4. 社会保険加入によるデメリット
社会保険加入により、厚生年金保険料と健康保険料、介護保険料(40歳以上の人)が発生します。これにより、給与手取りがこれまでより減ることに注意が必要です。
厚生労働省の試算によると、月額給与が9万8000円という人の手取り額変化は以下のとおりです。
4.1 今まで国民年金と国民健康保険に加入していた人
- 加入前の手取り額:7万6600円
- 加入後の手取り額:8万3500円
4.2 これまで扶養の範囲で働いていた人
- 加入前の手取り額:9万6900円
- 加入後の手取り額:8万3500円
これまで国民年金と国民健康保険に加入していたという場合、そちらの保険料がなくなるのでむしろ手取りが増えることもあります。
しかし、多くの方は配偶者の扶養に入っていたと思います。
この場合はこれまで負担のなかった保険料が新たに発生することになるため、手取り減による負担を大きく感じるでしょう。
メリットがある一方で、手取りの減少は大きなデメリットに感じるでしょう。厚生労働省のサイトでは社会保険加入による手取り額のシミュレーターもあるので、一度シミュレーションしてみるのもひとつです。
5. まとめにかえて
2024年10月の社会保険適用拡大により、「従業員数51人以上」の事業所に勤める方は自動的に社会保険加入対象者になります。
年金が増え、健康保険の保障も充実する一方で、手取り額が減るというデメリットもあります。政府は年収の壁対策も進めているため、最新情報を得るようにしておきましょう。
手取り減と年金増を天秤にかけ、何年働けば元がとれるのか、という考え方もあります。とても重要な視点でありますが、年金はあくまでも保険であるという視点も重要です。
元がとれるかどうかに加え、いざというときの保障も意識しながら、家族で働き方について話し合えるのが理想でしょう。
参考資料
太田 彩子
執筆者
株式会社モニクルリサーチ メディア編集本部
LIMO編集部記者/編集者/元公務員
担当分野
主に金融と社会保障分野の記事を執筆。厚生労働省管轄の公的年金(厚生年金保険と国民年金)、公的年金制度の仕組み、社会保障、医療保険制度、貯蓄に関する情報を幅広く網羅し、政策の変遷、年金受給資格の詳細、最新の制度改革に焦点を当てた記事を執筆している。
また年金制度の仕組み、退職金、資産運用や貯蓄、NISA、iDeCoなどをテーマに企画・編集・執筆も行う。
経歴
京都教育大学卒業。大学卒業後は教育関連企業での営業職を経て、2010年に地方自治体の公務員として入職。「国民健康保険」「後期高齢者医療制度」「福祉医療」等の業務に従事した。主に国民健康保険料の賦課、保険料徴収、高額療養費制度などの給付、国民年金や国民健康保険への資格切り替え、補助金申請等の業務を担う。特に退職に伴う年金や保険の切り替えでは、手続きがもれることで不利益を被ることがないよう丁寧な窓口対応を心がけた。その後、保険代理店にてマーケティング業務に従事。保険料比較サイトや乗合保険会社の商品ページ、保険の知識を普及するためのページ作成にも参加。
現在は株式会社モニクルリサーチが運営するくらしとお金の経済メディア「LIMO(リーモ)」のLIMO編集部で、金融と社会保障分野の記事を執筆している。ニ種外務員資格(証券外務員ニ種)保有。小学校教諭一種免許、幼稚園教諭一種免許、特別支援学校一種免許取得。
スタンス
厚生労働省、金融庁、総務省、デジタル庁、財務省(国税庁)、日本年金機構など、信頼性の高い官公庁の情報を基に、読者のマネーリテラシー向上やキャリアの選択、老後や将来設計に役立つ情報提供を心掛けている。出産や小1の壁で離職した経験から、女性のキャリアに関する情報も幅広く発信。専門的で信頼性の高い情報提供を目指す。
更新日:2024年9月4日