4. 最低賃金の引き上げで懸念される問題
最低賃金の引き上げによって懸念されている問題は「年収の壁」です。
年収の壁は、配偶者の扶養から外れてしまい、扶養に入っている時と比べて世帯の所得が減少する問題です。
年収の壁はいくつかありますが、最低賃金の引上げで注目が集まっているのがいわゆる「年収106万円の壁」とされています。
一定の要件を満たして年収106万円を超えた場合、アルバイトやパートタイマーでも社会保険に加入する必要があります。
社会保険に加入する要件は、以下のとおりです。
- 従業員数が101人以上
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 賃金が月額8万8000円以上
- 2ヵ月を超える雇用の見込み有
- 学生ではない
このうち、企業規模の要件である「従業員数」が、2024年10月からは51人以上に変更されます。
配偶者の扶養から外れないようにするには、企業規模にかかわらず年収106万円を超えないように調整する必要があります。
最低賃金が引き上げられると、これまで年収106万円を超えないように仕事を調整していた人は、労働時間をさらに調整させる必要があります。
5. まとめにかえて
最低賃金は、労働に対する対価として重要なテーマです。
ただし、最低賃金が上昇すると、配偶者の扶養に入っている人にとっては、仕事時間を調整する必要性に迫られます。
最低賃金の引き上げによって、今後どのような問題点が生じるのか注目が集まります。
参考資料
- 厚生労働省「令和6年度地域別最低賃金額改定の目安について」
- 厚生労働省「令和6年度 地域別最低賃金 答申状況」
- 厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」
- 厚生労働省「平成14年度から令和5年度までの地域別最低賃金改定状況」
川辺 拓也