2018年5月30日に行われた、大豊工業株式会社2018年3月期決算説明会の内容を書き起こしでお届けします。IR資料
スピーカー:大豊工業株式会社 代表取締役社長 杉原功一 氏
2018年3月期 決算の概況<連結>
杉原功一氏(以下、杉原):みなさまこんにちは。本日は弊社の決算説明会にお越しいただきまして、誠にありがとうございます。
さっそくご説明させていただきたいと思います。
本日は、前期の実績、今期の計画、さらには将来に繋がる取り組みについてお話をさせていただきます。
前期の結果でございます。これはみなさまご存知だと思います。
売上高1,146億円、営業利益68億円、経常利益67億円、純利益42億円で、売上高、営業利益、経常利益につきましては過去最高でございます。
一方で、純利益につきましては、北米の法人税率の低減政策による税制変更の影響等がございまして、前期に対して微減となっております。
2018年3月期 製品別売上高<連結>
売上高を製品別に見ていきます。
我々の主力でございます軸受部品、バキュームポンプを主としているシステム製品、それから弊社の子会社でございます日本ガスケットでつくっておりますガスケット製品、この3本が前期は好調で、売上が増加しております。
2018年3月期 地域別売上高<連結消去前>
地域別に見ますと、とくに中国・アジアが好調ですべり軸受を中心に受注が増加しております。
経常利益増減要因(前期比)<連結>
経常利益の増減です。
前期に比べまして、増益要因につきましては、合理化努力と拡販による利益増が、かなりの部分を占めております。
一方で労務費増、減価償却費等の増、あるいは販価改定、原材料価格高騰といった減益要因がございましたが、5.2億円の増益を確保いたしております。
2018年3月期 決算の概要
これまでご説明いたしました中身のおさらいになります。(スライドは)売上高と経常利益増加の要因についてまとめた内容でございます。
株主還元
1株当たりの配当です。
リーマンショック以降、順調に安定した配当をさせていただいております。前期の当初計画は43円でございましたが、利益の増加に伴いまして、2円増配の45円とさせていただきました。
2019年3月期 通期業績計画<連結>
今期の計画でございます。
売上高は、ほぼ横ばいということです。リーマンショック以降と比較すると、約4割近く売上を伸ばしてまいりましたが、ここへ来て少し踊り場という局面になっておりまして、若干増加の計画をしております。
それに対して利益は、のちほどご説明しますような要因により少し減益となり、増収減益を予測しております。
2019年3月期 製品別売上高計画<連結>
今期の製品別売上高計画です。
軸受は、前期で好調だったカークーラ用軸受が減少し、また為替の影響で、いったん踊り場になっておりまして、全体としての伸びが少し止まっております。
一方で、バキュームポンプ等のシステム製品については引き続き好調でございます。
また、ダイカスト製品についても伸ばしておりまして、軸受の微減もございましたけれども、全体でいうと微増と予測をしております。
2019年3月期 地域別売上高計画<連結>
地域別に見ますと、やはり中国が堅調でございます。
それから各拠点に軸受の材料供給をしている関係で日本国内が増、北米は為替の影響により若干減少するという状況です。また欧州は拡販により軸受を中心に増加する予定でございます。
経常利益増減予測(前期比)<連結>
経常利益増減予測でございます。
労務費の増加、将来の成長に向けた設備投資による減価償却費の増、原材料価格(の増)、為替変動等により、経常利益としては10.8億円の減益予想になっております。
しかしながら、19・20年度の成長に向けた準備として労働力確保と設備増強により減益を見込むものの、さらなる生産性向上の強化と経費削減の徹底を図り、今期の利益を上乗せできるよう目指してまいります。
2019年3月期 公表値の概要
おさらいになりますけれども、売上高、経常利益はこのような(スライド記載の)増減を予想しております。
以上で今期計画のご説明を終わりまして、将来の成長に向けてどのように取り組んでいくのか説明させていただきます。
大豊グループの『VISION2020』
弊社では、2015年までは「VISION2015」、2016年以降は「VISION2020」を策定し、5年ごとに目指すべき会社の姿を描きながら大豊グループの持続的成長を図ってまいりました。
「VISION2020」は、我々のコア技術でありますトライボロジーによるすべり軸受をもって、地球環境に貢献しようと進めております。
その持続的成長を支える3本の柱が「地球環境に貢献するイノベーション」「グローバルの供給を支える製造・生産技術」そしてそれらの基盤である「VISIONを実現する人財づくり」でございまして、このような軸で活動を進めております。
グローバル供給を支える製造・生産設備①
昨今は100年に1度の自動車産業の大変革機と言われておりますけれども、我々の製品は内燃機関の部品が主でございます。
内燃機関がどういうかたちで変化していくかについては、(スライド記載の)このようにとらえております。
いわゆる電気自動車や燃料電池車といったEVについては、将来比率が伸びていくと予測しております。
一方で内燃機関の自動車も、世界市場で見れば2030年ごろまで伸びていくと予測しております。
したがいまして、当面、既存事業については競争力を強化し成長を図りつつ、それらの収益を原資として、来るべきEV化に向けた新製品・新事業創出を開発してまいります。
グローバル供給を支える製造・生産設備②
グローバル供給を支える製造・生産設備をどういう拠点で伸ばしていくのか、ご説明いたします。
世界自動車市場は、現状中国がリードしております。新興国が伸びていく中で、将来も中国が世界市場を牽引していくと予測されます。昨今の中国自動車市場の状況を見てみますと、現在、外資・民族系の自動車メーカーが約50社ございます。また、高速道路網が急速に拡大しております。
小型車取得減税等で購入層が増加していることと、トラックは過積載規制などでディーゼル車の買い替え需要も増加しております。このようななかで、昨今、安価な民族系メーカーのシェアが拡大しつつあります。外資系に対抗するため、民族系メーカーは群雄割拠な自動車市場を生き残るには、量から質、コピーから本物へ転換を図りつつあります。
そういった中で、かつての繊維業界や電気業界と一緒ですが、民族系メーカーにおいても、我々の良質なエンジン用すべり軸受が欲しいというお客さんが増えております。またトラックにつきましても、ディーゼルエンジン用すべり軸受は今期も堅調に伸びていく計画です。
グローバル供給を支える製造・生産設備③
このような背景で、中国での生産体制の強化を進めております。
エンジン用すべり軸受の加工ラインにつきましては、我々の中国の子会社の1つであるTCYに加工ラインを増強しまして、好調な中国市場に対応しております。
また、弊社で一番の摩擦特性のよい樹脂コーティング軸受でございますけれども、樹脂コーティングラインを中国にも設置いたしました。今後の小型・高性能エンジンの需要拡大に対応するために増設をいたしております。
グローバル供給を支える製造・生産設備④
先ほどの中国TCYでは第3工場を建設しております。10月に竣工予定ですが、約6,000平米の工場を建設中でございます。今後の拡大する中国市場へ対応するため、生産ラインの増産のスペースを確保いたします。
もう一つの中国拠点として、上海から新幹線で1時間半ぐらいの常州に所在する、軸受素材ラインを持つWBMでは、いよいよ本格的に、日本の品質レベルで軸受素材の生産を始めております。
品質・生産能力の増強を図りアルミ鋳造ラインを導入いたしました。さらに、高品質な軸受素材の生産能力を増強し、軸受素材ではWBM、軸受加工ではTCYということで、中国での一貫生産体制を構築し、効率向上を図っております。
地球環境に貢献するイノベーション
地球環境に貢献するイノベーションについてです。
大豊グループの持っております事業、あるいは要素技術は(スライド記載の)このようなものがございます。
コアな部品であります軸受類、軸受以外としてアルミダイカスト製品、システム製品、ガスケット製品あるいは設備・金型といったものがございます。
これらの既存のビジネスに対して、脱内燃機関への対応ということで、現在開発を進めております。
本日は、エンジン用すべり軸受の競争力強化に向けたボリュームゾーン、それから高性能エンジンに対応するハイグレードゾーン、もう1つ、トヨタさんを中心に拡販しているバキュームポンプのコスト低減とグローバル対応について、ご説明をさせていただきます。
エンジン用すべり軸受 <ボリュームゾーン>①
まずエンジン用すべり軸受のボリュームゾーンでございます。
大衆車市場としては、先ほどの新興国市場への拡大・良品廉価な小型車戦略といったものがございまして、より現地調達化のニーズが高くなっています。
これまでの取り組みとしては、RR(良品廉価)ラインの開発・海外拠点への導入、あ樹脂コーティングラインの現地化、自動外観検査の導入をやってまいりました。
エンジン用すべり軸受 <ボリュームゾーン>②
現在、さらなる競争力向上に向けて、次世代の加工ラインを稼働させつつあります。
このラインですが、従来の加工ラインに対しまして、面積比で65パーセント削減しております。全長でいきますと、(従来ラインの)44メートルが16メートルとなります。なお、6月に本格稼働を予定をしています。
設置スペース・生産能力・段替時間については、工法刷新・設備ダウンサイジング化により、生産性向上と設備投資の低減を実現。今後販売される新型エンジンのすべり軸受に採用されます。
エンジン用すべり軸受 <ハイグレードゾーン>
もう1つの傾向として、ハイグレードゾーンについてご説明します。高性能車、低燃費を目指したより高能率のエンジンへの対応として、高出力・高面圧化ニーズへの対応が必要となり、エンジン用すべり軸受はさらに環境が厳しくなります。
例えば、ディーゼルは高面圧化。ガソリンは過給化、あるいは高出力化の傾向がごございます。少しテクニカルですけれども、横軸が周速、縦軸がすべり軸受にかかります、面積あたりの圧力でございます。これをかけ合わせた指標で、より高いレベルの軸受になるということです。
昨年(2017年)、弊社の岐阜工場に高性能すべり軸受材料の実証ラインの稼働を開始して、現在、高性能エンジンに使用できる新開発の高性能アルミ軸受を他社に先駆けてお客様へ提案できるべく、開発を進めています。
システム製品 <バキュームポンプ>
次に、システム製品の中で、現在我々の主力となっています、バキュームポンプでございます。
より低燃費で高効率エンジンでは、アトキンソンサイクルによる吸気負圧が発生しにくい機構の中で、ブレーキ倍力装置用の負圧をあえて発生させるポンプが付いています。それがバキュームポンプです。
このバキュームポンプはトヨタさんのTNGAエンジンに採用が決まりまして、世界中で今、展開しているところでございます。
バキュームポンプは2008年からはじまり、(スライド記載の)このようなかたちで作っていたのですが、2015年以降このように伸びています。
現在は、TNGA2.5Lエンジンに採用され、岐阜と北米で生産ラインを稼働しています。また、それに伴い、新開発の鋳造コンパクトラインを稼働させています。さらに今後導入を拡大されていく予定でございます。
中期経営計画およびVISION2020
2011年から「VISION2015」をスタートしました。2015年にようやく、リーマンショック以来の売上高1,000億円を達成しました。
それ以降は「VISION2020」に向けて中期経営計画を2016年からスタートし、今年度が3年目でございます。最終年度である今期につきましては、労務費・減価償却費の増加で減益の見通しでありますが、3軸の活動を継続・加速し、収益体質を強化して、「VISION2020」を実現するということで進めてまいります。
今日のご説明は以上でございます。ご清聴ありがとうございました。