シマノといえば「自転車のインテル」と呼ばれるくらいに自転車向けコンポーネントのシェアが高く、またブランドとなっている。また、シマノは株式市場でもいわゆる「優良企業」として知られ、またその業績に注目が集まる。今回は同社の最新の決算資料をもとに業績動向や市場環境について見て行きたい。

2018年12月期Q2累計決算はどうであったか

2018年7月30日にシマノは2018年12月期Q2累計決算を発表した。その決算短信では、売上高は対前年同期比+7%増、営業利益は同+12%増、親会社株主に帰属する四半期純利益(当期純利益)は同+48%増となった。増収増益決算となった。

また、セグメント別には「自転車部品」セグメントは、対前年同期比+7%増、営業利益は同+9%増となっている。また「釣具」セグメントは、売上高は同+8%増、営業利益は同+32%増となっており、いずれのセグメントも増収増益で堅調な決算となった。

自転車部品セグメントの地域別動向

同社の自転車部品事業は国内のみならずグローバルに展開がされている。また、同社コンポーネントのグローバル市場シェアは高いことが知られている。グローバルの自転車市場の動向を知るために、同社の決算短信における地域別のコメントには特別に株式市場の注目が集まる。ここでは、地域別についてみていくことにしよう。

欧州市場

E-BIKEの勢いがある欧州市場は好調な様子。

欧州市場では、4月以降の安定した天候と引き続き堅調なE-BIKE(電動アシストバイク)の完成車の店頭販売に牽引され、市場在庫は適正なレベルを維持しました。

北米市場

米国市場も特段の異常なない様子。

北米市場では、完成車の店頭販売は例年並みで推移し、市場在庫についても適正な水準を保ちました。

中国市場

同社について現在最も注目が集まっているともいえるのは中国市場のシェアバイク動向。今回の決算ではそのシェバイクについて調整期に入ったとのコメントがあり、まずは一安心という投資家も多いのではないだろうか。

中国市場では、完成車の店頭販売に回復の兆しが見えず、中低価格帯を中心に低調な販売が続いたものの、市 場在庫は適正に推移しました。一方、昨年都市部で大きな広がりを見せたシェアバイクは調整期を迎えました。

他の新興国市場

今回のコメントでは新興市場の不調さが見てとれる。

他の新興国市場では、東南アジア市場全体では依然として力強さを欠き、南米市場ではブラジル・アルゼンチ ンで通貨安の影響から消費に陰りが出てきました。ともに市場在庫は適正水準を保ちました。

国内市場

同社がグローバル市場に事業を展開しているといってもやはり気になるのは国内市場。

日本市場では、年始来振るわなかったスポーツタイプ自転車及び軽快車の完成車の店頭販売は弱含みのまま推移しました。4月以降は販売に好転の兆しが見えましたが、市場在庫は適正な範囲であるもののやや高めで推移しました。

このように一口に自転車市場、また自転車部品市場といっても地域差やその中でのテーマも異なり、地域別に状況を把握する必要があるのが同社を調査する上で難しい点である。

シマノを取り巻くテクノロジーの変化による競争環境変化

冒頭にシマノは「自転車のインテル」とコメントしたが、そのシマノは現在様々なテクノロジーの変化により競争環境が変化しているといえる。

筆者が日経BizGateに寄稿した「激変する自転車部品業界でシマノを襲う二つの波」も参考にして欲しいが、一言でいえば、電動変速機の登場、フロントシングル化、E-BIKEの普及である。

同社はいずれのテクノロジーの変化に対しても対応をしているが、これまでの競争環境とは領域が異なる分野、例えば無線やモーターといった領域が新たに加わってきていることには注意をしたい。

今後、同社がこうしたテクノロジーの変化にどのように対応し、引き続きコンポーネントでの競争優位を確立できるかに株式市場は大いに注目をしている。

泉田 良輔