共通ポイントは「4強体制」でしのぎを削る
「Tポイント」や「Ponta(ポンタ)」のようなポイントカードの会員は、ある店で貯めたポイントを別の店で使うことができます。このように、小売店などが自店以外のさまざまな業界の企業とポイントを共通化できるのが「共通ポイント」です。
共通ポイントは4強と言われます。カルチュア・コンビニエンス・クラブの「Tポイント」(会員数約6,700万人)、三菱商事系のロイヤリティマーケティングの「Ponta(ポンタ)」(同約8,700万人)、楽天の「楽天スーパーポイント」(同約9,600万人)、NTTドコモの「dポイント」(同約6,500万人)です※。
その歴史を振り返ると、先陣を切ったのが「Tポイント」(2003年)で、すでに15年以上の実績があります。「Ponta」が2010年にサービスを開始し、しばらく2強時代が続きましたが、2014年に「楽天スーパーポイント」、2015年に「dポイント」が加わり4強体制となりました。
最近では、各社ともにポイントカードをスマートフォン(スマホ)のアプリにする動きを進めています。
※会員数のデータは各社のサイトなどから編集部にて推定。
付与されるポイントの原資を出しているのは加盟店
買い物をするときに共通ポイントカードを提示するとポイントがもらえます。店舗によっては共通ポイントサービスと独自のポイントサービスの2重にポイントがもらえるところも出てきました。
たとえば、ドラッグストア大手のマツモトキヨシは2018年4月から東名阪の店舗を中心に、マツキヨポイントとは別に「dポイント」が貯まるサービスを開始しました。また、大手書店の丸善ジュンク堂書店でも2018年4月から関東の店舗を中心に、「hontoポイント」に加えて「Pontaポイント」を貯めて使うことができるようになっています。
いずれも、ポイントをダブルで貯めることができますが、付与される共通ポイントは誰が提供しているのでしょう。共通ポイント事業者でしょうか? 答えを言えば、共通ポイントの原資を出しているのは小売店などの加盟店です。
小売店はお客に付与するポイントのほかに共通ポイント事業者の手数料も必要です。たとえば、「Tポイント」の場合、月々7,500円の月額固定の手数料に加え、Tポイントの関与売上の3%となっています。
キャッシュレス決済市場を狙って競争はさらに激化
たとえば、加盟店手数料が関連売上の3%、付与するポイントが2%(ダブル付与の場合)とすると、100円の商品が売れた場合、加盟店は5%の費用を負担することになります(月額固定手数料を除く)。
それだけの費用を負担してでも共通ポイントを導入するメリットは、顧客の囲い込みに加えて、マーケティングデータが入手できることです。ポイントを利用した会員の属性(個人情報は除く)や利用情報などをもとに、現状分析や販促活動などが行えます。
ポイント事業者の中には、これらをもとにした、データ分析、ダイレクトメール、メルマガ、広告などのマーケティング活動の支援を行っているところもあります。最近ではポイントカードのスマホ化により、キャンペーンなどの告知もやりやすくなりました。
小売店だけでなく、電力、ガス、銀行、証券会社などでも共通ポイントを導入する企業が増えています。今後はさらに加盟店が増えるでしょう。利便性はさらに高まると考えられます。
ただし、共通ポイント4強も安心してはいられません。Suica(スイカ)、PASMO(パスモ)といった交通系ICカードや、流通系の「WAON(ワオン)」「nanaco(ナナコ)」などが、自社グループ外の加盟店開拓を進めています。
さらに、キャッシュレス決済なども視野に入れると、LINE Pay、Google Pay、クレジットカード会社、メガバンクなどが市場を狙っています。現状は、それぞれがパートナーになったり競合になったりと混沌としていますが、競争の激化にともない、今後は再編や淘汰も進みそうです。
上山 光一