7月上旬に西日本で記録的な豪雨による大災害が起き、多くの方が亡くなりました(現在の判明死者数218名)。さらに、被災した多くの方が、2週間が経った今もそれまでの日常生活に戻れないでいます。
改めて、亡くなられた方々のご冥福をお祈りいたしますとともに、被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。そして、1日も早い復旧を願うばかりです。
酷暑が続く中で熱中症による救急搬送も増加
そして、今回の豪雨災害の直後からは、全国で猛烈な暑さに見舞われています。
西日本(九州、四国、中国、関西)、中京地区(岐阜、愛知など)、関東地区などでは多くの地点で観測史上最高となる気温を記録しており、とりわけ、熊谷市(埼玉県)では日本の歴史上最高気温となる41.1℃を付けています(7月23日)。
こうした酷暑が続いていることで、熱中症に対する警戒が高まっています。実際、毎日多くの方が熱中症により(注:その疑いも含む)救急搬送されており、東京都だけでも日々3,500人を超える状況です。また、高齢者を中心に熱中症が原因で亡くなる人も少なくないばかりか、先日は小学生も尊い命を落とすこととなりました。
熱中症に対する警戒は毎年叫ばれていることではありますが、今年は特に厳重な警戒が必要になっています。
熱中症と同じくらい警戒が必要なのは?
さて、暑さがピークとなっているこの時期、熱中症と同じくらい、いや、それ以上に警戒しなければならないのが「食中毒」です。
食中毒と聞くと、“食当たり”や“下痢”と考える方もいるようですが、基本的にはそれとは大きく異なる恐ろしい症状です。食中毒を簡単に言うと、最近やウイルスなど有毒物質の含まれた飲食物を(口から)摂取したことによって起こる中毒の総称で、明確に「病気」と位置付けられています。
代表的な症状として、腹痛・嘔吐・下痢・発熱などが挙げられ、症状が重くなると命の危険に直面することも珍しくありません。
細菌性食中毒は発生元が不明のまま終わるケースが少なくない
食中毒は、発症原因別に細菌性、ウイルス性、自然毒、化学性、寄生虫といった5つに大別できます。近年は、新型のウイルス性食中毒が冬場に発生していることもあり、「食中毒」という括りで見れば、1年を通して発生のニュースを目にします。たとえば自然毒の代表であるフグ毒の食中毒も冬場に多いですね。
上記の中で細菌性食中毒がとりわけ猛威を振るうのは、気候が暑くなって生鮮食料品の保存期間が短くなる夏場です。この細菌性食中毒で注意しなければならないのは、発症原因となった細菌の“発生元(発生場所)”が不明なケースが多いということです。この場合、根本的な対処ができずに被害が拡大することが珍しくないからです。
今から約1年前の2017年8月~9月にかけて、埼玉県と群馬県で発生した集団食中毒事件を覚えているでしょうか? 最終的には3歳の女児が死亡し、多くの方が入院するに至った集団食中毒は、腸管出血性大腸菌(O-157)による集団感染でした。
当初、惣菜店で販売されたポテトサラダや、惣菜を取る時に用いたトングの使い回しが発生元と報道されていましたが、その後の懸命な調査にもかかわらず、今も発生元が明らかになっていません。
また、1996年に大阪・堺市で起きた同じO-157による有名な集団食中毒事件(感染者9,500人超、死者4人)の場合も、結局は発生元不明のままになっているのです(注)。
(注)感染者数には2次感染者を含み、死者には後の後遺症による死亡も含む。
記録的な酷暑だからこそ、いっそうの警戒を
こうしたO-157以外の細菌性食中毒でも、結果的にはその発生元が判明しない事例が少なくありません。その理由の1つは、細菌の種類によっては人体内での潜伏期間が長いために、発症時にはその原因が検証できなくなっているためです。
熱中症に対する警戒や予防が重要なことは言うまでもありませんが、それと同じくらいに、いや、これからの時期はそれ以上に、細菌性食中毒に対して警戒を高めていくことが必要でしょう。
参考:食中毒の基礎知識(花王プロフェッショナル・サービス株式会社)
LIMO編集部