴収票などの書類を準備し、翌年の確定申告期間(2月16日~3月15日)に申告をしましょう。
1.3 住民税
退職後に給与所得者にならない場合、住民税の納付方法は退職時期によって以下のようになります。
- 1月から5月に退職した場合: 最終の給料もしくは退職金から一括徴収
- 6月から12月に退職した場合:市区町村から送られてくる納付書で一括または4分割して納付
働いているときは住民税を12分割して納付するため、あまり金額を大きく感じないかもしれません。しかし、退職後は総額が同じでもまとめて納付する分、1回の負担が大きくなります。
1.4 健康保険
会社を辞めて給与所得者でなくなると、健康保険は自分で加入手続きを行う必要があります。選択肢としては「国民健康保険に加入」「個人で全国健康保険協会・健康保険組合に任意継続」「家族の社会保険の扶養に入る」の3つがあります。
国民健康保険への加入
退職後、14日以内に住所地の市区町村役場で手続きが必要です。必要なものは、退職した会社から受け取った健康保険資格喪失証明書、銀行届出印、マイナンバーの確認できる書類、本人確認書類などです。保険料は前年の所得によって決まり、市区町村から送られてくる納付書で支払います。
任意継続被保険者
任意継続被保険者とは退職前の健康保険に、引き続き2年間加入できる制度です。退職後20日以内に退職した会社の健康保険組合に申請する必要があります。任意継続被保険者の保険料は事業主負担がなくなるため、全額自己負担となります。
家族の社会保険の扶養に入る
一定の条件を満たす社会保険の被保険者の親族は、被扶養者となります。収入要件などの被扶養者の条件を満たせば、保険料の負担なく健康保険に加入できます。
2. 退職の翌年の住民税と国民健康保険料はどうなる?
個人で住民税や国民健康保険料を支払う場合、退職の翌年に収入が大幅に減少する可能性があります。その場合、住民税や国民健康保険料が収入に対して高額になるリスクに注意が必要です。
2.1 前年の収入をもとに税額や保険料が決まる
会社を退職すると、翌年の住民税と国民健康保険料は前年の所得に基づいて計算されるため、その時点で収入がなくても高額な支払いが必要になる場合があります。
そのため、退職後の生活設計では、これらの支払いに備えて事前に資金を確保しておく必要があります。
2.2 前年の収入が400万円だった場合の住民税と国民健康保険料は?
退職後の住民税と国民健康保険料がいくらかかるか、試算してみましょう。ここでは、退職する年の年収が400万円だった場合に、翌年に支払う住民税と国民健康保険料を計算します。なお、給与所得控除、社会保険料控除、基礎控除以外の控除はないものとします。また、定額減税は考慮しません。
【住民税の計算】
年収400万円の場合の住民税額は以下のように計算します(社会保険料は60万円とします)。所得割の税率は10%、均等割は5000円です。
課税所得は以下のとおりです。
課税所得金額 = 400万円 - 給与所得控除124万円-社会保険料控除60万円 -基礎控除43万円 = 173万円
住民税額 = 所得割(173万円 × 10%)+ 均等割5000円 = 17万8000円
【国民健康保険料の計算】
年収400万円の場合、退職後最初の年の国民健康保険料は約36万円(月額約3万円)となります(東京都千代田区の場合)。
したがって、退職後最初の1年間は、合計で約53万8000円(17万8000円+36万円)の支払いが必要となります。
退職後に収入がほとんどない場合、年間50万円以上の住民税と国民健康保険料の負担は厳しいと感じるのではないでしょうか。また、社会保険の扶養に入る場合でも、住民税はかかる点に注意が必要です。
3. 住民税と国民健康保険料の支払いが苦しいときの対応策は?
住民税や国民健康保険料を滞納すると、延滞金がかかり、差し押さえなどの滞納処分を受けるおそれがあります。納付が難しい場合は、早めに市区町村の担当部署に相談することが重要です。
住民税と国民健康保険料は申請によって病気などのやむを得ない事情が認められると、一括での納付が猶予され、分割等による納付ができる場合があります。また、国民健康保険料は勤務先の倒産など一定の条件を満たす人は、減額される場合があります。
4. 退職前から住民税・国民健康保険料対策を考えておきましょう
会社を退職後に給与所得者にならない場合は、税金や社会保険の手続きを自分でする必要があります。また、退職翌年の住民税と国民健康保険料は前年の所得に基づいて計算されるため、収入が減少しても高額な支払いが必要になる可能性があります。退職前から住民税と国民健康保険料の対策を考えておくようにしましょう。
参考資料
- 日本年金機構「国民年金に加入するための手続き」
- 京都府城陽市「退職した後の住民税は?」
- 国税庁「No.1910 中途退職で年末調整を受けていないとき」
- 全国健康保険協会「退職後の健康保険について」
- 全国健康保険協会「会社を退職するとき」
松田 聡子