2018年5月10日に行われた、株式会社ネクソン2018年12月期第1四半期決算説明会・質疑応答の内容を書き起こしでお伝えします。IR資料

スピーカー:株式会社ネクソン 代表取締役社⻑ オーウェン・マホニー 氏
株式会社ネクソン 代表取締役 最高財務責任者 植村士朗 氏

コストの増加や開発体制の変更について

質問者1:質問が3つあります。

まずガイダンスに関してです。第2四半期の営業利益の見通し、コストの減益要因について、人件費が31億円、その他が17億円増えると書いています。他の期と比べて変化率がかなり大きく見えるので、ここに一過性の要因があるかどうか。なぜ人件費とその他(コスト)がここまで増えるのか教えてください。

植村士朗氏(以下、植村):人件費が31億円増加していることについてですが、こちらは通常の人件費とストックオプションのコストです。その中で、ストックオプションのコストは3分の1強入っております。こちらは弊社のキーマンとなる人材をリテンションするためのコストです。

今まで必要に応じてストックオプションを出してきた中で、新たに出したストックオプション等がございますので、約3年間の間、同様の水準で計上することになります。

したがって、一過性のコストというよりかは、ある程度、固定費と考えていただいていいと思います。今、過去に出したストックオプションも徐々に計上が終わっていきますので、多少減少することはありますが、今の水準でいうとこれぐらいを見込んでいて、そんなに大きな変化はないと考えています。

その他(コスト)に関しましては、あくまでも変動費や外注費の増加等々の細かいものの集まりで、特筆すべきものはございません。

質問者1:2点目は『EA SPORTS™ FIFA ONLINE 4』の移行期間に関して、どれくらいかかるのか教えていただきたいと思います。

植村:『EA SPORTS™ FIFA ONLINE 4』に関しては、過去の経験から、むしろワールドカップの後が非常に重要だと認識しています。ワールドカップ前よりも、ワールドカップ中に徐々に盛り上がりを見せて、営業的には終わった後の数ヶ月に非常にいい効果が見られました。

したがって、5月末にしっかりとPC版をローンチして、ユーザーの移行をスムーズに終わらせ、ユーザーベースをしっかりと確立した上で、7月末のモバイル版をローンチして、再度成長に向けて動いていきたいと思います。

したがって、第2四半期は移行期間に当たりますので、これから大きなアップサイドあるいはダウンサイドはないと考えていますけれども、第3四半期以降はゲームの状況をしっかり見ながら、成長を促していこうと考えています。

質問者1:最後の質問です。オーウェン社長から開発体制の変更をお示しいただきました。(開発体制を)独立させることによって、クリエイティブが上がったり、リーダーシップができるところがありますけれども、スケジュールやコストの管理が今までと違って、少し難しくなるようなイメージを持ちました。そのあたり、全体の管理はどのようにされるのでしょうか。

オーウェン・マホニー氏(以下、マホニー):まず、スタジオを1つの一元的な組織として運営する場合には、1つのチームがいろいろな判断を下さなくてはいけません。しかしながら、スケーラビリティがないのが問題点であると言えます。

例えば、スタジオのチームのメンバーが増えていき、より多くのゲームを扱う場合には、なかなかうまく判断を下すことができなくなってしまいます。

そしてとにかく、ユーザーおよびゲームに一番近い人から、最もすばらしい発想が生まれます。1つのアイデアに固執して、それを追求することが重要だと考えていますので、各ユーザーに近い人々に独立性を与えていこうというのが今回の趣旨です。

昨今、ネクソンは新しい世代のリーダーをどんどん育てています。そして、(彼らは)どんどん経験を積んできています。そのような中で、より自立的な判断が下せるようなリーダーシップを形成していくことが重要だと考えています。

成功する人もいれば、そうではない人も出てくるかもしれませんけれども、我々はそれを常に監視・監督してまいります。

質問者1:ありがとうございました。

『アラド戦記』の四半期ごとの成長戦略

質問者2:1つ目の質問は、『アラド戦記』のPC版の数字に関してです。MAU(月次アクディブユーザー数)が下がって、課金ユーザーとARPPU(課金ユーザー1人あたりの平均月間売上高)は増えたということですけれども、このダイナミクスを考えてみると、いつになると「ARPPUを少し下げてもいいから、MAUを上げよう」となるのでしょうか。

第1四半期は、いろいろなことでARPPUが上がっていると思いますけれども、MAUと課金ユーザーとARPPUが通常のレベルになるのはいつになるのでしょうか。

植村:第1四半期の中国の『アラド戦記』に関して、MAUは減少、課金ユーザー数はほぼフラット、ARPPUが大きく上昇という状況です。

こちらに関して少し説明を加えると、『アラド戦記』は2017年に非常に良好な成長を見せていました。我々は、常に日々のオペレーションや、イベントごとのコンテンツのアップデートに注力しながら、ゲームの中を健全な状態にしてきています。

加えて、昨年(2017年)の第4四半期では、とくに大きな課金施策をすることなく、しっかりとユーザーベースを整えています。

したがって、第4四半期においてユーザーの購買意欲は非常に高まっている中で、今年の第1四半期は最も(売上の)ハイシーズンになるのですけれども、その時期にしっかりしたコンテンツのアップデートとパッケージの販売ができたことによって、MAUは減少しているもののARPPUは上がっているということです。

MAUの減少をもう少し説明すると、昨年の第1四半期でレベルキャップの解放を行いました。レベルキャップの解放は数年に一度しか行わない特別な施策でして、レベルキャップの解放によってユーザーが非常に活性化されて、多くのユーザーが流入しました。

そのような年とのMAUの比較で、今年は減少しているように見えますけれども、普段の第1四半期との比較をすると、MAUは通常と同じレベルです。したがって、大きく減少しているというわけではなく、単純に昨年の第1四半期が高かったということになると思います。

もう1つ、課金ユーザーがフラットでMAUが下がっている中で、昨年の収益を大きく上回っている理由は、やはりARPPUの増加です。

ARPPUの増加は、先ほども申し上げたように、ゲーム内の状況が非常にいい中で、しっかりとしたコンテンツのアップデートができ、かつアバターパッケージの販売がうまくいったということです。

具体的には、常にコアユーザーたちがパッケージを1つだけではなくて、複数買ってくれるようなかたちになっております。また、今までライトな課金ユーザーがパッケージを買うような状況が見られます。

そのような、ゲーム内の状況がいい中で、我々が打った施策がうまくいって、しっかりと売上をあげることができたという分析です。完全にコントロールしている中で、非常にいい業績だったと認識しています。

第2四半期の足元の状況は、MAUはほぼフラット、課金ユーザーは増加、ARPPUは昨年のレベルと同等あるいは少し減少というかたちです。

したがって、第1四半期の状況は、我々の打った施策が非常にうまく当たったということで、第2四半期はまたユーザーベースをしっかりと確立するという時期です。すでにARPPUは昨年以下のレベルまで落ちております。こちらに関してはハイシーズン・ローシーズンいろいろとありますが、ゲーム内の状況を見ながら、何をすべきかを考えて手を打っておりますので、ARPPUがずっと高くて、MAUがどんどん減少し続けているという状況ではございません。会社としては引き続き、中国の『アラド戦記』はいい状況にあると認識しております。

質問者2:2つ目の質問は、『Durango: Wild Lands』についてです。売上収益はいいようですけれども、KPIはどうなのでしょうか。この『Durango: Wild Lands』はこれから3年、4年と成長していくのでしょうか。『Durango: Wild Lands』は海外でもローンチされると思いますけれども、最初はソフトローンチということでしょうか? そして少しずつ成長していくのでしょうか? 『Durango: Wild Lands』はどのくらい息が長いゲームになると思いますか?

マホニー:率直に言うと、ローンチしたときのユーザーの関心は、我々の高い期待を大きく上回るものでした。かなり前もって(ユーザー)登録をする人もいたということもありました。

もう1つ申し上げておくと、Google、Appleの支援が非常に強かったということもありました。この『Durango: Wild Lands』は、これまでのモバイルゲームとはまったく違うということで、ユーザーが気に入ってくれたということだと思います。

もう1つの大きなポイントとして、私たちの高い期待も上回ったということで、最初のローンチ直後に本当に多くのユーザーが流入してきたわけですが、それによっていくつかの問題が起こりました。それはカスタマーエクスペリエンスの問題、サーバーの問題が起こったわけです。技術的な課題もありました。

『Durango: Wild Lands』は(他のゲームとは)非常に違うので、市販のテクノロジーを使うわけにはいかず、新しい技術やゲームの中でのマネジメントやプロビジョニングが必要だったわけです。

このように、多くのユーザーが同時に入ってくる場合、ゲームというのは常に新しいユーザーが入ってくることを想定しているわけですけれども、非常に巨大な数のユーザーが一度にやってくるので、ゲームプレイにおける問題が起こってしまったということです。

このようなことがあいまって、ユーザーの関心が強かったことは非常にハッピーだったわけですが、アプリのストアランキングで下がってしまいました。

『Durango: Wild Lands』について言えることとしては、MMORPGの世界では、そのゲームが成功したかどうかというのは、最初の数ヶ月や数四半期では判断しません。

ユーザーエクスペリエンスがどうなるかとか、システムの問題を直していくためには、何四半期か続かないとわからないのです。ですから、まだ(判断するのは)時期尚早であると思います。

先ほどプレゼンテーションでも言いましたけれども、世界中でこのゲームを提供していくわけですけれども、他の地域では、韓国とは違うかたちでローンチしていくことになります。

私たちがローンチしてきたゲームで、何年もの間にわたって成功してきたゲーム、他の会社でも世界全体で成功したゲームというのは、最初は小さくスタートして、いろいろと変動があって、ということだと思います。

ですから、これからの数四半期ということではなく、このゲームが5年後、10年後に話題になるかどうかが重要だと考えています。(『Durango: Wild Lands』は)それに向かっていると思いますし、これからも注目していき、これからの四半期でも(進捗を)お話ししていきたいと思います。

質問者2:最後の質問です。第2四半期のガイダンスの中央値を見ると、収益が26パーセント下落しているわけですが、コストはこれから安定してくのでしょうか?

植村:第2四半期のコストの見通しなのですけれども、人件費がかなり増加しています。こちらの3分の1ほどはストックオプションのコストになります。

これは我々ゲーム会社にとって必要な財産である、有能なタレントをしっかりとリテンションするという意味がありますので、こちらに関しても、ある程度状況を見ながらストックオプションを発行していっております。

したがって、積み重ねということで、今回、ある程度(コストが)積み上がっていることになります。こちらは一過性のコストではなく、このままの状況で3年ほど続くと思います。ただ、以前に出したストックオプションが徐々に減っていきますので、若干の減少は見られます。

もう1つの大きな要因は、やはり広告宣伝費です。こちらに関しては、どうしても大型のタイトルのローンチが多ければ、ある程度先行投資として投下していく必要があると考えています。

したがって、昨年の同じ第2四半期と比較すると、広告宣伝費が大きく増加しておりますけれども、こちらはあくまでも先行投資です。第2四半期に入ってきて、営業利益を減少させる要因になっておりますけれども、ここでしっかりといいタイトルをローンチすることによって、翌期あるいは翌々期に売上として効果が出てくるものと考えております。

広告宣伝費に関しては、定期的に同じようなものが入るとは言えませんけれども、必要に応じて投下すべきだと考えています。

我々のP/Lの中で大きく変動するとしたら広告宣伝費になりますが、人件費に関しても、今後は第2四半期でのレベルぐらいは計上すべきだと考えています。

質問者2:ありがとうございます。

人件費と広告宣伝費の使い方

質問者3:今、ご説明いただいた、人件費と広告宣伝費について確認です。人件費の考え方として、第1四半期で見込まれていた人件費を結局使い切れてないと思うんです。

一方、ご説明いただいたように、第2四半期でストックオプションを積まれたり、(人件費が)増加している状況なのですが、これは例えば、韓国で人材を確保しようとしたけれども、思ったほど採れなくて使い切れず、業界的にその分お金を積まないと人が採れない状況になっているという話なのか、それともそこまでの意味はないのか、確認させていただけますでしょうか?

植村:第1四半期で我々の予想とコストの差が出た理由は、思ったほど採用が進まなくて、人件費がそれほど積み上がらなかったところではあります。

ただ、人材を確保するためにお金を積まなければいけないのかというのはまた別な話です。人員に関しては、我々のタイトルが増えるごとに、あるいは開発パイプラインの状況にしたがって増やしておりますのであまり大きな変動はありません。

ストックオプションのコストに関しては、我々は定期的に、グループのキーマンの人たちに、リテンションを図るために出しております。さらに今回は、役員に対してのストックオプションもありますので、必要な費用・投資だと考えております。

質問者3:2点目は、広告宣伝費についてです。新作が多い四半期は50億円前後使われてきたと思うのですが、第3四半期から『EA SPORTS™ FIFA ONLINE 4』にアクセルを踏まれる中で、さらに大きく増える可能性を見ておいたほうがよろしいのでしょうか?

植村:(広告宣伝費が)ここからさらに大きく増えることは恐らくないと思います。ただ、『EA SPORTS™ FIFA ONLINE 4』のローンチもありますし、期待作である『OVERHIT』の日本ローンチもあります。また、韓国での『KAISER』というタイトルも非常に期待しております。

そのようなタイトルに対して、ローンチ後のKPIを見ながらしっかりと(広告宣伝費を)投下していきますので、ここで必ず増えない、必ず減少すると言うのは難しいのですけれども、我々が想定している中ではこのような金額が正しいと考えています。

質問者3:最後になりますけれども、今回、パイプラインを地域ごとに開示していただいています。恐らくこちらに出ていないタイトルも多く控えていると思うのですが、今期の日本のモバイルゲームの投下に対するスピード感などを確認させていただけますでしょうか?

植村:おっしゃるとおり、10タイトルほど準備しております。ローンチのタイミングとしては、今、発表しているものでは『OVERHIT』が第2四半期で、『GIGANT SHOCK』が第3四半期です。

『DURANGO: Wild Lands』に関しては、まだ年内としか発表しておりませんが、第2四半期以降、随時準備でき次第ローンチしていくことになると思います。

日本においてこのような複数の期待できるタイトルを揃えられたのは本当に2年ぶりぐらいのことですので、非常に期待しておりますし、後半に行くにしたがって、スピード感をもってご紹介できると考えています。

質問者3:ありがとうございました。

中国『アラド戦記』の成長バランス

質問者4:第2四半期のガイダンス、とくに中国の収益に関して質問です。

6月に『アラド戦記』の10周年記念があり、それから4月の労働節にも非常に成功したということは、第2四半期は第1四半期に比べてもっと成長すべきではないのでしょうか?

植村:PCオンラインゲームに関して、もう少しご説明いたしますと、日々しっかりと運用をしていきながら、イベントごとにコンテンツのアップデートを行っていくという意味では、各四半期でやるべきことはあるのですけれども、(ユーザーが)ずっと課金し続けるということは基本的にはできません。なぜならば、ユーザーが課金疲れをしてしまって、ゲームの中のバランスが崩れてしまうためです。

したがって、我々の四半期でいうと、第1四半期が中国の『アラド戦記』にとって一番大切な時期です。

次に(大切な時期として)第3四半期の国慶節があります。第2四半期と第4四半期は、ユーザーベースをしっかりと整えて、また次のジャンプのために準備をする時期と位置付けています。

したがって、引き続き好調でありますけれども、大きな課金施策をとるという意味ではなく、しっかりとユーザーベースを整えるという意味になります。

ARPPUは昨年より低い状況で落ち着いておりますし、課金ユーザーは増加に転じている、MAUは安定しているという中で、再度ユーザーベースがしっかりと整えられてきているということですので、今回の第1四半期のように、常に毎四半期成長していくというものではなく、しっかりとゲーム内容とのバランスを取りながら成長させていくことが非常に重要になります。

マホニー:植村さんから重要な話がありましたけれども、もう1つ付け加えておきたいと思いますが、オンラインゲームは息が長いことが一番重要です。

質問者4:ありがとうございます。第2四半期の中国の『アラド戦記』に関しては、前年同期比で少し増えるということですね?

植村:はい。引き続き好調な状況を保っており、第2四半期は若干増加すると考えている要因としましては、課金ユーザーが増加して、MAUが安定しているということになります。

質問者4:モバイルの『アラド戦記』はどうでしょうか?

マホニー:モバイルについては、今のところアップデートはありません。

質問者4:ありがとうございました。

PC・モバイルゲーム市場の展望

質問者5:1つ質問があるのですが、中国のPCの『アラド戦記』の競合について、例えば、バトルロイヤルのジャンルがどんどん人気が高まっているのかどうかとか、PCからモバイルにどんどん移行しているのかどうか、将来どのような状態になるのか。説明をお願いいたします。

植村:中国のPCオンラインゲーム市場における『アラド戦記』というのは、ジャンルとして非常に稀有です。

確かに(競合として)強力なタイトルはありますけれども、そのようなものから受ける影響はそんなに考えておりません。

中国のPCオンラインゲーム市場のマーケット自体がかなり厳しい状況であるという見方もされていますけれども、我々の『アラド戦記』に関しては非常に良好な状態で、他のタイトルとは違う動きを見せています。

したがって、中国の『アラド戦記』に関しては何も心配しておりませんし、長い間運用できるかたちにするために、引き続きしっかりと注力していきたいと考えています。

マホニー:彼が述べたように、中国の『アラド戦記』は、バトルロイヤルのようなゲームの影響は受けておりません。

PCからモバイルへの移行に関して、どのような影響が出てくるのかという質問を受けましたが、PCの分野というのは、人が思っていたものとはまったく逆の人気を保っている状況にあります。

バトルロイヤルのようなゲームが出てきて、モバイルはとてもディープで、リッチなエクスペリエンスを提供することができます。

例えば、先週末『フォートナイト バトルロイヤル』を息子と息子の友人たちと一緒にやってみたのですけれども、私も含めてPCで遊んでいた人もいれば、モバイルで遊んでいた人もいるわけです。何年か前はこれは不可能でしたが、現在、世界各国においてはそのような状況になっています。

ネクソンは常にディープでリッチで、没入感のあるゲームに注力しております。そして我々が考えていたようなゲームというのは、昨今まで、モバイルでは無理でした。(現在の)GPUやネットワークのレイヤーというのは、技術的にとても堅牢になり、品質の高いものが担保できるようになっております。

そのような意味で、我々だけではなく、他のゲームタイトルにおいても、PCもモバイルも大変元気なマーケットであり、これは我々にとって長期的に明るい状況であると言えます。

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