好景気で税収は絶好調だから、消費増税は慎重に

消費税、所得税、法人税が伸びるメカニズム

景気は税収という金の卵を産む鶏だから、緊縮財政で景気を殺してしまわないように慎重に取り組むべきだ、と久留米大学商学部の塚崎公義教授は主張します。

税収はアベノミクス前と比べて3割以上も増加

各種報道によれば、昨年度の税収は58兆円台の後半であった模様です。アベノミクス前と比べて3割以上も税収が増えているのですから、素晴らしいことです。まさに、景気は税収という金の卵を産む鶏ですね。

グラフを見ると、名目GDPがわずかに増減しただけで、税収は大きく増減しているのが見て取れます。景気を見るときは実質GDPを使うのが普通ですが、物価が大きく変動しているわけではないので、ここでは税収と比較する意味で名目GDPを使いました。

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余談ですが、この手のグラフは、左軸だけがゼロから始まっていたりしてミスリーディングな場合もあるので、要注意です。統計使いは統計を使って嘘をつく、というわけですね。もちろん、本稿においては問題のないグラフを用いていますが(笑)。

税収が伸びるメカニズム

税収の中で主なものは、消費税と所得税と法人税ですが、それぞれ景気回復によって大きく伸びるメカニズムが備わっているのです。

一番わかりやすいのは所得税でしょう。所得税は累進課税といって、所得が増えると適用される税率が高くなっていくので、給料が1割増えたら納税額が2割増えた、といったことが起きるわけです。大きな収入に高い税率を掛けるわけですから、効果は抜群です。

好景気によって株価が上がると、株の売却益が所得税の対象となります。配当も所得税の対象です。売却益や配当所得の多くは累進課税ではありませんが、景気拡大等により株価が3倍程度になったことを考えれば、景気に敏感な税収だと言って良いでしょう。

消費税は、景気の回復によって消費が伸びれば税収も伸びますが、累進課税ではないので、普通に考えれば名目GDP(正確には名目GDPの内訳項目としての個人消費)と比例して伸びるだけです。

しかし、今の日本では常に消費税を増税しようと画策している財務省があり、景気が弱い時には「消費税を上げたら景気が悪化して失業が増えてしまうから、消費税は上げない」と拒絶する政権があり、力関係で消費税が上げられないのです。ということは、消費税を増税しても失業者が増えないほど景気が良い時には消費税が増税され、消費税収入が大幅に増えるのです。

法人税も、累進課税ではありませんが、景気が拡大すると税収が大幅に増えます。それは、企業の利益が景気の拡大によって大幅に増えるからです。そしてそれは、企業の費用に固定費と変動費があるからです。

固定費というのは、正社員の給料のように、客が来ても来なくても必要な費用のことです。変動費というのは材料費のように、客が来て売り上げが増えると、それに応じて増える費用のことです。

不況期には、たとえばレストランは空席が目立ち、従業員も手持ち無沙汰にしていますが、店の賃料や正社員の給料といった固定費はかかりますから、利益を稼ぐのは困難です。景気が少し良くなって、客が1人増えると、料理1人分だけ売り上げが増えますが、費用は材料費しか増えないので、利益は結構増えます。客が来る前の利益が少なかった分だけ、増益率は相当高いかも知れません。

日本企業全体を見た場合、企業の売り上げが1割増減することは稀ですが、利益が1割増減することは、比較的頻繁に起きているわけで、それと並行して法人税も大幅に増減している、というわけですね。

性急な緊縮財政は景気を殺しかねない

上記を総合的に考えれば、景気が少し良く(悪く)なると税収が大幅に増える(減る)、ということが言えるわけです。それならば、性急な緊縮財政で景気を殺してしまうことのないように、慎重に財政運営を行ってほしいですね。

消費税が5%から8%に増税された時には消費が大きく落ち込んで、景気の後退も懸念されたわけですから、消費増税には慎重に取り組んでほしいと思います。

景気には、改善(悪化)している時は、何もしなければそのまま改善(悪化)を続けるという性質があります。物が売れる→企業が増産するために失業者を雇う→雇われた元失業者が給料をもらって物を買う→物がいっそう良く売れる、といった好循環が働くからです。

そうであれば、景気が拡大している時には静かに見守り、景気がいっそう拡大して税収が増加していくのを確認すれば良いのです。

今ひとつ指摘しておきたいことは、景気が良くなると歳出が減るかも知れない、ということです。失業保険の手当てや生活保護の申請は、景気が良くなれば減るでしょう。不況対策としての公共投資も減らすことができるでしょう。

もっとも、実際に歳出が減るか否かは別の問題です。税収が増えた分だけ「今まで我慢していた公共工事を実施しよう」ということができるようになるかもしれないからです。族議員が好機到来とばかりに我田引水的な歳出を増やして財政の効率を下げてしまうという可能性も皆無ではありませんし(笑)。

本稿は以上ですが、財政や景気等々についての基礎的な事柄については、最近の拙著『一番わかりやすい日本経済入門』をご参照ください。なお、本稿は厳密性よりも理解しやすさを重視しているため、細部が事実と異なる可能性があります。ご了承ください。

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久留米大学商学部教授 塚崎 公義

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塚崎 公義


1981年 東京大学法学部卒業、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行
おもに経済調査関連業務に従事した後、2005年に退職し、久留米大学へ
(近著)
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(雑誌寄稿等)
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