LGイノテック(韓国ソウル市)は、先ごろ日本で初めて会見を開き、UV-LEDの売上高を2020年までに10倍に拡大する方針を明らかにした。さらなる高出力化とラインアップの拡充によって水や空気の殺菌・浄化用途を幅広く開拓していく方針で、日本企業とのパートナーシップもさらに深めたい考えだ。

水銀規制でUV-LEDに脚光

 UV-LEDとは、その名のとおり、紫外線を発光するLEDを指す。紫外線とは光の波長で400nm以下を指し、380~315nmをUV-A、315~280nmをUV-B、280~100nmをUV-Cと呼ぶ。波長によって用途が異なり、例えばインクや接着剤をUVで硬化させる用途には300~380nm、殺菌用途には250~280nmがそれぞれ適している。検査・計測用途には260~350nmまで幅広い波長を目的に応じて利用することが可能だ。

 こうしたUV光を発光できるLEDチップはすでに存在しているが、まだまだ出力が弱く、高価なことがネック。だが、13年に各国が合意した「水銀に関する水俣条約」によって20年から水銀および水銀を使用した製品の製造・輸出入が規制され、水銀ランプが使えなくなるため、UV-LEDによる代替が大きく期待されているのだ。

20年に売上高10倍へ

 LGイノテックはUV-LEDをブランド名「InnoUV」で展開し、UV-AからUV-Cまで幅広くラインアップしている。17年11月には波長278nmで出力100mWを実現したUV-LEDパッケージを開発し、20年までに商品化する考えを示していた。18年中には150mWまで高出力化する計画を立てている。

 会見したLED事業部長の宋俊午氏は、UV-LEDの売上計画として「18年は前年比2~2.5倍を見込んでおり、19年は2倍の1000億ウォン、20年にはさらに2倍の2000億ウォンまで引き上げたい」と述べ、20年には17年比で最大10倍まで拡大する考えを明らかにした。

 また、UV-BとUV-Cに関しては波長10nm刻みで商品ラインアップを拡充していく考えも表明。これに向けて「UV-AとUV-B用のMOCVD(LEDチップの発光層を作り込む製造装置)は十分に能力があるが、UV-C向けは3~4台しか保有していないため増やしていく」と語り、設備投資にも力を入れることを明らかにした。ちなみに、同社はチップおよびパッケージを韓国の坡州工場で生産している。

 今後の開発ロードマップとして、UV-A LEDに関しては歩留まりのさらなる向上と縦型構造によるチップの小型化、UV-BとUV-C LEDについてはフリップチップ技術によるロー&ミドルパワー製品のコスト競争力強化と、大型の縦型チップによる注入電流の拡大を図っていく。

 さらに、朴鍾碩CEOは「これまでバックライトや一般照明がLEDの主要市場だったが、自動車用スマート照明システムやUV-LEDで身の回りを衛生的にするシステムの拡大によって事業を強化していく。マイクロLEDディスプレーの要素技術開発にも力を入れる」と述べ、新市場の開拓をさらに加速していく決意を述べた。

会見した朴鍾碩CEO

LED売上高はピーク時から4割も下落

 新市場を開拓していかなければいけない理由もある。LGイノテックのLED事業は、これまでテレビやスマートフォン用のバックライトと一般照明用を主力として拡大してきたが、13年に記録した売上高1.1兆ウォンをピークに、5年連続で前年割れが続いている。17年は6500億ウォンとなり、ピークから4割も下落した。親会社のLG電子が液晶テレビに代わってバックライトの不要な有機ELテレビの市場拡大に注力していることや、スマートフォン市場でシェアを落としていることなどが影響している。また、この間、中国のLEDメーカーが力をつけ、バックライトや一般照明用で既存メーカーのシェアを侵食している影響も受けている。

 期待の大きいUV-LED市場だが、事業拡大を狙うのはLGイノテックだけではない。徳島大学発のLED技術を持つナイトライド・セミコンダクター、名城大学発のLED技術で水浄化用の深紫外LEDを実用化している日機装、波長310nmで出力90mWの深紫外LEDチップを開発したDOWAエレクトロニクス、米クリスタルISを子会社化して事業拡大を進めている旭化成エレクトロニクス、ガラス封止技術を用いた紫外線LEDを商品化している豊田合成など、日本にライバルが多い。逆に、ライバルが多い日本には、それだけUV-LEDの顧客が多く、新規市場が立ち上がりやすい土壌が整っているとも言え、それが日本での初会見につながったのかもしれない。

(津村明宏)

電子デバイス産業新聞 編集長 津村 明宏