小米(シャオミ)上場、調達額は下振れ
「ユニコーン」と呼ばれる未上場企業の一つで、世界的にも今期最大規模の大型上場になると注目を集めていた中国スマートフォン製造大手の小米(シャオミ)が、7月9日、香港証券取引所に上場しました。
これにより、小米は1株17香港ドル(約240円)で約21億8千万株を売り出し、370億香港ドル(5200億円)を調達しました。公開価格の1株17香港ドルはインディケーションの下限の価格で、取引初値も16.6香港ドルと公開価格を下回り、厳しい船出となりました。
当初の予想では、480億香港ドル(6700億円)の調達規模になると予想されていましたが、計画されていた中国本土での株式上場は延期となったうえ、香港上場でも個人投資家の人気が高まらず、調達額が想定より大幅に下振れした形です。
小米に対する懸念と期待
小米は2010年に創業された社歴の浅い企業ですが、スマートフォンを製造することに特化して、低価格かつ高機能を武器に急成長しました。米IDCによると、スマートフォン出荷台数では韓国サムスン電子、米アップル、中国の華為技術(ファーウェイ)に次いで世界4位のシェアを持っています。
小米は今後、あらゆるデバイスがネットにつながる「IoT」化の流れに乗り、スマートフォン製造からIoT企業に脱皮しようと目論んでいます。今回調達した資金も、人工知能(AI)搭載スピーカーやネット機能付きのスマートテレビの開発に当てられるほか、中国以外に海外展開も加速すると公表されています。
一方で、市場では小米のスマートフォン事業の先行きを懸念する声も聞かれます。スマートフォンの普及が中国をはじめ新興国にまで進み成熟化する中で、前述の通り4位の小米が市場を拡大し続けられるのかという疑問は、当然にあります。IoT化も、やや陳腐化したフレーズです。アップルPERに対して随分と強気な価格設定も、投資家を消極的にさせてしまった部分もあるでしょう。
さらに、マクロ的にはエスカレートしつつある米中貿易摩擦による市場の環境悪化も重しとなりました。6月だけで見ても、上海株式はドルベースで13%下落しましたし、香港ハンセン指数も、それに引きずられる形で10%程度下落しています。
市場のリスクオフの傾向が、結果的にIPO市場にも影を落としていることは否めません。小米の上場はタイミングとしては悪く、一部では米中貿易戦争の犠牲になっているとの声もあります。
ただ、弱気な見方ばかりというわけでもありません。あまり好条件での株式公開にならなかったことで、今後の小米という企業そのものの価値や業績の向上に期待する声もあります。そうはいっても、短期間に急成長してきた勢いのある企業ですし、中国国内や新興国では、低価格かつ高機能という点は、当面、一定のシェア獲得にやはり強みを発揮し続けると予想されています。
香港証券取引所にとっての小米上場の意味
さて、香港証券取引所にとってはもう一つ別の意味が今回の上場にはあります。香港証券取引所が、かつてアリババの上場をニューヨーク証券取引所と競って、競り負けた理由のひとつに、種類株の上場制限がありました。
香港証券取引所は、今年4月に普通株と議決権が異なる種類株を発行する企業でも上場できるように上場規則を見直したのです。小米はこの新たなルールの適用第1号となる上場案件でした。
このルール改訂で、他のユニコーン企業の中にも香港上場を検討する動きがあると言われます。そうした動きに今回の小米の状況が影響するかにも、注目が集まります。
ニッポン・ウェルス・リミテッド・リストリクティド・ライセンス・バンク 長谷川 建一