小学校のPTAの活動のあり方について、匿名性の高いネット空間では「なくしてしまえ!」という極論もふくめ、盛んに意見が交わされています。しかし、リアルな現場では「活動内容には納得できないけど、自分の任期中の“やっかいごと”は避けたい」と、本音を胸の中にしまいこんで活動している方が多いのではないでしょうか。
課せられた役を淡々とこなしているうちに、軽いグチを言い合える顔見知りが増え、「最初はイヤだったけど、思ったより楽しく乗り切れたな」……と、年度末には清々しい達成感さえ抱いた方もいらっしゃるかもしれません。
PTA活動は、「1年(場合によっては2年)ガマンすればいい」という期間限定のため、問題を先送りする傾向が見られます。なんとか乗り切って、「例年通り」を翌年の担当にバトンタッチするのが一番の省エネ方法なのです。
少子高齢化で「役のスパン」が短期化
「問題先送り」がラクだとは言っても、時代は少子高齢化。子どもの数は減っているのに、仕事の量はなかなか減らず、役が回ってくるスパンが短期化している学校も見受けられます。
さらに地域社会には、学校の役員だけでなく、他にも様々な役員が存在します。
- 保育施設
- 子ども会
- 学童保育
- 習い事(少年団、ボーイスカウトなど)
- 自治会、町内会
- マンション管理組合
ざっと上げるだけでも、このような組織があります。皆さんの周りにも、まだまだいろんな組織があるでしょう。
それぞれに「会長」「副会長」「会計」「書記」といった役があり、子どもが複数いる家庭や、所属人数が減っている組織においては、役がまわってくるスピードが加速度的にアップするという事態が発生しやすくなります。
0歳~小4の3人の子どもがいる筆者は今年度、PTAの校外補導部、少年団の会計、子ども会のラジオ体操係という3つの役を担当しています。
それぞれの組織で「赤ちゃんがいるから」という理由で「長」「副」のつく責任の重い役を免除してもらいましたが、それでも仕事と家事・育児を抱え、3つの役をこなしていくのは大きな負担です。
休日、家事の合間に赤ちゃんを背中で寝かせながら少年団で集金したお金を数え、途中「オギャー」とぐずる赤ちゃんをあやしてふとカレンダーを見つめると、翌朝にPTA活動があったことを思い出してしばし絶句……というような、まさに綱渡りの日々を送っています。
筆者のようなケースは決して特別ではなく、どの地域に行っても2役、3役とかけもちしている家庭は珍しくありません。
こうした地域の役員活動は、えてして家庭の中でよりフレキシブルに動ける親、つまり、パート勤務や残業のない働き方をしている割合が多い母親側に負担が重くのしかかります。
子どもの行事や看病、役所手続きなど、様々な場面で仕事を休まなければならない育児中、地域の仕事がダメ押しの一撃のように育児の負担感を高めます。
「育児以外の仕事が多すぎる」!?
どの組織のお母さん達も、それぞれの事情を抱え、子どもや地域のために役員活動に取り組んでいますが、メンバーが減った組織では「できることを、できる人がやろう」という理想は通らず、「できなくても、やってみればなんとかなる。やらないのは、ずるい」が常態化しています。
地域の絆というのは、面倒なしがらみと表裏一体であり、一見面倒に思える善意のギブ&テイクによって少しずつ築き上げられるものだ、子どもを地域で育てたいなら文句を言うな……というのは、正論ですが、「子どもを育てるためには、育児以外の仕事が多すぎる」というのは、少子化の遠因にもなるのではないでしょうか。
今や、母親のスマートフォン所持率は9割超(ベネッセ教育総合研究所調べ)。たとえば『役員アプリ』ようなものを開発し、負担感やこれまでの貢献度を可視化し、共有。重役を引き受けてくれた人、ボランティアとして動いてくれたシニア世代にはアプリを通じてささやかな『投げ銭』をして、誰もが「感謝されている」「必要とされている」という実感を得ることができたら。「善意の搾取」でなく、自主的な善意をベースに地域でゆる~くつながることができたら。
そんな日がやってきたなら、少しだけ育児の閉塞感が和らぎ、人間関係もラクになっていくのではないのでしょうか。
北川 和子