筆者は普段、個人向けの資産運用アドバイザーとして、さまざまなご相談を受けています。その中でも「老後の生活資金が不安です」という声が最も多く聞かれる相談内容の一つです。
物価上昇や円安、増税の影響を受け、将来の出費が増加する懸念を感じたり、年金の支給がどうなるか不透明であるため、今から備えたいと考えている方も多いのではないでしょうか。
老後の生活は、現役時代とは異なり毎月の収入が減少する一方で、日々が「休日」のような生活になるため、支出が増える可能性も考えられます。そのため、現役のうちから老後に必要な生活資金を見積もり、計画的に準備しておくことが大切です。
今回の記事では、シニア世代の貯蓄額や年金受給額の実態を確認し、将来に備えるための参考としていただければと思います。また、最後に老後資金の準備方法についても触れていますので、ぜひ最後までお読みください。
1. 【60歳代の貯蓄】二人以上世帯の平均と中央値はいくら?
金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和5年)」から、60歳代・二人以上世帯の金融資産保有額を見ていきます。※なお、「金融資産保有額」には、預貯金以外の株式や投資信託、保険商品などの金融商品残高が含まれています。
1.1 【60歳代・二人以上世帯】平均貯蓄額と中央値
- 平均:2026万円
- 中央値:700万円
1.2 【60歳代・二人以上世帯】貯蓄額ごとの世帯割合(金融資産を保有していない世帯を含む)
- 金融資産非保有:21.0%
- 100万円未満:5.9%
- 100~200万円未満:4.5%
- 200~300万円未満:4.3%
- 300~400万円未満:3.0%
- 400~500万円未満:1.9%
- 500~700万円未満:7.2%
- 700~1000万円未満:6.7%
- 1000~1500万円未満:6.8%
- 1500~2000万円未満:5.4%
- 2000~3000万円未満:9.5%
- 3000万円以上:20.5%
60歳代の二人以上世帯の平均貯蓄額は2026万円と、かつて老後資金の目安とされた2000万円を上回っています。しかし、中央値では700万円まで下がるのが現状です。
さらに貯蓄分布に目を向けると、「3000万円以上の貯蓄がある世帯」が20.5%を占める一方で、「貯蓄ゼロ、つまり金融資産を保有していない世帯」も21.0%に達しており、貯蓄の面で二極化している傾向が見て取れます。
多くの現役世代が漠然とした老後資金への不安を抱く中で、貯蓄と並んで重要になるのが年金です。次に、現在のシニア世代が実際に受け取っている年金月額についてのデータを見ていきます。