大卒が高卒より給料が高い理由は2つある

大卒の給料が高卒より高い理由について、久留米大学商学部の塚崎公義教授が経済学の観点から解説します。

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大卒の給料は高卒より高くなっています。それは、なぜでしょうか。「大学が学生を成長させるから」「自分を律する能力があるから」の2つに分けて考えてみましょう。

大学は学生を成長させる、と信じたい(笑)

「大卒の給料が高いのは、大学が学生を成長させるからだ。当然だろ」と大学教員である筆者は考えています。大学で学んだ個々の知識等は役立たなくても、物事を論理的に考える訓練、自分の考えたことを他人に理解させるように表現する訓練等々は、必ず社会人になってから役立つはずです。

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サークル活動などでも、高校時代とは違った人間関係等々の中で、多くのことを学生は学んでいると信じています。そこで筆者は就活生に、以下のスピーチを準備させています。「私は大学時代に、以下のように成長しました。ですから、多少給料が高くても、今の私を採用する方が4年前の私を採用するよりも御社にとって得です」

もっとも、「楽勝科目だけ履修して、たいして勉強もせず、遊んでいる大学生も多いではないか」という反論も多そうです。楽勝科目とは言っても、それなりに学生の訓練にはなっていると思うのですが、本稿ではこの論争は避けておきましょう。

採用担当者は、自分に甘い学生を見分けたい

上記のように、筆者は大学教育には意味があると信じていますが、以下では仮に大学教育には意味がないとした場合について考えてみましょう。そうした場合でも、やはり大卒の給料は高卒より高くなるのです。ここから先は、情報の非対称性という経済学の話ですから、少し難しくなりますが、あしからず。

採用担当者は、就活生が自分に甘く、ついサボってしまう学生なのか、自分に厳しく、自分で自分を律する(目的のために自分を我慢させる)ことができる学生なのかを見分けたいと思っていますが、それは容易なことではありません。それを見つけるための1つの重要な方法が、学歴を見ることなのです。

難関大学を卒業していれば、自分に厳しいことは十分証明されていますし、そうでない大学でも、卒業できた以上は、ある程度は自分自分に厳しいはずです。

大学というところは、講義をサボっても誰も叱ってくれないので、自分に厳しくないと単位がとれずに卒業できないのです。定員割れの大学であっても、入試こそ簡単に通るとしても、卒業のためにはある程度講義には出席する必要はあるでしょうから、卒業できたということは、ある程度自分に厳しいはずなのです。

一方で、高卒の中にも、自分に厳しい子は存在するでしょうが、それを見分けることは困難です。そこで、一律的に大卒を優遇するわけです。「高卒の中には、自分に厳しい子は少ないだろうから、残念だが仕方ない」と割り切るということですね。

そもそも大学に行かない理由を考える

上記を読んだ高卒就職者は、腹を立てるかもしれませんが、誤解されませぬよう。筆者も企業の採用担当者も、高卒は皆がダメだ、などとは決して思っていません。ただ、確率的には大卒を採用した方が得だ、と言っているだけです。

大卒が高卒よりも給料が高いことは、普通の高校生なら誰でも知っているでしょう。しかも、大学生活の4年間は高卒で就職した最初の4年間よりはるかに楽しそうです。そうだとすれば、高校生は皆が大学に進学したいと考えるはずです。それでも進学しないのはなぜか。

昔は、親が貧しくて進学できなかった人が大勢いましたが、今は少数でしょう。奨学金の制度も活用すれば、多くの高校生にとって大学を出ることはそう難しくないはずです。それでも大学に行かないのは、よほど勉強が嫌いなのか、自分に甘いのか、どちらかの可能性が高そうです。

大学進学は、英語検定の如し

話が飛びますが、英語検定を受ける人は何を考えているのでしょうか。金も時間もかかるのに、何のために受けるのでしょうか。それは、就活時の採用担当者に自分の英語の能力をアピールするためですね。

就職試験で英語の能力を見抜くことは容易ではありません。そうなると、すべての就活生が「私は英語ができます」と答える可能性があります。一部は本当にできる正直な就活生で、その他は嘘つきの就活生です(笑)。

そうなると、正直な就活生は「自分は正直である」ことを採用担当者に認めてもらうのは容易ではありません。そこで活躍するのが英語検定試験です。英語検定の結果を見せれば、自分が正直だと認めてもらえるからです。

つまり、英語のできる子は英検を受け、英語のできない子は英検を受けない、ということになります。もちろん、「英語ができても英検を受けない子」は存在するでしょうが、多くはないでしょう。したがって、採用担当者としては「英検を受けていない子は英語ができない可能性が高い」と推測するでしょう。

大学も同じことです。「自分に厳しい子は大学に行くだろう。ということは、大学に行かない子は自分に甘い可能性が高い」と推測するわけです。そこで、仮に大学教育自体には全く意味がないとしても、面接官が大卒を採用することは合理的なのです。

繰り返しますが、筆者自身は大学教育には意味があると思っています。あくまでも、経済学のモデル上では、という話ですで、誤解なきように(笑)。

なお、本稿は厳密性よりも理解しやすさを重視しているため、細部が事実と異なる可能性があります。ご了承ください。

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久留米大学商学部教授 塚崎 公義

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塚崎 公義


1981年 東京大学法学部卒業、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行
おもに経済調査関連業務に従事した後、2005年に退職し、久留米大学へ
(近著)
なんだ、そうなのか! 経済入門
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(雑誌寄稿等)
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