本記事の3つのポイント
- 中国政府は化石燃料発電の割合を20年に57%、30年に40%へとさらに縮小する目標を掲げており、自動車ではEV、電池分野では太陽電池への投資を強烈に進めている
- 中国政府は20年に乗用車と商用車(バスなど)を含めたエコカー販売を年間200万台に到達させ、累計台数を500万台にする目標を掲げている
- 17年に世界で98GWの太陽光発電設備が導入されたうち、中国は1国で50GW以上を導入した。中国の累計導入量は17年に約130GWに達し、日本(約50GW)の2.6倍の規模になった
北京市街地がPM2.5のスモッグで汚染されたニュース映像の印象が強かったせいか、中国が石炭火力などの化石燃料発電を急速に削減していることはあまり知られていない。発電総容量に占める石炭火力発電の比率が80%というのは、中国の10年前の姿だ。今の中国では、火力発電はすでに63%にまで縮小している(2017年末時点)。
中国政府は化石燃料発電を20年に57%、30年に40%へとさらに縮小する目標を掲げている。つまり、中国は30年には化石燃料発電よりも太陽光などの再生可能エネルギーと原子力発電など非化石燃料発電の方が多い国になっているということだ。
世界最大のEV市場&生産国
中国政府は19年からNEV規制(中国版ZEV、排ガスゼロ自動車)規制を施行し、自動車メーカーに対してガソリン車だけでなく、一定の割合で電気自動車(EV)やプラグイン式ハイブリッド車(PHV)、燃料電池車(FCV)の販売を義務づける。これを達成できない企業には罰金まで課して、この規制の実施に強制力を持たせる。
また、中国政府のエコカー補助金は20年に終了予定なので、19~20年に駆け込み需要が起きて、エコカー市場がさらに拡大する可能性が大きい。それまでに量産体制を敷こうと、中国と海外の自動車メーカーは中国各地でエコカー工場の「爆投資」を進めている。
中国政府は20年に乗用車と商用車(バスなど)を含めたエコカー販売を年間200万台に到達させ、累計台数を500万台にする目標を掲げている。中国はエコカーのなかでも特にEVの生産が多く、エコカー販売に占めるEV比率は70%以上になっている(17年時点)。
中国の自動車メーカーは、日米欧企業と比べてエンジンなどの駆動系の技術力が低いため、モーターとエンジン駆動を擦り合わせるハイブリッド車(HEV)技術は進化しなかった。その結果、大容量バッテリーと高出力モーターという単純な組み合わせのEVが中国のエコカー製造の本命となった。世界的には、軽自動車をハイブリッド化(エンジンとモーター駆動の併用)したマイルドHVが主流になるとの予測もあるが、中国はEV中心に突き進んでいく。
17年に日本の6倍の太陽電池を導入
日本は、第1次石油危機が起きた1973年に原油価格の高騰という厳しい現実に直面した。当時の通産省は、石油の代替エネルギーや省エネルギー技術の開発を急ぎ、国を挙げて太陽電池を開発する「サンシャイン計画」(74年)を策定。2000年までの長期開発戦略が立てられ、日本は太陽電池の技術開発で世界トップの座に就いた。
環境保護対策から2000年以降は欧州で太陽光発電の導入が増え始め、06年にドイツの太陽光発電の補助金政策「フィード・イン・タリフ(FIT、再生可能エネルギー電力の固定価格による買取制度)」を契機に、太陽電池市場が急拡大を始めた。
中国には当時、まだ大規模な量産メーカーはいなかったが、欧州製の太陽電池の製造装置を一括購入して生産ラインを垂直立ち上げし、太陽電池を大量生産してドイツに輸出するようになった。政府の補助金支援により中国各地に太陽電池工場が建設され、数年後に中国は世界最大の太陽電池生産国にのし上がった。
その後、中国政府はCO2やPM2.5などを削減するため、中国国内でも太陽光発電に対する補助金制度を実施し、中国は太陽電池の市場規模でも世界最大になった。
世界の太陽光発電の累計導入量は540GWとなり、原子力発電を超えてクリーンネルギーの主流となった。17年に世界で98GWの太陽光発電設備が導入されたうち、中国は1国で50GW以上を導入した。中国の累計導入量は17年に約130GWに達し、日本(約50GW)の2.6倍の規模になった。中国は18年以降も毎年40GW規模の導入を続けるものとみられ、数年後には累計ベースでも世界の1/3の規模に増えるものと予測される。
エコカーや太陽電池などのように新エネルギー関連の分野では、国策として産業ごと丸抱えで発展させる中国のパワーに他の国が追随することはほぼできなくなっている。
電子デバイス産業新聞 上海支局長 黒政典善
まとめにかえて
設備投資という観点で、中国のEVと太陽電池への投資額は他を圧倒しています。圧倒しているのは半導体や液晶も同様です。液晶ではBOEを筆頭に大型の10.5G液晶パネル工場が相次いで立ち上がっているほか、スマートフォン向けの有機ELの工場新設も目立ってきました。半導体もメモリーの国産化に向け、複数拠点で新工場建設が進んでいるほか、韓国や米国など外資系企業の投資も増加傾向にあります。
電子デバイス産業新聞