2019年に「老後2000万円問題」が金融庁の報告書で公表されて以来、多くの方が老後資金の不足を不安に感じています。ファイナンシャルアドバイザーとして従事する筆者のもとにも「老後が不安」というご相談が増えており、どのように備えればよいかを一緒に考えています。
老後の不安を軽減するには、まず具体的にどれくらいの金額が不足するのかを知ることが大切です。しかし、年金の仕組みや将来いくら受け取れるのかをしっかり理解している方は意外と少ないのが現状です。
そこで今回は、基本的な年金制度の仕組みや、実際に受け取れる年金額について詳しく解説します。ご自身の将来の生活設計に役立つ情報を、この機会にぜひ確認しておきましょう。
1. 老齢年金にも《手取りと額面》が!天引きされるお金とは?
現役で働く世代の中には、毎月の給与から天引きされているお金の多さにため息をついている方もいるかもしれません。
実はシニア世代が受け取る老齢年金からも、同じように税や社会保険料など天引きされるお金があるのを知っていますか。
市役所などの公的な書類では「特別徴収」と書かれますが、この「天引き」されるお金について、具体的にどんなものか、具体的に見ていきます。
老齢年金から天引きされる5つのお金を、整理していきましょう。
1.1 【老齢年金からの天引き①】個人住民税
一定の条件を満たす場合、前年中の所得にかかる住民税は年金からの特別徴収となります。
※非課税となる場合、支払い義務は発生しません。
1.2 【老齢年金からの天引き②】所得税および復興特別所得税
「雑所得」扱いとなる老齢年金からは、所得税および復興特別所得税も天引きされます。
1.3 【老齢年金からの天引き③】介護保険料
64歳までは健康保険料とともに納付しますが、65歳以降は単独での納付となります。
介護保険料は、年金支給額が年額18万円以上であれば、年金から天引きされる仕組みです。このため、年金受給者は自動的に介護保険料が差し引かれることになります。
さらに、要介護または要支援認定を受けた場合でも、介護保険料の支払いは一生続くことを理解しておきましょう。
1.4 【老齢年金からの天引き④】健康保険料
国民健康保険や後期高齢者医療制度の保険料についても、年金からの天引き納付が原則となります。
1.5 【老齢年金からの天引き⑤】森林環境税
2024年度から新たに導入される森林環境税も年金から天引きされます。
森林の保護や整備に充てられるもので、国内に住所がある個人に対して一律で課税されます。
年額1000円が住民税と一緒に徴収されます。
現役時代の給与明細と同じく、年金通知書には控除される各種税や社会保険料が記載されることになります。
よって、一般的には「額面」と「実際の振込額」に差が出ると言えます。
公的年金の支給月は偶数月ですが、次の「10月に支給される年金」から年金の振込額に変化が起こる人がいます。
次章で、そのことを詳しく見ていきましょう。