元証券マンである筆者は、特に高齢の方の資産運用の相談を受ける機会が多く、株式や投資信託、債券を活用した資産形成のアドバイスを行ってきました。多くの方が「年金に加え、プラスアルファの収入を得たい」と考え、配当金や分配金、利息などを重視して運用されています。

背景には、年金受給額が人それぞれ異なるものの、それだけではゆとりのある老後を送るには十分でないケースが多いことが挙げられます。

年金だけで生活を維持するには難しさがあり、ゆとりある生活を実現するには、その他の収入源が必要とされている状況です。

また、実際の年金額からはさまざまな項目が天引きされています。こうした天引きされるお金によって年金手取り額が変わる方もいます。 

本記事では、年金から天引きされるお金と、これらが年金手取りにどのように影響するのかについて詳しく解説していきます。

1. 老齢年金から天引きされる4つのお金とは?

現役世代が受け取る毎月の給与には、「額面」と「手取り」がありますね。

「額面」は、税金や社会保険料などが引かれる前の総支給額で、会社が支払う給与の総額です。

一方、「手取り」は、実際に受け取る金額で、額面から税が差し引かれた後の金額です。

このことと同様、老後の年金にも「額面」と「手取り」があります。年金からも、税や社会保険料が差し引かれるのです。

役所などの文書では「特別徴収」と記載されていますが「天引き」という表現の方がイメージしやすいかもしれません。

ここでは、老齢年金から天引きされる「4つのお金」について整理していきます。

1.1 【老齢年金からの天引き①】介護保険料

40歳から64歳までの間は、介護保険料は健康保険料に含まれていますが、65歳以降は介護保険単独で納めます。

年金が年額18万円以上の場合、介護保険料は年金から天引きされます。

この天引き方式は「特別徴収」と呼ばれます。

年金が年額18万円未満の場合や、繰下げ待機中の場合には「普通徴収」といって、納付書や口座振替で支払います。

ちなみに、要介護や要支援の認定をうけ、介護保険サービスを利用するようになっても、介護保険料の支払いは生涯続きます。

1.2 【老齢年金からの天引き②】国民健康保険料や後期高齢者医療制度の保険料

国民健康保険や75歳以上が加入する後期高齢者医療制度の保険料も、年金からの天引き対象です。

ただし、「介護保険料が特別徴収されている」といった要件があるため、普通徴収となることもあります。

1.3 【老齢年金からの天引き③】個人住民税および森林環境税

個人住民税は、前年中の所得に基づいて課税されます。

年金所得が一定額を超えた場合は、この個人住民税も年金からの天引きで納付します。併せて森林環境税(年額1000円)も特別徴収されます。

普通徴収の場合、納付書が送付されるため、指定された期日までに自分で支払う必要があります。

※所得が一定以下の場合や、障害年金、遺族年金は非課税です。

1.4 【老齢年金からの天引き④】所得税および復興特別所得税

年金受給額が一定額を超えると所得税がかかり、年金から源泉徴収が行われます。

課税対象となる目安のラインは、65歳未満なら108万円、65歳以上なら158万円。

併せて東日本大震災の復興財源確保のため、復興特別所得税も加わります。

※個人住民税と同じく、障害年金や遺族年金を受給する場合も非課税です。