1.1 年金だけで生活している高齢者世帯の割合は減少

実際に、厚生労働省の「2023(令和5)年 国民生活基礎調査の概況」によると、100%年金だけで生活している人は「41.7%」となりました。

年金だけで生活している高齢者世帯の割合

年金だけで生活している高齢者世帯の割合

出所:厚生労働省「2023(令和5)年 国民生活基礎調査の概況」

昨年度の同調査では、年金だけで100%生活している世帯は全体の「44.0%」でした。

上記から、「年金だけでは生活が厳しい世帯」が年々増えており、結果として、多くのシニア世代が働くことを選ばざるを得ない状況になっていると考えられます。

長い老後生活を見据え、「働けるうちは働いて老後資金を残しておく」という選択は、一見メリットのように思えます。

しかし、実は就労で得た収入と年金額の合計によっては、年金がカットされる可能性があります。

次章にて、年金がカットされてしまう「在職老齢年金制度」について確認していきましょう。

2. 意外と知らない落とし穴!年金が減ってしまう「在職老齢年金制度」とは?

「在職老齢年金制度」とは、老後に年金を受け取りながら、厚生年金保険に加入して働き続ける場合、年金の一部または全額が支給停止になる制度を指します。

支給停止となるボーダーラインは、労働収入と年金収入の合計額によって決まり、この基準額を「支給停止調整額」といいます。

2024年度の在職老齢年金の支給停止調整額は「50万円」であり、労働収入と年金収入の合計が50万円を超えた場合、年金が一部または全額カットされます。

支給停止となる具体的な年金額は下記の計算方法から算出できます。

在職老齢年金による調整後の年金支給月額=基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-支給停止調整額)÷2

「基本月額」とは、加給年金額を除いた厚生年金の月額で、「総報酬月額相当額」は直近1年の標準賞与額の12分の1の額を指します。

現行の制度では、労働収入が高ければ高いほど、年金額がカットされていく仕組みとなっていますが、具体的にどのくらいの労働収入になると年金が減ってしまうのでしょうか。

次章にて、カットされてしまう年金額のシミュレーションを見ていきましょう。